INTERVIEW(4)――カウンター的な要素をどう大衆化するか
カウンター的な要素をどう大衆化するか
――ちなみに玉屋さん、そういう面で自分と似たセンスを感じるミュージシャンや作曲家の方はいますか?
玉屋「そういうふうになんでも取り入れて、情報量を多く、パンクに出すっていうのはPlus-Tech Squeeze Boxのハヤシベ(トモノリ)さんっていう作曲家の方に最初に感じたんですね。あの人もクラシックからブラック・フラッグまで聴く方らしくて、この人の感覚に近いのかもしれないっていうか、やりたいことはこういうことなのかもしれないっていう」
――大谷さんはどうですか? 例えばWiennersとかでんぱ組.incの玉屋さんの曲を聴いて、こういうところに繋がるなあと思うところ。
大谷「誰だろうな、名古屋のみそっかすってバンド知ってます?」
玉屋「こないだ対バンやりました」
大谷「そうなんだ。ああいうバンドがやってるのも同じ楽しさだと思って聴いてるんですよ。だからね、これはちゃんと記事に書いてもらいたいですけど、ロッキング・オンさんは、なんで今年の〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉にWiennersとみそっかすを出さなかったんだ!って。今年出しておいたほうがいいのになあ!って思いますよ。来年、間違いなくど真ん中に行くと思ってるんですよね」
――僕はWiennersを聴いて、ここ数年のアニソンとのリンクを感じたりもしたんです。アニソンにしても、アイドルにしても〈こういうふうにしなきゃいけない〉みたいなものに縛られてない曲がどんどん出てきていて、おもしろい。その感じがすごく似てると思います。
玉屋「確かに、縛りが発生してないのはありますよね。ロック・バンドだったら、自分のイメージとか、ロックであり続けなければならないっていうのがあると思うんですけど、実はアニソンとかアイドルの曲書くほうが縛りがなくて。僕も、自分の曲書くより、人に曲作るほうが何でもできるんですよ。バンドでやるのは難しいことだけど、アイドルがこういうことやったらおもしろいだろうなっていう。そういう自由さはあるのかもしれないですね」
――縛りがないっていうのは作り手としてはすごい重要なのかもしれないですね。
玉屋「そうなんです。あと、音楽以外の趣味をいかに音楽に出すかってことが重要だなと思っていて。僕、落語がすごい好きなんですよ。めちゃくちゃ詳しいわけじゃないんですけど、家に金馬さん(三遊亭金馬)のレコードがいっぱいあって、聴いてたりして。そういう粋なところとか出したいですね」
大谷「いいよね、東京背負ってんなと思う(笑)」
玉屋「下町の感じとか、ああいうのも音楽に入れたいんですよ。あと、アジアの街もすごい好きで、昔インドに旅行に行ったことがあるんですけど、インドとかもめちゃくちゃじゃないですか。なんでもあるというか、神様だって無数にいるし。マハラジャから乞食までひとつになってるようなところで。そういう感覚も音楽に詰め込めたらいいなとか思います」
――大谷さんも、そういうふうにカルチャーの枠組みに囚われないような考えで活動をされてると思うんですけれども。
大谷「うん、エンターテイメントはそれがいちばんポップだと思ってるから。ポップっていうのはみんなが思ってるような、大衆性を想定したものを出すことじゃないと思ってるんですよね。カウンターの要素があるものを、どうやって大衆化するかっていうことだと思ってるんですよね。だから基本的に、これはパンクかどうかってことで音楽を聴いて、お笑いを見てるかな。これはパンクだなと思ったら、それは俺にとってポップだなっていうのと同じ感じですかね」
玉屋「すごくわかります。僕もパンクに求めるものってそういうところだったりするんで。ステレオタイプの方たちもいるっちゃいるんですけど、僕がパンクを好きなのもそういう反骨精神なんで」
大谷「Wiennersも、そもそも西荻を主戦場にしたことがカウンターだし、そこで〈なんだ、ちょっと居心地悪いな〉って言い出して、〈これにこれ入れたらおもしろいんじゃねえか〉ってなっていくっていう。それがパンクだし、ポップだと思いますね」
玉屋「ありがとうございます」
大谷「だからもう、僕もがんばって一生懸命ついていきたいです(笑)」