インタビュー

LONG REVIEW――FOX LOCO PHANTOM 『誰がために音は鳴る』



笑顔もポップさも焼き捨てた果てに鳴り響くロック



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切迫感がコードとビートになって鳴り響いているような音世界。アルバム全体の緩急のバランスとか、万人に共有可能な音楽のユニヴァーサル・デザインとしてのキャッチーさ、といったさまざまな作為をごっそり業火のなかに叩き込んで、音に触れた者の心が震えるか否か、その一瞬一瞬に全身全霊を傾けたとしか思えない熾烈な楽曲とメロディー――活動休止→復活を経て、1年半の制作期間を費やして完成した、FOX LOCO PHANTOMの実に4年ぶりのフル・アルバム『誰がために音は鳴る』。〈己の荒ぶる衝動の存在証明〉としての音と歌を極限まで突き詰めれば、それがやがて聴く者にとっての揺るぎない凱歌になっていく……というロックの基本原則が、タイトルのみならずその音の一つ一つまでも貫いている、文句なしのキャリア最高傑作だ。

“笑う世界”“五月の桜”のシリアスな爆走感、“BURST WORLD”“愛ってやつに”のエモーショナルなメロディー――ヘヴィーなディストーション・サウンドや同期といった飛び道具(?)に頼ることなく、肉体感覚に満ちたガレージ・ロックの音像越しに楽曲を放射する彼ら。とはいえ、爆走ナンバー“DISSECTION”をツイン・ギターの幾何学的なフレーズが彩っていたり、“METAL MACHINE”のギター・アレンジがキュアーやギャング・オブ・フォーあたりに通じるミステリアスな薫りに満ちていたり、唯一メロディアスなミディアム“ショコラ”はシューゲイザーにも通じる美しさに溢れている。ソリッド&ダイレクトな音の端々に、音楽的な引き出しの多さを感じさせるのがおもしろい。何より、ロックンロール~ガレージ・ロックが音楽シーンのど真ん中で鳴り響いた、ミッシェル・ガン・エレファントの時代に熱狂した人はもちろん、ロックンロールもガレージも彼方の星のきらめきくらいに感じている人までも揺さぶろうとする意志が、本作の音には凝縮されている。



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掲載: 2013年12月18日 18:00

更新: 2013年12月18日 18:00

文/高橋智樹