インタビュー

LONG REVIEW――キノコホテル 『マリアンヌの逆襲』



オリジナルなポップ・ミュージックの未来



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正直言って、リリースのペースが少し早いのではないか?と危惧していた。いや、ビートルズの時代、ザ・スパイダースの時代はバンドやシンガーたるもの年に何度もシングルを発表していたし、こんなものじゃなかったわけで、おそらくそうした時代へのオマージュもあるのだろうと想像していなかったわけでもない。それでも、昨年12月にサード・アルバム『マリアンヌの誘惑』をリリースしてからわずか半年足らずで、6曲入りミニ・アルバムが到着したとあっては、何やら生き急いでいるのでは?と本音では不安になってしまう部分もあった。だが、この4人組にそんな心配はまったく不要のようだ。

マリアンヌ東雲によるオリジナル曲は一切なく、すべて他アーティストの楽曲を取り上げてカヴァーしたもの。だがGSや昭和歌謡のイメージに縛られず、裾野が広い選曲にはこのバンドの自在さ、奥深さを改めて知る思いだ。1曲目、東京ブラボー“エレキでスイム”からいきなり驚愕。高木完、ブラボー小松、岡野ハジメらによる伝説のバンドの代表曲だが、東京が〈TOKIO〉と称されたヒップな80年代に活躍した彼らの洒脱なセンスを、キノコホテルはガレージ・スタイルのエネルギッシュな演奏によって現代に甦らせている。そして、クニ河内(ハプニングス・フォー)作のカルメン・マキ“ノイジー・ベイビー”、いまもジャズ・シンガーとして現役で歌い続けている泉朱子(いずみ朱子)“今夜はとってもいけない娘”、映画「ゴジラ対ヘドラ」の主題歌だった麻里圭子“かえせ! 太陽を”(キノコホテルはすでにライヴでも披露しているそう)あたりはいかにも彼女たちがセレクトしそうな曲だが、いずれも鍵盤やギターがマリアンヌのヴォーカルとセクシャルに絡み合って、めくるめく恍惚を生み出す、さながら音の万華鏡のような仕上がりだ。

一方、Phewが在籍していたことで知られるパンク・バンド、アーント・サリーの“すべて売り物”には、東京ブラボーと並んで驚かされた。一聴すると繊細で冷徹、しかし豊かな感情表現が大きな衝動もたらすこの曲を、キノコホテルは小細工することなく楽曲の良さに特化した演奏で一気に聴かせている。こんなストレートなアレンジでアーント・サリーと向き合ってきた後継者などいただろうかというほど意外な解釈だ。そして、中盤にジャジーな展開も飛び出す休みの国“悪魔巣取金愚”で、本作は幕を閉じる――このアルバムは、キノコホテルが月並みのレトロなガールズ・ガレージ・ロック・バンドとは一味も二味も違う存在だと証明しているように思う。彼女たちはこれまでも作品やライヴで多くのカヴァーに挑んでおり、その多くがマニアックな選曲だが、ただ無邪気に好きな曲を取り上げているだけではないはずだ。そうやってかつての楽曲を掘っていくことの行く末に、オリジナルなポップ・ミュージックの未来があることを信じているのではないだろうか。彼女たちがさまざまな曲を取り上げれば取り上げるほど〈キノコホテル臭〉が強まり、個性に磨きがかかる。そしてその先に自分たちの深化の姿を見ているはずなのだ。だから、本作はマニアによるマニアのための内向きなカヴァー集などではないと言える。

手塚治虫「リボンの騎士」や横山光輝「魔法使いサリー」を彷彿とさせるジャケットのアートワークの向こうで、ニヤリとするマリアンヌ東雲たちの表情が目に浮かぶ。キノコホテルがこうしてディグしていく以上、ポップ・ミュージックの未来は明るい。



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掲載: 2013年04月24日 17:59

更新: 2013年04月24日 17:59

文/岡村詩野