『OUT』の内側にある音楽①――サイトウ“JxJx”ジュン編
「ロード・エコーからは、自分のツボに素直であることはなんて素晴らしいことなんだと思わされましたね。ダブやメロウな曲が好きで、あとちょっとアフロも好きで……とか、総じて圧倒的に新しいことをやっているわけじゃないけど、なんか良いよ!っていう、今回は〈天然〉な感じを大事にしたいと思っていたところもあって、自分のツボに忠実っていう部分でシンパシーはビンビンに感じてました。今度新作を出すみたいなので楽しみです。しかし、2011年作『Melodies』のジャケット・デザイン、最高です!!
それからアフロ・ミュージックをアップデートして自分流にやってる人たちにもシンパシーをビンビンに感じてました。アンティバラスやオウィニー・シゴマ・バンド、カリブーの別プロジェクト=ダフニあたりがそうですね。アンティバラスの『Security』はジョン・マッケンタイアがプロデュースしたアルバムで、これは他の彼らの作品に比べてアフロ・ミュージックでありつつもポスト・ロック的な感触が強いというか、その結果生まれる妙な感じ、そこがおもしろいなと。それから、オウィニー・シゴマ・バンドのテクノ的なアプローチ……上手く言葉にするのは難しいんだけど、バンドからの打ち込みへのアプローチの感覚が絶妙というか、とにかくダサくない(笑)。で、自分流解釈っていう意味では、その最たるものがダフニかなと。アフロものを斬新にリエディットしてよりテクノ的なものに変換してるんですが、アフロのザラっとした質感、空気感は残しながらも、まったく別なオリジナルの音楽になってるっていう良さ。ついでにフォー・テットも、クドゥルを軸にしたバチーダなんかも全部いっしょ(笑)。こういったバランス感覚や考え方は、今回かなりヒントになってましたね。このへんを聴きまくっていたからこそ『OUT』が出来た感じはあります。さて、ならばわれわれはどうしようかって感じで。
リンドストロム『Smalhaus』は、リンドストロムも最高ですが、プロデュースしてるトッド・テリエ! 彼の仕事を片っ端からチェックしていて、ミックスやエディットのセンスはもちろん、キーボーディストとしてもすごくツボ。そのコード・ワークの良さだけで聴かせられるアレンジなんかを上手くバンドに落とし込めないか、なんて鍵盤奏者目線でも聴いてました。DJコーツェも口で説明するのが難しいんだけど、とにかく全体を覆うムードが最高。これまではバックグラウンドとか文脈みたいなものも含めて音楽を聴いたり語ったりするのが好きだったんだけど、どちらかというと雰囲気を楽しむ……って言うとなんか表面的に聞こえるかな(笑)。でもそうじゃなくて、なんだか良くわからないけど、なんか良いぞっていう、言語化できない何かがジワジワと感覚に訴えてくることの重要性に目覚めたんですよ。っていうか、音楽ってそもそもそういうものですよね。なんで、『OUT』もそういうアルバムであってほしいなと思っていたりします」(談)。
▼文中に登場した作品。
ジャケは登場順に左から、ロード・エコーの2011年作『Melodies』(Wonderful Noise)、アンティバラスの2007年作『Security』(Anti-)、オウィニー・シゴマ・バンドの2011年作『Owiny Sigoma Band』(Brownswood)、ダフニの2012年作『Jiaolong』(Jiaolong)、フォー・テットの2013年作『Beautiful Rewind』(Text)、バチーダの2012年作『Batida』(Soundway)、リンドストロムの2012年作『Smalhans』(Smalltown Supersound)、DJコーツェの2013年作『Amygdala』(Pampa)