EDWIN BIRDSONG 『Edwin Birdsong』 (1979)
ロイ・エアーズ~ユビキティ周辺で活躍しながらソロ作も発表してきたLAのシンガー・ソングライター/鍵盤奏者。この通算4作目はPIRに残した唯一のアルバムながら、粘っこいファンク・サウンドにも参加メンツ的にも当然PIRらしさは希薄。ダフト・パンク“Harder, Better, Faster, Stronger”でネタ使いされた冒頭の“Cola Bottle Baby”を筆頭に、この後サルソウルに移籍するというのも納得のいかがわしいグルーヴが最高だ。*出嶌
DEXTER WANSEL 『Time Is Slipping Away』 (1979)
イエロー・サンシャインを経てソロ契約を果たした、後期PIRサウンド最大の立役者。ソロではスペイシーなジャズ・ファンク~フュージョンを聴かせたが、この4作目はテリー・ウェルズの歌う“The Sweetest Pain”が象徴するように、来る80sのブラコン作法を見据えた快作に。ブーツィー風の“Funk Attack”や妖艶なディスコ“I'll Never Forget(My Favorite Disco)”など、引き出しの多さを隠さない多才ぶりが実に格好良い。*出嶌
THE JONES GIRLS 『The Jones Girls』 (1979)
ノーマン・シーフ撮影のジャケットも秀逸なジョーンズ・ガールズの処女作。後期PIRらしいスマートなサウンドと3姉妹の美しいハーモニーが見事に溶け合った傑作で、ジェイ・Z“The City Is Mine”でネタ使いされたディスコ曲“You Gonna Make Me Love Somebody Else”や後にエクスケイプがカヴァーしたメロウなバラード“Who Can I Run To”など名曲が揃う。アダルトなソウル・ミュージックの極みといった感じの作品だ。*林
SILK 『Midnight Dancer』 (1979)
ウジマ~アングロ・サクソン・ブラウンというヴォーカル&インスト・バンドを前身とするグループ。シルク名義ではPIRに本作一枚を残すのみだが、ファンキーでジャジーな感覚を打ち出した70年代ソウル・バンドの総集編的なスタイルは実に個性的で、フィリーの音とも良い相性を見せた。白眉は紅一点のデブラ・ヘンリーが情熱的に歌い上げるミディアム・スロウ“I Can't Stop(Turning You On)”。後期PIRのメロウなムードを体現した好作だ。*林
STYLISTICS 『Hurry Up This Way Again』 TSOP(1980)
PIR以前からトム・ベルとフィリー・サウンドを確立してきた先駆者も、ディスコの狂騒に疲れて(?)PIRファミリー入り。原点回帰というよりは従来のモードを80年代に向けて総括した印象で、全体を統轄するデクスター・ウォンゼルならではのグルーヴと昇天ファルセットの絡みはどれも絶品。ジェイ・Z“Politics As Usual”のネタとしても名高いスロウの表題曲から、ギャツビー系の哀愁ダンサー“It Started Out”まで好曲揃いだ。*出嶌