INTERVIEW(3)――俺たちまだ生きてるぜ!
俺たちまだ生きてるぜ!
――この曲が出来て方向性が定まった、みたいな曲ってありますか?
「“DISSECTION”かなあ。この曲は復活後、最初にみんなで作ったもので、本当に余計なものが一切ない、シンプルな曲なんですけど、いちばん突き刺さったというか、出来たときにメンバー自身でも〈これFOXっぽくない?〉って言ってたんですよ(笑)。あれが出来て、〈まだ初期衝動出せる〉って思いましたね」
――確かに、2回目の初期衝動ってポーズになってしまいがちだけど、それが自然にできたっていうのは大きいですね。
「普通は巧くなってたりすると思うんですけど、まったく巧くなってなかったし、バンド・マジックも一切なくて(笑)。でも逆にそれで〈俺らってこんなだよな〉って思えたし、FOXで初めて曲を作ったときの衝動とほぼ変わらないヒリヒリ感があったので、〈これはキタ!〉ってなりました。あと途中、もっと削ぎ落としたいと思ってた時期に僕の母親が亡くなって、さらに大きく心境の変化があったんです。それで歌詞もほとんど変えて。うちの母親はFOXのことがすごく好きで、新作も楽しみにしてたんですけど、完成する前に亡くなってしまったんです。それで一回リセットされたときにアルバムのタイトルが出てきた」
――『誰がために音は鳴る』ですね。
「それから〈伝える〉っていうことが何なのかをずっと考えてて、いまでも全然答えは出てないんですけど、できるだけ無心になって詞や曲を書くんだっていう衝動に駆られたんです。もっと生身で吐き出したいと思って、それが詞や曲にどんどん影響していきました」
――前半の楽曲のストレートさに対して、後半は暴走モードに突入していくというか、なかでも“ノスタルジア”の狂騒っぷりはすごいですね。
「狂ってますよね(笑)。ディスコードも気にしないっていうか、不協和音でいいって感じで、メンバーそれぞれがこの曲を聴いて鳴らしたいと思った音を勝手に鳴らしていて。歌詞にしても依田そのものだし。依田は自分で〈俺はヴォーカリストじゃない、俳優だ〉って言い切ってるんですけど(笑)、そういう部分に引き寄せられて出来た歌詞を依田が歌って、それに合わせて演奏したらああなったっていう。“DISSECTION”の裏というか、FOXの裏の部分、メランコリーな部分がものすごく出た曲になったと思いますね」
――ラストの“PRICKLE PRICKLE”では〈溶けた夢の果てにたどり着いた光の中へ/僕は君を連れて飛び込むのさ〉っていう歌詞が、途中で話してくれた〈いまは周りの人に突き動かされてる〉っていう心境を反映しているように思いました。
「FOXの曲は一見、1対1のような感じがすると思うんですけど、実は1対1じゃない部分がほとんどで、特定のものに固執するんじゃなくて、言ったら1対無限大だと思います」
――曲調にしても歌詞にしても、その感じが“PRICKLE PRICKLE”にはこれまでになく出てると思います。より多くの人、より大きな力を感じるというか。
「これまでにはなかったですね。本当に恥ずかしいぐらいというか、今回全体的に歌詞は恥ずかしいです(笑)」
――でも、さらけ出すことが重要だったわけですよね。
「そうですね、完成して良かったです(笑)。〈売れたい〉とか〈デカくなりたい〉っていう気持ちが、休止する前はメンバー全員にあって、いまもそれがない訳じゃないですけど、いまはバンドができるっていう初期衝動のほうが勝っちゃってる。だからこそこういうアルバムが出来たんだと思います」
――じゃあ最後にあえて訊くと、いまのバンドの目標は何ですか?
「なんだろうな……いままでずっと応援してくれてた人たち、新しく知ってくれた人たち、みんなに会いたいです。やっぱりFOXはライヴしてなんぼなんで、新しい曲もやって、〈俺たちまだ生きてるぜ!〉って、みんなで笑い合えたらいいな」