インタビュー

INTERVIEW(2)――ギラギラした感じを排したい



ギラギラした感じを排したい



――アルバムの中身についての具体的な質問に入りますが。全体的に、テンポがスロウですよね。

「すごいスロウです」

――シングルとか、タイアップ系の曲はアップのものもありますけど、それを除くとほぼスロウで統一されていて。それは、そうしようと思ったんですか。

「意図的にやったんですけど、自分で聴いていて気持ち良いなというのは、速くても(BPM)100だったり、80ぐらいがいちばん、酒を飲んだりすると〈ああ、いいな〉と思うんですよ。リリックに関しても、起承転結があるとか、メッセージがあるとか、そういうのが飛び込んでくると邪魔しちゃうんですよ」

――酒がまずくなる(笑)?

「英語はいいんですよ。詞はそれぐらいの感じで聴きたいですね。そうすると映像が見えてくるし、聴かれ方もそんな感じがいいなと思うので」

――今回、アコギの音に特徴がありますよね。微妙なノイズというか、ドローンのような響きがあって。あれ、普通のアコギじゃないですよね。

「そうなんです。さすがですね。あのアコギね、壊れてるんです(笑)」

――ええ(笑)!?

「何本か使ってますけど、メインで使ってるマーチンD-35のネックが剥がれてたんですよ。それが不思議な、ドブロみたいな音を出すんですよ。上はチリチリするけど、ロウは出るみたいな。あるときに気付いて、やっぱりそういうことだったんだと。それで、さらに2曲ぐらい録りましたけどね」

――最高です(笑)、それで良しとしてしまうところが。でもあの微妙なノイズ、本当にいい感じですよ。独特の深みやあったかみが出て。

「抽象的な言い方ですけど、ギラギラした感じを一切排したい、というのがあったんですよ。なるたけ、夜引っ張り出して、かけて、気持ち良いものにしたくて。ギラギラ感を排すところに持って行きたかったんですね」

――ピアノも、深いリヴァーブをかけたものが多いですよね。海の底で響くような。あれもすごく良い感じです。

「一時期、シーン的に〈リヴァーブは古い〉みたいな時期があったと思うんですよ。僕はもともと、リヴァーブがものすごく好きだったんですね。80sのイギリスものとか聴いても、いいなあと思うし。だから、あえてやってます」

――リズム隊はどうですか。特にドラムには、ほとんどオカズを求めないというか、基本パターンのみ、みたいな曲が多いですけど。これは指示をして?

「指示ですね。ハットも打ってない曲もあるので。ミックスとマスタリングを経ていまの音になってるんですけど、ドライの音だけで、それだけでも(酒が)飲める感じになってるんですよ(笑)。ドラムはすごく良い音色で録れましたね。朝倉(真司)君のドラムが大好きで、キタダ(マキ)君とのリズム隊は、すごいシンプルだけど気持ちが良くて。そのなかに、邪魔しない程度にアコギがあって歌があれば、全然OKなんですよ」

――本当に良く鳴ってますよね。どの楽器も。

「楽器自体の絵面が見えてくる音楽を聴くと、やっぱりそわそわするので。リッチじゃないですか、そういう楽器が見えてくるものって。そのほうが新しく感じるんですよね」

――確かに。

「やっぱり質感ということなんですかね。最終的な落としどころとして、ドラムもちょっと揺らいでるというか、全部理詰めにしない感じというのが……要するにギラギラしてないということに繋がるんですよね」

――何か、このアルバムのポイントがわかってきた気がします。スネオヘアーが、自分の聴きたい、自分の好きな音を、とことん追求した作品だということが。

「そうですね。極力、そうしてます」


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掲載: 2013年05月22日 18:01

更新: 2013年05月22日 18:01

インタヴュー・文/宮本英夫

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