Norma Blu初の日本人アクトは、唯一無二のクラブ・ジャズ・ディーヴァ!
「結局はエネルギーなんです、シンガーに大切なのって」。
いや~、とりあえず自分が同性だったらどうなることかと思った。この容姿でこのスタイルで、おまけに弁も立つ。非の打ちどころのない女性の口元からこんな言葉がもれるのだから。5枚目となる新作『By My Side』の録音中、青木カレンはそのことを痛感させられたという。
「パウロ・スコッティ(プロデューサー)いわく〈キミはここでエネルギーを失ってたよ〉。彼のアドヴァイスってそういうのだけなんです。私の知る限り日本とはまったく違う。ピッチや音程やタイミングといったものをそれほど気にしてない」。
テクニックじゃない、カッコじゃない、〈エネルギーこそ基本〉ということを、今日の欧州ジャズの台風の目であるイタリアが教えてくれるとは。訪れたのは去年の晩夏。現地で録音したのも彼女にとって大事なことだった。
「純粋にイタリアン・ジャズが好きというのもあるけど、彼らはそうしたエネルギーに強く支えられたライヴ・セッションを得意としている。対する私も歌の真価を生のステージに見い出すタイプ。いろいろモチヴェーションを上げてくれたんです。あとは、敬愛するニコラ・コンテの影響も大きい。ある日ラジオから流れてきた彼の曲に耳を奪われ、すぐにCDを買って、明記されてたメアドに送ったんです、〈あなたの音楽は素晴らしい!〉と。ただそれだけを伝えたかった(笑)」。
青木カレン、生まれながらにして情熱大陸の住人だったのである。そしてその熱は異国の開放的な空気と混じり合い、新たなチャレンジに向かわせることになる。
「セルフ・プロデュースが多かったいままでは選曲も自分でやってきたけど、今回はパウロに一任した。そういう環境も楽しんでみたいと思ったんです。彼は私の声質などを研究しながらDJ仲間にも相談したりして選曲してくれたそう。それからこのアルバムには裏テーマがある、〈80's〉というのが。最近のパウロのマイブームなのかな、私のイメージにもそれがあるというんですが(笑)」。
その象徴としてジャジーに再現されるのが、ネオアコの聖典“Each And Everyone”(エヴリシング・バット・ザ・ガール)だ。“We've Only Just Begun”“Feel Like Makin' Love”といった定番だって、青木カレンが歌うとなんだか新鮮に感じられる。
「ポップスでもロックでも大してこだわりはない。重要なのは〈私が歌う〉ということ。ジャズってジャンルじゃなくアティテュードじゃないですか。〈その時あなたならどう動く?〉だと思う」。
彼女自身が〈どう動く〉かを将来に向けて語ってもらうと、またまたわかってらっしゃる的な発言でまとめてくれた。
「最終的には朗読かな。目の前のお客さんに私の言葉を伝えるのが自分の使命。それを朗読のテンションで歌うというのが究極なんです。でもそれには、いま持ってるエネルギーとマインドをもっと上げなくちゃね」。
▼青木カレンの作品を紹介。
ベスト盤『THE CLUB JAZZ DIVA』(ランブリング)