cinema staff 『blueprint』
cinema staffのニューアルバム『blueprint』が完成した。シングル“great escape”以降、ネクストブレイクが期待されていた彼ら。青写真や未来予想図を意味するタイトルの本作は、よりポップで言葉が体に入って来やすい、バンドの今後を占う上で重要な役割を果たす1枚に仕上がった。
作品全体を通して影の部分もしっかり描いたうえで、ポジティブなものが強く込められてるアルバムになったなって
―前作『Drums,Bass,2(to) Guitars』はかなり<開かれた>印象が強かったですが、新作はそれ以上の開かれ方で、cinema staffにとってターニングポイントになる1枚なんじゃないかという気がします。今作を制作するにあたり、どんな内容を想定していましたか?
三島想平(Ba.):「前作はバンドのリアルさ追求したアルバムだったんですけど、そこからもう一歩進んで、よりドラマチックでメッセージ性の強い内容を漠然とイメージしてました。そんなとき、最初に作ったのが“青写真”で、ちょうどDTMを覚えたのもあって大まかなアレンジ含めてデモを作っていったんです」
飯田瑞規(Vo.&Gt.):「三島がピアノで全体像を作ってきて、それをバンドサウンドに昇華していったんですけど、メロディも打ち込みで作ってきたものを聴いて、これをバンドサウンドにしたらどうなるのかなって。すごく刺激的だったし、指針になる1曲ができた気がしました」
辻友貴(Gt.):「ギターフレーズもピアノで作られていて、今までの手グセで弾いてたフレーズとは違って。そこはすごく新鮮でしたね。僕は結構好きでした」
久野洋平(Dr.):「でも僕は正直、前のアルバムでのやり方に手応えを感じていたし、急に制作方法が変わって戸惑っていたんです。すごく不安だったし……」
三島「それで<このやり方はやめよう>って言われて(笑)。でもメンバー全員ドラマチックでメロディアスなものにしたいっていう意思統一はできていたので、その後は<こういう感じの曲を作ろう>って話し合いながら進めていきました」
―“青写真”という曲が最初にできたおかげで、アルバムの軸は見えてきたと。それにしても今の編成になって10年近いバンドが、<青写真>というワードを使うところも興味深いですね。
飯田「僕ら今年で28歳になるんですけど、それぞれ不安を感じながら続けてると思うんです。やっぱり大人になっていくにつれていろんなことを考えるじゃないですか。そんな中<まだまだやれる>って前向きな気持ちで<青写真>という言葉を使うことは、自分の中で覚悟ができたからだと思うんです」
三島「これは僕だけかもしれないけど、もう不安が一周して、音楽がなかったら自分には何もないしなっていうところまでたどり着いたんですよね(笑)。だから今は本当に楽しいです」
飯田「そこだよね。とにかく音楽をやりたい、バンドをやりたいって前向きに思えてるし」
―メッセージ性の強い内容をイメージしたという話でしたが、今回リリースに先駆けてすべての歌詞をネット上で公開したのも、それに関係あるんでしょうか?
三島「まさに。イメージさせたかったんですよね、音像を。まずインスト曲の“陸にある海”をSoundCloudで公開したのも、アルバムの内容を想像してほしかったから。前のアルバムより言葉の重要さの比率が高いぶん、歌詞を先に読んで最終的に聴いたものとイメージのギャップがあるのか、思ってたとおりの音が来るのかを楽しんでもらいたいです」
飯田「僕は三島から歌詞をもらって読んだときに<これだけで1つの作品として成立するな>と思ったんですよ。だから、ほかのメンバーが初めて三島の歌詞を読んだときの気分も疑似体験してもらえるんじゃないかなって」
久野「歌詞を公開した次の日にライブで“シャドウ”を初めて演奏したんですけど、Twitterに<歌詞を読んでからライブで聴いたら、1行目で泣けた>って意見があって。それを見たとき、この企画をやってよかったなって改めて思いました。歌詞を先に目にしてから曲を聴いたときの感動というのは、新しいなと」
―こういう新たな試み含め、本当にこのアルバムがターニングポイントになりそうですね。
三島「そうですね。芯の部分は変わってないけど、許容範囲が広がってきてるのかな。こういう企画も思いついたら積極的にやりたいし、そこで得たものをバンドにフィードバックしていくのが健康的だなと思うし。これを最初からできてたらまた違ったのかもしれないけど、僕らはこのタイミングでよかったんだと思う。一周して今を楽しめてるわけですからね」
■ALBUM…『blueprint』 4/22 on sale!
■Song List
01.陸にある海
02.drama
03.シャドウ
04.竹下通りクラウドサーフ
05.地下室の花
06.copas
07.exp
08.特別な朝
09.ハトガヤ・ゲットー
10.the ghost
11.孤独のルール
12.青写真
記事内容:TOWER+ 2015/4/10号より掲載