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サザンオールスターズ、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」大団円迎えた最後の夏フェス出演。「またどこかでお会いしましょう!」

サザンオールスターズ
Photo by 西槇太一

サザンオールスターズが、9月23日に開催された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」に大トリとして出演。ライヴ・レポートが到着した。

 

9月23日。1週間前まで、この日のひたちなか市の天気予報は雨だったが、サザンの晴れ舞台を祝うかのように、天気は気温と共にフェス日和に。時刻は17時30分を回り、日が暮れて深いオレンジに空が染まると、ライヴ開演を告げるジングルがモニターに流れ始めた。サザンオールスターズ最後の夏フェスを見届けるべく会場に集まった50,000人が大歓声を上げると、ステージ上にサポート・ミュージシャンがにこやかな表情で現れ、続いてサザンオールスターズが登場。大喝采のなか、5人がステージ前面に集まり、手を繋ぎ、ラインナップする。これぞ、サザンオールスターズ。飾らず、格好つけるわけでもなく、ただ5人がそこに集まり手を挙げるだけで、会場中に笑顔が満ちる。サザンオールスターズ「最後の夏フェス」の幕が開けた。

オープニング・ナンバーは、1978年発表のアルバム『熱い胸さわぎ』に収録された“女呼んでブギ”。50,000人のクラップと刻む軽快なリズムに乗せて、令和の時代には不適切にもほどがあるギリギリアウト(!?)の歌詞が弾む。サザンらしさ満載の軽妙なこの曲で幕開けを飾ったことが、今日この時間が楽しく幸せな時間になることを確信させる。1曲目の演奏が終わり「こんばんは! ロッキン最終日です。いい天気にしてくれて本当にありがとうございます、みなさん! 最後まで残ってくれてありがとう!」と感謝を伝えると「サザンオールスターズです! 新曲聴いてください!」と宣言。2曲目に投下したのは最新楽曲“ジャンヌ・ダルクによろしく”だ。オーバードライヴの掛かったギターがリフを鳴らし、無骨なバンド・サウンドが会場の空気を震わせる。46年音楽シーンの第一線に立ち、常に新曲で闘ってきた。新曲を生み出しリスナーに届け、進化し続けることにこだわってきたからこそ、今、このステージがある。バックに背負ったモニターには「SOUTHERN ALL STARS」の文字だけが写し出され、小細工なし、ロック一本で50,000人と向き合うその姿は、国民的ロック・バンドたる王者の風格を纏い、間違いなく「夏の魂」が燃えていた。

時代は再びタイムスリップし80年代の名曲が2曲続く。寸分違わず刻まれる原のピアノ・リフから始まるマイナー調の“My Foreplay Music”で会場を淫靡なムードに包んだかと思いきや、波の音が流れ“海”のイントロが始まると、会場中を爽やかな風が吹き抜ける。ねっとりした情事と甘酸っぱい恋。これ程までに曲ごとの振れ幅があるアーティストはサザン以外、未だいないのではないだろうか。少し話は逸れるが、“海”を披露したのは、2020年6月25日、コロナ禍に行われた無観客配信ライヴ「サザンオールスターズ 特別ライブ2020「Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~」以来4年ぶり。当時、未曾有の疫病が世界を襲い、世の中が暗いムードになっているなかで真っ先にサザンが大規模無観客配信ライヴを行ったことは記憶に新しい。街中ではマスクすることが義務付けられ、もちろんライヴには観客はいない。誰しもが苦境に立たされるなかで、一筋の希望を灯したライヴだったが、あれから数年が経ち、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」もコロナ以来5年ぶりに同会場での開催に漕ぎつけ、サザンオールスターズのステージでは50,000人が一同に集まり、マスクを挟まずに笑顔を見せ合えることができた。この環境は、当たり前のようでいて、当たり前ではない、至高の幸せなのである。

