歌の数だけ恋があり、恋の数だけ歌がある。女の数だけ嘘があり、男の数だけ涙がある。時代は移り変わっても、恋人たちの心模様は変わらない……。そんなわけで、今回はソウル・ミュージックが守り続ける至高の伝統芸、デュエットについて紹介します!!
男と女がいればドラマが生まれる。愛の数だけ歌がある……なんてクサい台詞も、男女のデュエットを聴いていると、さもありなんという気にさせられる。特に男女の恋愛を生々しく歌い上げるソウル/R&Bほどクサいデュエットが似合うジャンルもないのではないか。愛を囁き合いながらふたりでクライマックスへ到達する、もしくはすれ違うふたりの心情をそれぞれが綴っていく。かように男女デュエットはシアトリカルでベタなものだが、それゆえに恋するリスナーは感情移入しやすい。加えて、デュエットは歌(詞)に重点が置かれるから、サウンドは比較的シンプル。それだけにシンガーには歌唱力が求められるわけだが、その結果、名曲(名唱)率も高まってくるのだ。
もっとも、ひと口に〈男女デュエット〉と言っても、夫婦、恋人、親子、兄妹/姉弟、レーベルメイト、大物シンガー同士、さらには故人との疑似共演まで、演じ手の間柄はさまざま。また、それが一曲限りの共演に終わる場合もあれば、アルバムを作るまでに発展する場合もある。そんなわけで、曲単位で挙げていくとキリがないのだが(→別掲コラム参照)、ソウル/R&Bにおいて男女デュエットの醍醐味を広く伝えたのは、やはり3枚もの共演アルバムを作ったマーヴィン・ゲイとタミー・テレルだろう。マーヴィンはそれ以前にもメアリー・ウェルズやキム・ウェストン、タミーの他界後にはダイアナ・ロスとも共演盤を残しているが、現在まで歌い継がれている曲はマーヴィン&タミーのそれが圧倒的に多い。例えば“Your Precious Love”はアレクサンダー・オニール&シェレールやディアンジェロ&エリカ・バドゥに歌われ、“If This World Were Mine”はルーサー・ヴァンドロス&シェリル・リンやココ(SWV)&タイリースが披露していたように。
▼このたび紙ジャケSHM-CD化されたマーヴィン・ゲイのデュエット作を一部紹介。
▼このたび紙ジャケSHM-CD化されたマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルのデュエット作を一部紹介。