FOX LOCO PHANTOM 『誰がために音は鳴る』
[ interview ]
海外で巻き起こったロックンロール・リヴァイヴァルを受ける形で、日本でもそんなバンドが数多く登場した2000年代後半。そんななか、和の要素を重んじた音楽性と激烈なテンションのライヴでひときわ異彩を放っていたのがFOX LOCO PHANTOMだ。2007年の結成以降、約4年の活動で6枚もの作品を残したが、まるで燃え尽きるかのように2011年の初頭に活動休止――このまま消えてしまうのかと思われたものの、その1年後にはライヴ活動を再開し、このたびついに新作『誰がために音は鳴る』が届けられた。
中村宗一郎がマスタリングを手掛けた剥き出しの生々しい音が印象的な、愚直なまでにストレートなロック・アルバムであり、バンドの完全復活を印象付けるのにこれ以上ない作品だと言っていいだろう。中心人物の猫田ヒデヲ(ベース)に、ここに至るまでの長い道のりをじっくり振り返ってもらった。
濃い時間だったからこその消耗
――まずは2011年1月の渋谷CLUB QUATTROでのライヴを最後に、活動休止に至った経緯から改めて話していただけますか?
「それまでものすごいハイペースでリリースとライヴをしていたので、一人一人が体力的にも精神的にもギリギリだったかなと。最初は解散か?っていう話で進んでたんですけど、帰る場所がみんな欲しかったというか、密度の濃い時間をいっしょに過ごしてきたから家族のような結束感があったので、それをゼロにするってところまでは踏み込めなくて。だからと言ってまた次の作品を作ってツアーに出るっていうのは考えられなかったし、一方で周りの状況はそれと反比例したすごくいい状況で、いろんな嬉しい話も来ていて、そのギャップにも悩みましたね。でも、ここは自分たちに正直に決断しようってことで、QUATTROでのワンマンで全部放出しようってなったんです」
――休止以前のスピード感っていうのは、意識的なものだったのか、それとも自分たちでもコントロールできない状態になっていたのか、どちらだったのでしょう?
「基本FOXはずっと自分たちの意志でやってきて、最初は生き急いでいたというか、あの時代って周りにも威勢のいいバンドがいっぱいいて、そういう仲間からも刺激を受けつつ転がり続けてたんですね。ただ、いまおっしゃった通り、途中からは何かに背中を押されているような、止まったらすべてなくなってしまうんじゃないかという恐怖感みたいなものと常に戦っていた感じはします。それと、このバンドはやっぱりライヴが相当消耗するんで、全員ボロボロだったっていうのもあった。その両方が同時にドンときちゃった感じでしたね」
――確かに、FOXがハイペースで活動していた2000年代後半って、いわゆるロックンロール・リヴァイヴァルみたいなことが言われていた時期だったりもして、シーンとしての熱気がありましたよね。
「そういうバンドがたくさん出てきて、それはそれでおもしろかったです。でもそのシーンだけじゃない、いろんなジャンルのバンドと対等にできたっていうのも、このバンドの強みだったとは思うんですけど」
――〈このメンツのなかに俺らいていいの?〉みたいな、違和感も含めて楽しんでいた?
「そうですね。ジャンルとかって、いまはあってないようなものだと思うんですけど、あえてジャンル分けするとしたらヴィジュアル系の子たちが好きだって言ってくれたり、若いバンドさんからも〈前から好きでした〉って言ってもらえたり。あの時代にやれてたのはすごく嬉しいことだったなって、いまになって思います。当時は周りのバンドの動くスピードも速くて生き急いでたから、もう残ってないバンドも多いと思うんですけど、それほど濃い時間だったんですよね。あの時代だからこそのFOXのスピード感だったと思うし、あの仲間たちといっしょにやってたっていうのは、いまでも自分たちの力になってると思います」