“神の島遥か国”に曲が変わると、一気にムードは湘南から南国へ。陽気なサウンドが会場中を気持ち良く酔わせたかと思いきや、“栄光の男”の哀愁が観客の感情を揺さぶる。その余韻も冷めやらぬうちに“愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~”に演奏が移ると、照明で会場が赤く染まり異次元の世界へ。バンド・サウンドとホーン・セクションが絡み合い妖艶にグルーヴする。鬼気迫る演奏と桑田佳祐(Vo/Gt)のラップが重なり、50,000人が陶酔するなか、息つく間もなく続いたのは、“いとしのエリー”。プログレッシヴからソウル・バラードまで、ジャンルを横断して色褪せない大ヒット曲の数々を持つバンドの特異性はさることながら、桑田佳祐の歌唱力に圧倒される。いつの間にかとっぷりと日が暮れ、時折涼しい風が吹き抜けるなか、今が最高潮なのではないかと思わせられるソウルフルな歌声に、観客一同が聴き惚れ、感動で涙する。9曲目に披露した“思い過ごしも恋のうち”では、モニターにデビュー初期のころの本人映像が映し出される等、長きにわたる活動を経て今日のステージに辿り着いたことを噛み締める一幕も。

10曲目に入る前に一息をつき、MCで桑田が「楽しんでますか? 皆さん、ここに50,000人も集まってくれているということで、本当にありがとうございます! 長い時間だったと思いますけど、皆さん我々のところで待ってていただいて、ほんとありがたいです」と感謝を述べ、今日出演した各アーティストについて触れつつ「景気付けにコール&レスポンスを!」と、桑田と50,000人の観客が掛け合いをした流れで“東京VICTORY”に突入。ミラーボールが回りだし、幾重に重なる光の線が会場中を明るく照らす。スポーツを盛り上げる応援歌としても人気を博すこの曲だが、この日に限っては「夢の未来へ Space goes round/友よ Forever young」という歌詞がメンバー5人からオーディエンスへ、そしてロッキンへの激励のように響く。サザンと会場の50,000人、そしてスクリーン越しの15万人が一体となり「Wow wow」とコール&レスポンスした瞬間は多幸感に溢れる瞬間だった。その幸福感は次なる“真夏の果実”でピークに達する。舞台上の照明がオレンジ色の電球だけになり、シンプル且つミニマムな演出が曲の切なさを引き立てる。ラスト・サビでは、モニター上に星空の如く光が全面に映し出され、会場全体が自然と一体に。サザンの演奏に包まれ、世界と1つになる感覚は野外ライヴならではの体験だ。

12曲目に披露した“恋のブギウギナイト”は間違いなく今回のライヴのハイライトの1つだろう。2024年のサザンの活動を封切りした新曲であり、大反響を呼んだフジテレビ系ドラマ「新宿野戦病院」の主題歌ということもあり、今夏メディアを席巻していたが、ライヴで披露されるのは“ジャンヌ・ダルクによろしく”と共に今回が初。イントロが鳴り始めた瞬間に歓声が沸き、ド派手なレーザー、奇妙に光る自動販売機、ロング・ドレス姿のセクシー・ダンサー等が登場するなど、カオスなディスコに早変わり。アウトロで「ロッキン最高!!」、「今夜はありがとう!!」と言う桑田は、エンジン全開だ。ここからは怒濤のラッシュだ。「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」で大合唱を巻き起こし、“マチルダBABY”、“ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)”で拳を突き上げヒートアップさせると夏フェスお決まりのあの曲へ。曲に入る前のOvertureで「夏フェスは暑すぎて おじいさんとおばあさんは goodbye」、「泣かないで渋谷さん みなさんこれからもよろしく」と演歌調に歌い、今年退任したロッキング・オン・グループ元社長/現会長 渋谷陽一、そして、夏フェスのバトンを渡した後輩ミュージシャンたちへのメッセージを送り“みんなのうた”へ。50,000人が手を振り、もちろんお決まりの桑田による放水も。本編最後に披露されたのは“マンピーのG★SPOT”。タイトル、歌詞、モニターに映し出される映像の数々への言及はあえて避けるが、“女呼んでブギ”で始めて“マンピーのG★SPOT”で締めくくることのできるアーティストは、未来永劫、世界中を見渡してもサザンしかいないことは間違いない。市井に溢れかえる猥雑さを、時代と共に音楽に昇華したものがポップ・ミュージックであり、エンターテイメントなのである。その極意が散りばめられた圧巻のステージだった。

