インタビュー

INTERVIEW(3)――自分そのものの視点で



自分そのものの視点で



SALU_A

――新録曲の“In My Life”はどのようなイメージで書かれましたか?

「“I Gotta Go”や“Rebirth”も迷いや不安からスタートしてるんですが、“In My Life”も〈僕は未来の事など知らない〉ってリリックがあるように、その気持ちは似てて。メジャーが決まったり、環境が変わったりで、この先自分がどういうふうになっていくのか正直見えなかったし、純粋に怖かったんですよね。でも、ここまで来て自分が迷ってたら、自分といっしょに歩いてくれてる人に失礼だし、みんなも迷っちゃうなって。だから、先がわからないこそどうにでも進めるし、それをどうにかするのは自分だなっていうふうに、自分の心を移していったんです。その感情を書いた曲でしたね」

――その心の変化はリリックの冒頭によく表れているし、その構成が見事だなって。

「でも、あんまり意識してないんですよね。後で〈あの部分が良かったです〉とか言われて、〈……うん、そうだよ!〉みたいな(笑)」

――“Rebirth”のリリックは〈僕の見た世界はクソだった〉って地点から始まって、後半では〈この世界は美しい〉ってところに着地しますよね。その間のリリックで世界を変化させていって、〈醜〉から〈美〉へ辿り着かせる構成がすごく印象に残って。

「あー……あの曲のなかで、世界に対して〈クソ〉と〈美しい〉がいっしょに入ってるって、いま気付きました(笑)」

――考えすぎて損した(笑)。

「ハハハ。思ってたことを書いただけだったんで。“Rebirth”とかの映像を作ってくれてるGHETTO HOLLYWOOD監督も、〈SALUくんの思い、ちゃんと伝わったから!〉って連絡くれるんですけど、〈あ~……〉みたいな(笑)。もちろん、すごく嬉しいですけど、〈実はそこまで考えてなかったな……〉って(笑)」

――でも、それだけイマジネーションを刺激するってことですよね。SALU君のリリックは断定が少ないから、それだけ想像の喚起力があるし、そのリリックへの〈乗りしろ〉が大きいなって。“In My Life”のリミックスにはRIP SLYMEからPESが参加してますが。

「RIP SLYMEは“STEPPER'S DELIGHT”のときから大好きだったんですが、PESさんと対談させていただく機会があって、そのときに、勝手に俺と似てるんじゃないか、同じようなことを考えたり経験したことがあるんじゃないかって思ったんですよね。そのときからいっしょに作れればなって思ってたんですけど、“In My Life”が出来たときに、この曲にはPESさんに入ってもらいたいなって。それでオファーさせてもらって」

――SALU君から見たPESさんの魅力は?

「飾らないで素で接してくれるし、歌詞にもそういう部分を感じるんですよね。今回のリリックもホントに良い詩で感動しました」

――新録の“Changes”にはRHYMESTERからMummy-Dが参加していますが。

「北海道にいた中高生の頃、MC松島と僕ともう一人でクルーを組んでたんですね。僕とMC松島はいまだにラップしてるけど、もう一人はラップを止めちゃってて。それで、今年の2月に北海道にちょっと戻ったときに、よく溜まってた公園に立ち寄ったら、自分の取り巻く環境も、街自体も、全部が変わったって感じて、そうしたら無性にそいつに会いたくなって。で、彼に会ったんですけど、音楽を続けてる自分と、止めてしまった彼との間に溝があるように感じてしまって、それがすごく嫌だなって。だから、100年も経てば形あるモノはすべて変わってしまうけど、でも、こういう絆だけは変わらないでほしいって思って、帰りの飛行機でこのリリックを書いたんです。その曲にDさんに参加してもらうのは、僕なりの彼へのエールというか。いろんなモノが変わってしまうけど、お前と会ったことで書けた曲だし、いっしょに憧れてたDさんに参加してもらえるようになったから、道は変わったかもしれないけど、お前も止まらないで進んでほしいんだって思いもあって」

――その意味でも、アルバムは全体的に、自分をもう一度振り返る意味合いのある作品なのかなって。

「そこを強く意識したわけではないんですが、結果的にそうなったかもしれないですね。『In My Shoes』は自分の後ろからの視点って言うか、〈自分を含めた世界〉って視点のイメージだったんですが、『In My Life』は全部の曲が、〈自分そのものの視点〉から書いたってイメージがありますね。だから、そういうバック・トゥ・ベーシックみたいな部分も入ったのかなって思いましたね」

――最後に、これからの動きは?

「アルバムの制作に入ってますね。一曲一曲シングルを作るというより〈アルバムを作る〉ってテンションでやってますね。かつ、今度はどういった視点で書くべきなのかを考えてます。それから、いろんなところでライヴをしたいですね。(ラッパーとして)やっていくって決めたんで、迷ったり後ろに戻ったりはしたくない。いまできることを全力で全部やっていきたいですね」

――その意味では、クラブ単位ではなく、先日出演した〈ARABAKI ROCK FEST.〉といったフェスのような、より大きな世界に出たい?

「そうですね。広い海に出て、波に呑まれて死んでしまうかもしれないし、すごい怪物が潜んでるかもしれない。でも、波に乗って泳ぎ切ることも、怪物と友達になることもできかもしれない。だから、いろんなところに出てみたいですね」


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掲載: 2013年06月05日 17:59

更新: 2013年06月05日 17:59

インタヴュー・文/高木“JET”晋一郎

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