INTERVIEW(3)――大きな時間の流れのなかの〈いま〉
大きな時間の流れのなかの〈いま〉
――歌詞にも突っ込んでみたいんですけど。書き方、変わりましたよね。
「あ、そうですか」
――叙景というか、見えるものをポンポンと投げ出していくような書き方とか。あるいは韻をたくさん踏んで、響きでグングン進んで行ったり。タイトル曲の“8”とか、“Love&C”とかが特にそうですけど、雰囲気、気分、空気とか、形のないものを切り取って行く書き方が、今回はすごく強く出ていると思います。歌詞を書くときに意識したことはあります?
「ひとつは、英語がいいなと思ってたんですよ」
――それ、さっき言ってましたよね。
「英語はできないですけど、英語の子音の使い方がメロディーに反映されているので。それを日本語に置き換えると、子音がほとんどなくて切れちゃうんですね。〈し〉と言っても〈し〉〈い〉になって、ブツ切りになってスピード感を欠いてしまったり。自分がいいなと思っていた歌詞と、実際に歌ったときとで全然違うのがすごい残念だったので、そこに順当に言葉を嵌め込んでいくのがひとつと。それ以前に、あんまり歌詞にストーリーを持たせないというか、順序立てとか、そこで意味を成立させようとしないということを、意識したと思います。サウンドに乗っかって、映像的にイメージさせる手助けになる、それぐらいの要素でありたいんですよ。言葉は」
――特別な事件は何も起きないですよね。歌詞のなかで。
「そうですね」
――とびきり幸せでも、かといって不幸でもない時間が、ゆっくりと過ぎていく。流れてゆく日常のようなものを、今回すごく感じましたね。良くも悪くも時間は流れていくのです、という感覚がそこにはあって、それは決して居心地の悪いものではなく……上手く言えないですけど。
「そうですね。そこに尽きますね、テーマとしては。時間の経過のなかで、生まれて、いつか死んでいって、何かがまた生まれてくるとか、そういうなかでいまがあるということを、より意識してるんだと思います。時間が動いてるなかに止まってるものがあると、その映像がより鮮明に浮かんできますし。そういう感覚は日本人らしいものなのかもしれないですけど、昔の歌謡曲を聴いても、映画を観ても、変わらないような気がします。根本は」
――そうかもしれないです。
「やっぱり、出会いの喜びと別れの悲しみとか、最終的には〈始まりと終わり〉みたいなところに繋がってくるところはあると思うんですよ。そういう普遍的なところで、大きな時間の流れのなかに〈いま〉というものがポツンとあって、そこに流れている音楽というところで、スッと聴きたいんですよね」
――ものすごく繊細なニュアンスですけど、何か、わかる気はします。
「いつかは終わっていくと言うと、ネガティヴな感じに捉えられがちですけど。それは全然ネガティヴなことではなくて、〈だからいまがあるんだよ〉と」
――そうそう。そういうことだなあと思います。
「別に、宗教をやってるわけじゃないですけど(笑)。いまは、自己中心的な〈自分の音色やリリックが聴いてる人に突き刺され〉みたいな気持ちが全然ないんですね。乱暴な物言いは、本当にしたくないです」
――最近こういう音と、こういう言葉をあまり聴かなかったので、聴けてすごく嬉しかったです。時間に追われてる人とか、少しゆっくりしたい人には、ぜひ聴いてほしい作品だと思います。
「なんか、忙しいですよね。音楽シーンがというよりは、街自体がとても忙しいなと思うし、もうちょっとゆっくりでもいいんじゃないの?と。たぶんみんな、疲れてるんですよ。道路状況を見てても、すぐクラクションを鳴らしたりして、これは疲れてるなと(笑)。愛が足りないのかな?と。あるはずなのに」
――今後の予定は? ツアーはやります?
「前のシングルのときはやってないので、やりたいんですけどね。具体的な予定はまだ決まってないです。あ、宅録盤、やりますよ。『8 エイト』との作業と平行して、自分のなかでイメージがあったので、これが落ち着いたら宅録盤を作りたいです」
――それはプロジェクトとして継続するもの?
「前々から出したいなと思っていたので、とりあえず一回、より個人的なものを。曲がいっぱいあっても削っていかなきゃいけないので、それを出したいんですよ」
――やる気満々ですね。嬉しいなあ。
「そろそろ、ラストスパートなんで」
――またそういうことを……(笑)。
「何があるか、わからないじゃないですか。だから曲が出来る限り、どんどん出していきたいと思ってます」