インタビュー

LONG REVIEW――Wienners 『蒼天ディライト/ドリームビート』



どこへでも行けるミクスチャー・センス



Wienners_J



でんぱ組.incの“でんぱれーどJAPAN”は彼女たちのステージにおいて冒頭に披露されることの多い景気付けソングだが、あの超・躁状態とも言える電波ブレイクコアを繰り出したソングライター、玉屋2060%の持つポップセンスはもちろん、Wiennersの楽曲でも発揮されている。

瞬発力のあるめまぐるしい展開、そうした楽曲構成と呼応するように挿入される膨大な音楽的情報、シンセ・リフに顕著なオリエンタル風味……といった従来の基礎を元に、キーボーディスト・MAXのキュートなヴォーカル・パートが大幅に増強された2作目『UTOPIA』。“でんぱれーどJAPAN”以降の彼らはWiennersサウンドの一側面――本文中の言葉を借りれば〈西荻窪系パンク~ハードコア+ネオ渋谷系〉のうち〈渋谷〉寄りの成分をこれまで以上に強く表出しており、その密度の濃い折衷感は、例えば中華風エレポップとマッシヴなファストコアが交錯するLIFE BALL“BECAUSE I LOVE IT”のカヴァーに象徴的なのではないかと思う。

そこから約1年。ようやく届いた新作は、さらにキャッチーに突き抜けた2つの新曲と、そのマッシュアップから成る両A面シングル『蒼天ディライト/ドリームビート』だ。刻々と表情を変えるユーモラスな楽曲構成は相変わらずながら、パワフルかつ性急な4つ打ちの上で男女ヴォーカルが軽やかに掛け合う“蒼天ディライト”。美麗なハーモニーを従えて上昇するサビメロが胸を衝くスピーディーなパンク・ナンバー“ドリームビート”。そしてラストの“蒼天! ドリームマッチ”は上述の2曲の細かいパーツを精緻にコラージュしたハードコア・ダンス・チューンで、ジェットコースターぶりも甚だしい展開を見せる。エンディングの唐突なサンバ調で思わず爆笑したが、本文中で当人の口から語られた“蒼天ディライト”に込められた思いが、最後の最後で聴こえてくるナレーションにも潜んでいる。

自分たちはここからどこへでも行ける――その宣言ともとれるミクスチャー・ポップを堪能できる一枚。次に向かう先が本当に楽しみだ。


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掲載: 2013年07月24日 18:01

更新: 2013年07月24日 18:01

文/土田真弓