インタビュー

LONG REVIEW――『Bad Blood/Hereafter』&『SAMURAI GIRLS/ワイドルセブン』



すべてのアイドルは女優である



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というわけで、映画「讐 ~ADA~」のDVD/Blu-ray化に合わせて、〈戦慄篇〉の“Bad Blood”、〈絶望篇〉の“Hereafter”という、それぞれの主題歌を収めたシングルも同時リリース。アップアップガールズ(仮)の7名を中心に、バニラビーンズのレナとリサ、lyrical schoolのmei、キャラメル☆リボンの深田聖奈・上野天音・吉仲葵……と、いずれも本編に出演したT-Palette所属アイドルによるユニット=T-Palette mini All Stars名義の作品となっています。フィールドの違うアーティストとのコラボを重要なカードとして切ってくるアイドルは案外珍しくないものの、個々の世界観を大切にするアイドル同士の共演というのは、逆にあまりなかった試みかもしれません。

いずれも大隅知宇が作曲、岩城由美が作詞を担当。ももいろクローバーZの諸曲で名を上げた大隅は、それ以前にバニラビーンズの作品におけるキーマンのひとりですし、映画やドラマ絡みの仕事も多いシンガー・ソングライターの岩城も、バニビに“もうすぐトライアングル”の詞を書いた縁があります。とはいえ楽曲はもちろんバニビなモードとは異なるもので、特に“Bad Blood”は参加した各々が普段やっていないタイプのロック・ナンバー。アプガの仙石・佐藤にとって主演女優がチャレンジだったのと同様、この主題歌はそれぞれの参加メンツにとっても新しい〈演技〉への挑戦になったのかもしれません。すべての女性アイドルは女優である……なんてアンポンタンなことは言いませんが、なかでもクールな雰囲気作りに徹するmeiの表情は、やる時はやる人の本領発揮という感じ。もう1曲の“Hereafter”は一転して大きなバラード調で、〈心のままに生きていいよね? 例えそれが間違いだって〉という本編に即した歌詞も印象的に響いてくるものでしょう。



新しい伝家の宝刀



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で、そのリリースから間髪入れずに、アップアップガールズ(仮)は今年6枚目(!)、通算14枚目(!!)のシングル『SAMURAI GIRLS/ワイドルセブン』も仕上げてきました。まず“SAMURAI GIRLS”は、文字通り「七人の侍」を洒落込んでいるのは言わずもがな、ちょうど1年前に“なめんな!アシガールズ”を出していたことを思えば、足軽から侍へと立身した姿に感慨を覚える人もいるかもしれません。かねてからEDM由来の野太いサウンドを振りかざしてきたmichitomoの剛腕ぶりが、ここでは伝家の宝刀“UPPER ROCK”を優に超えるエッジーな振動を鎧にして、7人のアグレッシヴな格好良さを最大限に引き出しています。これまで直情的なアップ・チューン主体に駆け抜けてきた彼女たちながら、ここ数作では勢いのヴァリエーションを着々と広げてきた印象もあって、そんななかでもこれは間違いなく現時点での最高傑作! この斬れ味は今後のライヴでも鋭く磨き上げられていくことでしょう。

一方の“ワイドルセブン”は近年映画化もされた往年の名作コミック「ワイルド7」に着想を得たものでしょう。こちらを手掛けたのは、Maltine発の作品で知られる三毛猫ホームレスのmochilon。残念ながら未CD化の“カッコつけていいでしょ!”(各ライヴDVDで聴けます)と同系統の、彼らしくキャッチーで可愛げのあるチップチューンに仕上がっています。鎧を脱いだ丸腰の歌唱も“SAMURAI GIRLS”と好対照ですね。

ちなみに、上記したシングル2枚の間には、MV集となるDVD「アップアップガールズ(仮)THE DVD ~ミニMV集 おまけつき~」も登場。彼女たちにとって初MVとなった“アップアップタイフーン”をはじめ、代表曲“アッパーカット!”の新録MV、撮影シーンの密着映像などなどもドーンと収録されています。これまでの真摯で熱いライヴDVDとはまた異なる、7人のさまざまな表情がアーカイヴされていますよ。

この夏に〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉や〈SUMMER SONIC〉などの大舞台で奮戦したのも束の間、『SAMURAI GIRLS/ワイドルセブン』のリリースに先駆けた8月31日から、横浜BLITZでのリヴェンジ公演を皮切りに「1stライブハウスツアー アプガ第二章(仮)開戦」がスタート。季節が変わっても7人の熱気はアップアップしていくばかりでしょう!

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年08月14日 18:01

更新: 2013年08月14日 18:01

文/出嶌孝次

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