鳴り止まないアンコールの拍手と歓声に応えて、「今日はありがとう!」と再び戻ってくると2018年に同フェスに出演した際、1曲目に披露した“希望の轍”を繰り出した。老若男女に愛されるこの曲が、オーディエンスの胸を熱くする。サザンオールスターズが歩んできた46年に残る轍は、偉大だ。そして「最後の夏フェス」で披露した最後の曲は、「すべての始まり」の曲“勝手にシンドバッド”。総勢約40名のサンバ・ダンサーを引き連れ、大合唱が巻き起こる。演奏の終盤には、なんと23日公演に出演した全アーティスト、ヤバイTシャツ屋さん、ももいろクローバーZ、緑黄色社会、Creepy Nuts、WANIMA、THE YELLOW MONKEYがステージに出てくるサプライズも! 桑田が、全アーティストの名前を呼びつつ、一緒に間奏のコール&レスポンスをする場面は、日本夏フェス史に類を見ない語り継がれるワンシーンになるに違いない。豪華絢爛花火も上がる等、祝祭感溢れるこれ以上ない空間に。サザンオールスターズの夏フェス最後のパフォーマンスは大熱狂のなか、幕を閉じた。実は今回、デビュー曲“勝手にシンドバッド”から最新曲“ジャンヌ・ダルクによろしく”まで、1970年代、80年代、90年代、2000年代、10年代、20年代にそれぞれ発表した楽曲を網羅するセットリストとなっていた。誰しもの人生に、いつも必ずあるのがサザンの音楽だ。日本全国、老若男女、映画館も入れて20万人を越える全ての観客を1人も置いてきぼりにはさせないと言わんばかりの、サザンオールスターズの愛が溢れる100分のステージだった。

桑田は最後のMCで言った。「本当に、大変お騒がせしました。一旦我々、卒業させていただきますけども、本当に若い素晴らしいアーティストたちにこれから頑張っていただいて、今後も素晴らしいこのフェスが、素晴らしくあるように、信じております」。国民的ロック・バンドであるサザンオールスターズから後進の素晴らしいアーティストたちにバトンが渡された、日本音楽史で永遠に語り継がれる名場面が生まれた夜だった。

ただ、あくまで引退したのは「夏フェス」である。今冬にオリジナル・アルバムがリリースされることも発表されているし、最後に「またどこかでお会いしましょう!」と桑田が言ったように、近いうちにまた新たなアナウンスがあることは間違いないだろう。まだまだ、サザンオールスターズは未来へと続いていく――。

サザンオールスターズ

サザンオールスターズ

サザンオールスターズ
Photo by 西槇太一

[setlist]
01. 女呼んでブギ
02. ジャンヌ・ダルクによろしく
03. My Foreplay Music
04. 海
05. 神の島遥か国
06. 栄光の男
07. 愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~
08. いとしのエリー
09. 思い過ごしも恋のうち
10. 東京VICTORY
11. 真夏の果実
12. 恋のブギウギナイト
13. LOVE AFFAIR~秘密のデート~
14. マチルダBABY
15. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
16. みんなのうた
17. マンピーのG★SPOT
En1. 希望の轍
En2. 勝手にシンドバッド

 

▼書籍情報
小貫信昭
「いわゆる「サザン」について」


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カテゴリ : タワーレコード オンライン ニュース

掲載: 2024年09月24日 21:30