〈Re(ふたたび)〉〈TTLE(録る)〉〈CREATURES(クリーチャーズを)〉という、ゴロ合わせも楽しいカヴァー・アルバム『Re:TTLE CREATURES』は、とにかく参加アーティストが豪華。その顔ぶれを見ているだけで、いかにクリーチャーズが日本のロック・シーンでリスペクトされているかがよくわかる。この原稿を書いている段階で音を聴くことができたのは10曲中7曲で、一曲入魂、それぞれに参加アーティストの個性がくっきりと浮かび上がっていておもしろい。なかでも個人的に興味深かったのが、向井秀徳による“HOUSE OF PIANO”だ。一見意外な組み合わせだが、音を極力絞ったダビーなサウンドを聴いていると、両者がニューウェイヴ的な実験精神で繋がっているのが見えてくる。また、質感的に近いものを感じるのがクラムボン“FOUR IN THE MORNING”で、クリーチャーズ的な洗練を美しいアレンジで解釈したのがコーネリアス“NIGHT PEOPLE”だ。
一方、くるり“MURKY WATERS”は骨太なバンド・サウンドに、コトリンゴをフィーチャーしたtoeはポスト・ロック的なバンド・アンサンブルでクリーチャーズの〈バンド力〉をラウドに表現している。そして、とりわけ自分のサウンドのなかでクリーチャーズを泳がせたのがトクマルシューゴ“FOR SALE”で、逆に3人が彼の楽曲をカヴァーしたらどうなるのか?なんて妄想したくなる。そのほか、UAやSPECIAL OTHERS、HIFANA&鎮座DOPENESSが、どんなアプローチなのかも気になるところだが、複雑な構造を持ちながらメロディアスなクリーチャーズ・サウンドは、〈Re:TTLE〉することで、より多彩な表情を見せてくれる。
▼文中で紹介したアーティストの作品を一部紹介。
左から、向井秀徳擁するKimonosの2010年作『Kimonos』(EMI Music Japan)、クラムボンの2010年作『2010』(TROPICAL/コロムビア)、コーネリアスの97年作『FANTASMA』(トラットリア/ワーナー)、くるりの2010年作『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』(スピードスター)、toeの2009年作『For Long Tomorrow』(Machu Picchu)、トクマルシューゴの2010年作『ポート・エントロピー』(Pヴァイン)