INTERVIEW(2)――答えは内にしかない
答えは内にしかない
――MAKI & TAIKIの“末期症状”ですね(笑)。話は変わりますが、昨年リリースのアルバム『In My Shoes』の反響はいかがでしたか?
「直接聞いた言葉、見たアクションは心に留めてあります。良かったって言ってくれる人もいれば、ライヴの途中で僕に中指を立ててくる人もいる。でも、そうやって直接伝えてくれたことに関しては真摯に受け止めてますね」
――あの作品で、SALUって名前が大きく世の中に響いたと思うし、それはヒップホップ・シーンだけじゃなく、ロックやポップスのリスナーまで届いたと思うんですが、そういった自覚はありますか?
「自分のチームの人たちからそういった話を聞いたりして、波紋が起こってるのはわかったんだけど、まだ小さいなって。ここで満足したり、成功したって思ったら終わりだって思うんですよね。自分にとって音楽は生きる力だし、だからこそ音楽を続けたいから、満足って思ったらダメだなって。だから川の流れみたいに、淀まずに新しい音楽を作り続けていきたいんですよね。流れる川のように新しいものを生み出していければいいなって」
――アルバム以降も、リリースはコンスタントにあり、創作欲は途切れなかったですね。
「いや、結構途切れがちではあるんですよ。いろんなことに一喜一憂しがちなタイプだし、ライヴが失敗したら思い悩んじゃうし、TVの収録があったら緊張したりして、〈書く〉って流れはちょっと止まっちゃうときもあります。でも、自分が還るところは創作の泉しかなくて、リリックを書くことでしか、新たな自分を生み出せないんですよね。いまはその書けない期間がそんなに長くないし、1か月書けない、1年書けないって経験はまだないけど、もしかしたら、いずれそういう時期も来るのかなって」
――そういう〈書けなくなる瞬間〉って想像できますか?
「できないですね、怖くて。ラップとか音楽がなくなったら、僕はホントにただの〈猿〉に戻っちゃうし、音楽をやってないときの自分は何者でもないから、もし表現ができなくなたったらって想像するとホントに怖くて、そのときが来るまでに、何かを残さなきゃって思いますね。でも、こればっかりはどうなるか誰もわからないし、いつ死ぬかもわからない。だったらそれを考えるよりは、明日、明後日っていうような、目の前のことを大事にしようって。気持ちが動いて、何かしらインプットできれば、新しい泉が湧き出るかなとも思うんですけど」
――そういった外部刺激がSALU君にとっての創作源ですか?
「基本的には実体験が元になってることが多くて。やっぱり、答えは内にしかないと思うんですよね。そして、〈自分を知ること=外を知ること〉だと思うんです。自分を知らなくて自分をコントロールできないから、人を傷つけたりしてしまう。だから、自分を知れば人にも優しくできるって思うし、そうやって、答えはいつも心にあると思うんですよね。でも、心はいつも自分の中でそっぽを向いてるんです。だから、外からの刺激でその心を転がして、こっちを向いた瞬間の表情をリリックにするっていうか。そういうニュアンスですね」
――その意味では、心は自分の中にあるけど、ある意味で他人っていうか。
「そうですね。多分、人間は自分の中にふたつの人がいると思うんです。〈なんであんなことしちゃったんだろう〉ってことがあるじゃないですか。そうやって、ほとんどの場合は自分じゃない奴が自分を操ってて。でも、残った1割2割の本当の自分と話すっていうのが、自分にとって詩を書くということですね」
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