カーネーションとChocolat & Akitoが共演! 〈夏の便り〉東京公演レポ
タワーレコードのバイヤーを長年務めた〈LIVE! TOWER RECORDS〉の制作スタッフが、〈生活の中に音楽が溢れていた時代を経験した音楽ファン〉に向け、そして〈スタッフ自身が観たいライヴ〉をテーマにお贈りする新たなライヴ企画〈夏の便り〉。来年で結成30周年を迎えるカーネーションと、GREAT3の復活も話題の片寄明人とChocolat夫妻によるユニット=Chocolat & Akitoをメインアクトに迎えたこのイヴェントの締め括りとなる東京公演が、7月13日に渋谷CLUB QUATTROで行なわれた。
コトリンゴ (写真:野田 真)
梅雨明けを前にしたこの日、開演前の会場にはビーチ・ボーイズやハイ・ラマズ、ジェリーフィッシュなどの楽曲がSEで流れ、夏のメロウな気分を演出する。ライヴのオープニングを飾ったのは、南波志帆らへの楽曲提供や映画音楽の分野での活動でも知られるシンガー・ソングライターのコトリンゴ。彼女の最新作『La memoire de mon bandwagon』にも参加しているドラマーの神谷洵平(赤い靴)と、自身のキーボードというミニマムな編成ながら、それを感じさせない分厚い演奏でファニーかつ色鮮やかな音世界を描いていく。好きな人ができたときの気持ちを、自分の心の中にその人の家が建てられたようなイメージで書いたという“おいでよ”では、彼女の優しくもはかない歌声と弾むようなドラムが混ざり合い、最後はパレードのように華やかなアレンジに。続くMCでは「この後はゴージャスで素敵で楽しい世界がこのステージで繰り広げられると思うんですけど、みんなでいっしょに楽しんでいきましょう」と語り、ジャジーかつ知的な響きのサウンドからアグレッシヴなジャムへと突入する“ghost dance”で終了した。
Chocolat & Akito (写真:野田 真)
そしてChocolat & Akitoは、2人の艶やかな歌声が絡み合う“アバンチュール”でスタートすると、妖艶なグルーヴにスキャットが絡む新曲“ジョヴァンニ”を間髪入れずに披露。2台のキーボードを並べてベースのパートも同時に弾きこなす清水一登(ヒカシュー)、タイトなリズムをキープするドラムスの栗原務(Little Creatures)、そしてChocolat & Akitoの過去作への参加でも知られるギターの清水ひろたか(mi-gu、Cornelius)という布陣が、鉄壁の演奏でサポートする。
片寄明人 (写真:野田 真)
「今日は13日の金曜日の仏滅にこんなに集まっていただいいてありがとうございます。今日は仏が滅するぐらいの勢いで頑張っていこうかと思います」(片寄)と意気込みを見せた後は、9月5日にリリースされる新曲“扉”をパフォーマンス。夏の暑さをかき消す涼風のようなサウンドが爽やかに駆け抜ける。清水のギター・ソロが炸裂する“悪魔と天使”、メロウなキーボードが心地よい“Walking in the park”と続き、MCでは2人が先日に訪れた北海道のとある動物園の話題に。そこは会場のクアトロぐらいのスペースにさまざまな動物が放し飼いされたワイルドな場所で、「獣の匂いがスゴイ。お昼前にいったんですけど、その匂いだけでお腹いっぱいになっちゃって、わたしなんかまだまだシティー派だと思いました(笑)」(Chocolat)とのこと。
そんな和みトークを交えつつ、ライヴはChocolatがメインで歌う“Kiss Me Black”、幻想的な響きを持った“防波堤”、ドゥーワップ好きの片寄らしいスウィートなメロディーに身悶えしてしまう“ジレンマ”と続き、変幻自在の濃密なポップ・ワールドで観客をトリコにしていく。「Chocolat & Akito版“3年目の浮気”のような楽曲」(片寄)という“ダディダディ”では男女が駆け引きする様を2人がアダルトな雰囲気で歌い上げ、結婚14年目のオシドリ夫婦ならではの息の合ったパフォーマンスで魅了。最後の曲“One”は、ここ数年で身の回りの友人が続けて亡くなり、生きることや死ぬことについて深く考える機会が多かったという片寄が、真剣に生きなくてはという思いを込めて、そして思いを果たせずに逝った友だちのために書いたという楽曲。「とにかく最後まで後悔なく、自分の良心が痛まないようやり尽くしたいなと思っています」(片寄)と語る彼の真摯な歌声が会場に響き渡り、深い余韻を残してステージは終了した。
