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第47回――都会はエムトゥーメイ

ジューシー・ソウルの定盤たち――(2)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2010/08/30   14:12
更新
2010/08/30   14:12
ソース
bounce 323号 (2010年7月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次、林 剛

 

SADANE 『One Way Love Affair』 Warner Bros./ワーナー(1981)

ジョージア州はサヴァンナ出身で、ステファニー・ミルズのツアーにも参加していた(マーク・)サダーンのデビュー作。ストロングなヴォーカルとアーバンなサウンドとの相性は最高で、穏やかに感情を滾らせる冒頭のミディアム“One-Way Love Affair”から同時代のルーサーにも劣らぬ名唱・名演が楽しめる。トータルで判断して素晴らしいのは次作だろうが、楽曲ごとの輝きは当然のようにここでも極上だ。*出嶌

LOU RAWLS 『Now Is The Time/Close Company』 Expansion

PIRを後にしたルー・ロウルズのエピック移籍作『Now Is The Time』(82年)を含む2in1。ここではトム・ベルと制作を分け合っているエムトゥーメイ&ルーカスだが、起用の理由はコンビのフィリー・ソウル的な作風がルーのイメージと合致したからだろう。アーバンなミッド・スロウ“Let Me Show You How”やウォーキング・テンポの“Back To You”など、主役の芳醇なバリトンを美味く引き出した秀曲が揃う。*林

MARC SADANE 『Exciting Warner Bros./ワーナー(1982)

サダーン名義で出した前作に続いて、エムトゥーメイ&ルーカスが全面プロデュースした2作目。“One Minute From Love”をはじめとして前作以上に快活なアップが揃うが、ルーカス不在の曲もあり、アル・マッケイらがギターを弾いたファンクでは“Juicy Fruit”以降のソリッドなエムトゥーメイ・サウンドが顔を覗かせている。前作に続くモータウン曲カヴァーとして、マーヴェレッツの“Forever”も披露。*林

SUNFIRE 『Sunfire』 Warner Bros./ワーナー(1982)

ギャップ・バンドのドラマーを務めたレイモンド・カルホーン、シンガーのローランド・スミスを従え、レジー・ルーカスが結成したトリオによる唯一のアルバム。エムトゥーメイ軍団のサポートも得ながら、ルーカスならではの洒落たサウンド志向は本隊以上にスタイリッシュだ。流麗なグルーヴが吹き抜ける“Step In The Light”を筆頭に、ロリータ・グラハムのラヴァーズ・カヴァーも著名な“Young, Free And Single”など名曲だらけ。*出嶌

MTUME 『Juicy Fruit』 Epic(1983)

メンバーの大幅減員を転機に、よりアーバナイズされたユニットに変貌して放った起死回生の大傑作。タワサの麗しい歌声とシンプルで硬質なビートが、都会の夜を感じさせるセクシーでクールなムードを演出することに成功。70年代に活躍した大所帯ファンク・バンドがテクノロジーの進歩や流行の変化にどう向き合っていくかを示すひとつのサンプルにもなった。演奏のサポート陣にはシステムの2人やバリー・イーストモンドらの名も。*出嶌

TAWATHA 『Welcome To My Dream Epic/FTG(1987)

バンド結成前からジェイムズ・エムトゥーメイと行動を共にし、ソングライターとしてもファミリー作品を中心に才能を発揮してきた彼女。この唯一のソロ作もジェイムズのプロデュースによるもので、エド・ムーアやフィリップ・フィールドら後期のバンド・メンバーが仕立てたサウンドはソリッドで瑞々しい。以降はセッション・シンガーとして久保田利伸やレニー・クラヴィッツ、レオナ・ルイスらの作品で活躍中だ。*出嶌

VARIOUS ARTISTS 『The Best Of Mtume & Lucas』 Expansion

本ガイドに掲載されたアルバムからのハイライト曲が並ぶ、エムトゥーメイとルーカスの作品集。アルバム未掲載の人では、まずエムトゥーメイ&ルーカス一派としても活躍したサックス奏者、ゲイリー・バーツの“Keep Going On”(80年)が素晴らしい。タワサ・エイジーが情熱的に歌い上げるミッド・ダンサーだ。リナ・スコットの“If I Had A Chance”(79年)はムーディーなスロウ・バラード。これもクラシック! *林