INTERVIEW(2)――強いのか弱いのかよくわからないところがいい
強いのか弱いのかよくわからないところがいい
――オビに〈埼玉経由で日本上陸〉って書いてありますが、やっぱり〈埼玉〉って点は重要なんでしょうか? 要さんと馬場さんの出身地ですけど。
根本「ハハハ。深い意味はないんだけど、こういうことにやたらと反応してしまうKANちゃんがいるんですよ。もうひとつのキャッチフレーズ〈ハミングロック〉にちょっと惹かれたんですよ。引きが強いのか弱いのかよくわかんないけども。こういった、相手がちょっと首かしげるようなものがKANちゃんのお気に入りですから。そういう言葉を並べながら、ひたすらニマニマしてて(笑)」
――〈ハミングロックの決定盤〉なんですものね、このシングルは。
KAN「それも強いのか弱いのかよくわかんないところ。でもそこがいいですよね。〈スーパー・ハード・クリーム〉みたいな、〈ん?〉ってなる感じがね。響きがいいでしょう?」
根本「〈風のハミング〉ってイヴェント名なんでお客さんもハミングしなきゃいけないだろうってことで、ライヴのエンディングにドヴォルザークの〈家路〉(本シングルのカップリングには、3者による同曲のカヴァーを収録)をやったんですよ。お客さんのハミングに合わせて僕らが送り出されるという。ということで、このイヴェントにとってハミングは大変重要なキーワードなわけです。そういう意味で、この曲も〈ハミングロック〉というところに重きを置いていて……あの~だからね、説明してもよくわかんないんですよ(笑)」
KAN「しかし、〈風のハミング〉というタイトルは誰がどんな気持ちで付けたんでしょうね?」
根本「そんなの、軽い気持ちに決まってんじゃん(笑)!」
KAN「やっぱり〈風のハミング〉と謳っている以上、コンサートでもっともやるべきこと、お客さんがいちばん望んでいることは、ハミングだと思う、僕は。1回目からそう信じてやってきたんで」
――はい……。
根本「ま、誰も別に望んでないと思うけどね(笑)。だからハミングだけでコンサートやるんだとか言いだしちゃって」
KAN「一時期それも考えましたよね」
根本「ありえないでしょ、それ(笑)。だいたい望まれてないから」
KAN「ま、イヴェント・タイトルが持つ意味を必要以上に考えてしまったということですよ」
――それにしても“靱のハミング”って題名は実に謎めいているというか、得体の知れなさがあって最高です。
KAN「そうなんですよね。僕らはもう〈靱〉って漢字も見慣れましたけど、初めてタイトルを見た人にとっては、〈何だ、この曲!?〉って感じですよね。例えば〈うなぎのダンス〉よりももっとイメージしにくいですよね」
――(笑)。ドラマティックな曲展開もこの曲の魅力で、7分以上もあるのにすんなり聴けてしまうところもいいです。
KAN「この3組の個性が見えやすくなるようにと考えて作ったら自然とそうなったんですよね。わりとコンパクトにできたなと思いますけどね」
根本「よくまとまってますよ。これまでに僕らそれぞれがいろんなコラボレーションをやってきているけど、ここまでがっぷり四つに組んだものはなかなかなかったと思います。そもそもライヴありきで作った曲で、もともとこの3組はライヴをいっしょにやってきていたし、やったらこうなるだろうってイメージが作りやすかったし、演奏もしやすかった。アルバムのある曲に誰かが参加する、というような発想と違った作業でしたね。こないだも〈SKB ALL STARS〉(S=スタレビ、K=KAN、B=馬場)って名乗ってライヴやったりしましたが、この3組だから曲でこんなに楽しめたというか、遊べたんだと思う。きっとコラボとしては理想の形なんじゃないですか?」
――この先、この3組で新しい曲を作る可能性はあるんでしょうか?
KAN「それは要さん次第でしょう(笑)」
根本「まあアルバムを作る可能性はないとは思うけど、ライヴをやっていって何かおもしろいものが見えてきたら、こういう楽しみが生まれるかもしれないね」
――もし馬場さんが中心になって曲を書くとしたらどうします?
馬場「そうですね~……ハーモニーを聴かせる曲とかやりたいですね」
根本「コーラス曲ね。ま、結局は誰かがメインに立って曲を書くしかないんですけど、KANちゃんがすごいのは、ここは誰々が主役で……ってポンポンと移っていくような曲が書けるところなんですよ。“We Are The World”みたいな曲ってなかなか作れないから。今回は馬場くんの〈ア~!〉って唸りが上手いことやってるなと思ったけど、KANちゃんのデモテープにあらかじめその要素が入っていたから、馬場くんも乗りやすかったんだよね」
馬場「今回は〈歌〉っていう感覚はあまりなかったんですよね」
――ほぅ、それはどういう意味ですか?
馬場「メロディーがどうのこうのとかっていうことじゃなくて、何ていうか……」
根本「思いをブッ込んでいくことが大事だったんでしょ?」
馬場「とにかく、声を出していこう!っていうか。スポーツのような感じにも似た……」
根本「そこはデモテープを聴いて、さすがだなと思った。KANちゃんとしては少しふざけているところもあったと思うんだよね」
KAN「いや、全然ふざけてないですよ。やっぱり馬場俊英はこうあるべきだということです」
根本「馬場くんがその通りにやってみると確かに良いんですよ。デモテープにおいてすでに精神的な部分が完成されていたんです。あとは僕らがその精神に則って参加すれば、うまいこと着地できるようになっていた。馬場くんなんてスタジオでずっと〈OSAKA~!〉って叫んでいて、音楽的ではないところで一生懸命がんばっていたもんね」
――それは特殊な現場ですね。
馬場「特殊でしたね~。どこか稽古を付けてもらったって感じでした(笑)」
KAN「2コーラス目の〈かと言ってテントなんかじゃ逆に失礼あたる〉の〈あた~~るっ〉の巻き舌をちゃんとイタリア語風にしているところも見事でしたよ」
――あそこはイタリア語風に歌ってたんですか?
KAN「あそこはイタリアです」
馬場「ま、埼玉経由のイタリアですけど……(笑)」