カーネーション (写真:野田 真)
そして大阪、東京と続いた〈夏の便り〉の大トリを飾ったのは、直枝政広と大田譲の2人体制となった現在も、ますますエネルギッシュになったパフォーマンスで多くのファンを惹きつけている大ヴェテランのカーネーション。今回は、ヴォーカル/ギターの直枝、ベースの大田に、彼らの近年のライヴには欠かせない存在であるドラムスの張替智広(HALIFANIE、キンモクセイ)、そしてカーネーションには〈夏の便り〉で初参加となった藤井学(キーボード:MaNHATTAN、ex.The Miceteeth)の4人編成で登場。初っ端から現時点での最新作『UTOPIA』のリード・トラック“UTOPIA”でグルーヴィーに弾け、さらにメロウな佳曲“コズミック・シーのランチ・タイム”、レイドバックしたサウンドに直枝のギター・ソロが映える“未来の恋人たち”と、コロムビア時代に発表された夏ムードなナンバーが続く。
カーネーション (写真:野田 真)
MCでは、今年もしくは来年の夏の予定というゆる~い談義に。「来年ぐらいひさしぶりに海行ってみたいね。俺もう15年ぐらい海パンはいてないから。来年の夏までに海パンになれる身体を作る!」(大田)なんて目標を掲げると、「来年は30周年なので、海パンでライヴができるようにしようか(笑)」(直枝)という思いのほか前向きな発言が飛び出して、ファンも思わず爆笑。来年のカーネーションはマッチョに変身する!? なんて冗談はさておき、現在はニュー・アルバムのミックス作業中とのことで、新曲もできればとのことだったのだけれど、ここは趣向を変えて夏向きかつライヴではめずらしい楽曲が披露されることに。そして印象的なキーボードのイントロから始まったのは、98年発表のシングル曲“恋の不思議惑星”! しかもアルバム『Parakeet & Ghost』に収録されたヴァージョンに沿った激レアなアレンジでの演奏に、コアなファンも一気にヒートアップする。
カーネーション+Chocolat & Akito (写真:野田 真)
そこから、これまた夏にピッタリの名曲“Garden City Life”へとシームレスに流れ込み、さらに2000年代のカーネーションを代表するナンバー“ANGEL”をパフォーム。人気曲の連発にオーディエンスも笑顔と歓声で応える。MCを挟んでの“ジェイソン”では湿気も暑気も吹き飛ばすパワフルな快演で突っ走り、最後は彼らの名が大きく広まるきっかけとなった日本語ロックのクラシック・チューン“Edo River”で爽やかに締め。当然、会場からのアンコールは鳴り止まず、それを受けてカーネーション+Chocolat+片寄明人+栗原務の7人が登場! Chocolatと片寄の2人はコーラス、前日にベーシストの松永孝義が急逝したことを受けてか、MUTE BEATのTシャツを着用していた栗原はタンバリンを手に持ち、カーネーションのライヴではお馴染みの“夜の煙突”セッション大会に突入する。栗原が大田の頭でタンバリンを叩いておどけてみせたり、Chocolatが住友林業のCMキャラクター〈きこりん〉の声を披露したりと、どんちゃん騒ぎのような賑々しさのなか、客席も右に左に大揺れしてボルテージは最高潮に達し、華やかな盛り上がりのうちに公演は終了した。
★TOWER RECORDS LIVE INFORMATIONはこちらから
〈LIVE! TOWER RECORDS “夏の便り”〉 @ 東京・渋谷CLUB QUATTRO 2012.7.13 セットリスト
【コトリンゴ】
1. wataridori
2. みっつの涙
3. こんにちは またあした
4. おいでよ(Shuffle Version)
5. ghost dance
【Chocolat & Akito】
1. アバンチュール
2. ジョヴァンニ
3. 扉
4. 悪魔と天使
5. Walking in the park
6. Kiss Me Black
7. 防波堤
8. ジレンマ
9. 虹と雨
10. ダディダディ
11. Geist
12. One
【カーネーション】
1. UTOPIA
2. コズミック・シーのランチタイム
3. 未来の恋人たち
4. 恋の不思議惑星
5. Garden City Life
6. ANGEL
7. ジェイソン
8. Edo River
〈アンコール〉
1. 夜の煙突(w / Chocolat & Akito)