インタビュー

オリジナル・アルバムで検証するデリコのブレない歩み



クリエイターとしての姿勢も音楽性も全然ブレることなく、生き馬の目を抜くようなJ-PopシーンをマイペースでサヴァイヴしてきたLOVE PSYCHEDELICO。クラシック・ロックへの敬意と愛情を常に大事にしつつ、2001年のデビュー以来、音作りに徹底的にこだわった作品を生み出してきている。

まずは、大胆不敵なタイトルの初作『THE GREATEST HITS』。ファースト・シングル“LADY MADONNA〜憂鬱なるスパイダー”をはじめ、“Your Song”“Last Smile”などキャリアを代表する名曲が揃っている。表題がバッチリとハマっていることも感動的だが、作品自体が〈私たちは何をやりたくてここにいるのか〉を述べる声明文となっているのが素晴らしい。確かに彼らは先達からバトンを受け取り、上述のシーンにおける先頭集団の一員となった。その実感は、アーシーな味を醸す楽曲が存在感を増した2作目『LOVE PSYCHEDELIC ORCHESTRA』や、デジタル・ビートをフィーチャーした“Mind Across the universe”やオーケストラを配した“neverland”が肝の3作目『LOVE PSYCHEDELICO III』などでも得ることができる。そして4作目は、自身のプライヴェート・スタジオ名を冠した『Golden Grapefruit』。ダイナミックなギターがとびきりの開放感を運ぶ“Freedom”で幕を開ける本作は、スタジアム・ロックを彷彿とさせるスケールのデカさが特徴で、〈これぞ王道!〉と呼びたいこの曲が初っ端を飾っている効果もあってか、アルバム全体に晴れやかな印象がある。そして、2008年の全米デビュー作『This is LOVE PSYCHEDELICO』を経て届いた5作目『ABBOT KINNEY』は、リラクシンな雰囲気が魅力の“Beautiful Day”をはじめ、アコースティック・テイストの伸びやかな曲が目立つ。

こうして2人の歴史を振り返って思うのは、自身のルーツに対する多彩なアプローチを試しながらも、2人は初作で声明した自身の核を毎回見失わずにきたのだろうということ。グッジョブだらけなのは、そういうことだ。



▼文中に登場した作品の一部を紹介。

左から、2001年作『THE GREATEST HITS』、2002年作『LOVE PSYCHEDELIC ORCHESTRA』、2004年作『LOVE PSYCHEDELICO III』、2007年作『Golden Grapefruit』、2010年作『ABBOT KINNEY』(すべてビクター)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年05月21日 14:15

更新: 2013年05月21日 14:15

ソース: bounce 354号(2013年4月25日発行)

文/桑原シロー

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