そんなベスト・カップルに楽曲を提供していたアシュフォード&シンプソンもマーヴィン&タミーをめざし、73年にデュオとして本格的に活動を開始。彼らと競うようにマリリン・マックー&ビリー・デイヴィスJr、ウォマック&ウォマックなどの夫婦デュオもディスコ~ブラコン時代を爽やかに駆け抜けていった。マーヴィン&タミーの時代から登場していたピーチズ&ハーブ、アシュフォード&シンプソン同様に裏方でもあったリネイ&アンジェラも80年前後に活躍した名物デュオとしてお馴染みだろう。80年代にはコリンズ&コリンズや、ゴスペルのビービー&シーシー・ワイナンズなどの兄妹デュオも登場している。
一方、大物アーティスト同士の共演による名作も少なくない。オーティス・レディング&カーラ・トーマスの共演盤もそのひとつだし、特にロバータ・フラックとダニー・ハサウェイによる2枚の共演盤はマーヴィン&タミーの諸作と並んで強い影響力を持つ。ロバータはダニー亡き後ピーボ・ブライソンとも共演盤を制作していた。また、シリータがGC・キャメロンとビリー・プレストンのそれぞれと吹き込んだ共演盤も人気が高い。他にもカーティス・メイフィールド&リンダ・クリフォード、バニー・シグラー&バーバラ・メイソン、ミリー・ジャクソン&アイザック・ヘイズ、ジョニー・ギル&ステイシー・ラティソウなど、組み合わせだけで興奮モノの共演盤が残されているが、いずれも単なる話題作りに止まらない成果を挙げていた。
近年は曲単位での共演(コラボ)がより一般的になったこともあってか、デュオ・アーティストの登場やデュエット盤の企画自体が少なくなった。だが、ケニー・ラティモア&シャンテ・ムーアやキンドレッド・ザ・ファミリー・ソウル、タニークのような仲睦まじい夫婦たちが男女デュオ復権の扉を開いてくれてもいる。傑作を放つも解散(破局?)してしまったコフィ・ブラウンのようなフレッシュなカップルの登場を願いながら、織姫と彦星が愛を語り合う七夕の夜空を見上げるとしよう。
▼近年の男女デュオによる作品。