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第48回――フィリーの真髄

真夏日の幻のようなリイシューとおまえ

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2010/09/28   19:10
更新
2010/09/28   19:11
ソース
bounce 324号 (2010年8月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次

 

皆様の懐具合を考えて掲載量をセーヴ……しません。まずはタワレコ×HMV×ディスクユニオンの共同企画、金澤寿和監修の〈Light Mellow's Picks〉シリーズから、シャイ・ライツのリードとして名を馳せたユージン・レコードによる79年のソロ作、『Welcome To My Fantasy』(Warner Bros./ワーナー)が世界初CD化ですよ! 山下達郎&吉田美奈子も取り上げた“Help Yourself To Love”を筆頭に、シカゴ流儀の甘さ苦さが胸に広がる逸品であります。同シリーズでは、元オハイオ・プレイヤーズのシュガーフットが残した85年のソロ作『Sugar Kiss』(Warner Bros./ワーナー)にも注目。同郷の後輩ロジャーがザップ軍団を動員して仕上げた一枚で、ロジャー自身のヒット“I Want To Be Your Man”の原型“I Will Be Your Star”など、粘っこいスウィートネスがたまりません。他には前号で紹介したサダーンの2品やシェリックの大傑作『Sherrick』もあるうちにどうぞ。

で、それらにも通じるライト&ファンキーな80sムードを70年代から追求していたバンド、ヒートウェイヴのエピック盤が5タイトル一気に紙ジャケ化です。とりわけ粋なAORムードも漂わせた79年作『Hot Property』(Epic/ソニー)の世界初CD化でしょう。ディスコ名曲“Boogie Nights”や定番スロウの“Always And Forever”など初期のクラシックが有名なバンドですが、次なる80年作『Candles』(Epic/ソニー)も跨いでEW&Fノリのクロスオーヴァー感覚を追求したアレンジの巧みさと、ロッド・テンパートンの手による珠玉の名曲群にはタイムレスな輝きがあります。

で、いきなりフィリー。別ページでもPIR作品を紹介しているジーン・カーンが、モータウンに移籍して放った82年作『Trust Me』(Motown/PTG)も世界初CD化。ノーマン・ハリスやボビー・イーライといった旧MFSBの名匠が関与した佳作でございます。そのジーンとも縁深いノーマン・コナーズ、以前連載で紹介した際には無念の廃盤だったブツが2in1で数タイトル復刻されてやがって……76&77年作『You Are My Starship/Romantic Journey』(Soul Brother)あたりはマストかと思います。

最後は数年前の編集盤も大絶賛を浴びたスペンサー・ウィギンスの新たな編集盤『Feed The Flame: The Fame And XL Recordings』(Kent/Ace/Pヴァイン)をオススメ。サザン・ソウル未経験者の人でも聴けばわかる、濃厚な激唱にショックを受けてください。

 

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、ユージン・レコード『Welcome To My Fantasy』、シュガーフット『Sugar Kiss』(共にWarner Bros./ワーナー)、ヒートウェイヴ『Hot Property』、『Candles』(共にEpic/ソニー)、ジーン・カーン『Trust Me』(Motown/PTG)、ノーマン・コナーズ『You Are My Starship/Romantic Journey』(Soul Brother)、スペンサー・ウィギンス『Feed The Flame: The Fame And XL Recordings』(Kent/Ace/Pヴァイン)