インタビュー

INTERVIEW(2)――同じ昭和の曲でもアプローチを変えてみた



同じ昭和の曲でもアプローチを変えてみた



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──では、その6曲をひとつずつ。まずは東京ブラボーのインスト・ナンバー“エレキでスイム”(オリジナルは84年発表)。80年代に解釈されていた60年代っていうのは、良くも悪くも軽いというか、キッチュというか、そういう感覚がこの曲のオリジナルにもありますよね。

「そう、ちょっとおふざけみたいなね、〈こんなのあったんだあ、へえ~、ダサ~い、でもそこがむしろおもしろいからやってみよう〉っていうノリもあったと思います。80年代の何でもおもしろおかしくキッチュにやってしまうムーヴメント、それを全部踏まえたうえで、結局“エレキでスイム”っていう楽曲が持つ、覚えやすくて決してダサくない魅力を上手く今風に昇華させたというか、キノコホテルがやることによって、時代とかを超越した格好良いエレキ・インストとして出来上がったんじゃないでしょうか」

──オルガンとギターが重なり合いながら疾走していく様がスリリングでカッコイイです!

「なかなかアゲアゲでしょ(笑)。そう、これはもうギターとオルガンが競い合ってる。それが伝わる感じをイメージして録りました」

──次の“ノイジーベイビー”は、カルメン・マキがオリジナル(70年発表、作詞/作曲はクニ河内)。支配人のキャラクターが見事にハマった曲だなあと。

「そうなの、よく言われる。なんかねえ、深い歌詞なの。冷静と情熱の間みたいなね、発狂寸前の感じ、爆発したい寸前っていう。レコーディングで歌って、そのあとPV撮影があって、撮るときに何回も(この曲を)流すでしょう。それ聴きながら、なんて沁みるのかしら……って。途中で涙が出そうになったわ。深夜の屋外ロケが極寒だったせいもあるけど(笑)」

──リズム・アレンジも非常にカッコイイんですが、ギターも弾きまくるわけでなく、良い塩梅に気持ちの良いフレーズが織り込まれているという。

「そうです。ファズでギャンギャン弾きまくるだけがケメ(イザベル=ケメ鴨川)じゃないの。オルガンもレズリー・アンプを使用して録っているし、原曲より数倍ドラマティックに仕上がったと思います。今回はね、歌の表情をそれぞれ変えるというか、時代もジャンルもバラバラな曲を選んでいるので、それをさらにバラバラにしてやろうという意気込みで。私の声は良くも悪くも独特で、あれこれいじっても私の声になるのよね。私は、ギターなどと同じで声も音の構成要素のひとつでしかないという認識なので、自分の声にファズをかけたりテープ・エコーをかけたり、いろいろなことをしていて。曲ごとに質感を変えながらも、私という人間からは離れていないというか、同じ人が歌っていることはわかる」

──“今夜はとってもいけない娘”(オリジナルは72年に発表された泉朱子のシングル)は、グルーヴ歌謡の真骨頂というか、原曲もこんな感じなんですか?

「原曲はキャロル・キングっぽい落ち着いた曲調で、正直初めはあまり印象に残らなかったの。でも踊れる曲にできるのではないかと思ってすぐにアレンジが浮かんだので、スタジオで詰めたら案外化けたんじゃないかしら。歌詞のちょっとやさぐれた感じも自分のムードに合っていると思う。歌唱については、女優さんがレコードを出さなきゃいけないことになってしまい、無理矢理歌わせられて、〈こんなもんでいいんでしょ?〉とか〈これぐらいしか歌えないもの~〉とかブツブツ言いながら歌わされてる――そんなイメージ。女優さんが片手間で出したレコード、昔はたくさんあったでしょう。本職じゃないんだけどしょうがなく歌ってみた。そういうシチュエーションを勝手に作ったらそれっぽい感じになったわ(笑)」

──“かえせ! 太陽を”(オリジナルは麻里圭子。71年公開の映画「ゴジラ対ヘドラ」の主題歌)は、ステージでも何度か披露されている曲ですね。

「そうね。もともとずっと前から気になっている曲ではあったのですけど、〈3.11〉がきっかけになったわね。初めは観客の反応を見ながらあまり癖を付けずに歌っていたのが、だんだんエスカレートしてしまって。お客さんも盛り上がってくれて、気付けばシャウトやスクリームがあたりまえの歌唱法に変わっていた(笑)。でもね、それをスタジオでやると、演奏との温度差も手伝ってちっとも伝わらないんです。要するにサムい。ライヴだと熱狂してウワーッとなるんですけど、同じことをスタジオで再現しようと思っても無理があるんですね。それでいろいろ自分なりのトライをして、結局、大人なのか子供なのか男の子なのか女の子なのかよくわからない、女らしさとかを排除した歌い方になって。そもそも、〈ゴジラ〉っていう作品が世代を問わないテーマを提示しているわけでしょう。だからもう年齢とか性別をわからなくしたような声で歌ってみたのよね」

──いつになく無垢なヴォーカルだなって思いました。だからこそ、公害問題に対する警告が込められた楽曲のメッセージがより強く伝わってくるんですよね。

「映画自体もね、ヘドラっていう怪獣の存在を大人たちに知らせたのが子供たち……っていう話なわけで、やっぱり子供のほうがいろんなことに対して敏感だし、結局将来を担っていくのは子供たちだし……」

──子供に訴えられるとより切実さが増しますもんね。

「そう。でも、私がやると不思議といまの子供じゃなくて、60年代とか70年代のアニメに出てくるような、あきらかにオバサンなんだけど子供の声を当ててるみたいなね、ああいう雰囲気になってしまうの(笑)。まあ、それはちょっとやってみたかったというか、昔のアニメに出てくるヤンチャな男の子風というか。いつも野球帽を被ってて、学校から帰ってくるなりお母さんに〈宿題やんなさいよー〉なんて言われながらすぐ友達と野球しに行くみたいな、そういう昭和の良き時代を彷彿とさせるような……。前回のカヴァー集『マリアンヌの休日』はまさにその時代の曲だけで攻めたんですが、同じ昭和の曲でもアプローチを変えてみたということです」




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掲載: 2013年04月24日 17:59

更新: 2013年04月24日 17:59

インタヴュー・文/久保田泰平