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LITTLE CREATURES

マイペースに活動を続けてきたLITTLE CREATURESの歩みを振り返る

連載
360°
公開
2011/02/09   15:55
更新
2011/02/09   15:58
ソース
bounce 328号 (2010年12月25日発行)
テキスト
文/桑原シロー

 

中学校時代からいっしょに音楽をやっていた青柳拓次と栗原務が鈴木正人と出会い、バンドを結成したのは和光高校在学中であった87年のこと。そしてトーキング・ヘッズの6作目と同じ名を持つ彼ら=LITTLE CREATURESが世間から注目されるのは、バンド・ブーム真っ只中の90年、名グループを多く輩出する音楽オーディション番組「いかすバンド天国」に出演した18歳の時だ。同年にシングル“THINGS TO HIDE”でデビュー。ソウルやジャズ、UKギター・ポップのエッセンスを見事に吸収したサウンドで通を唸らせ、〈なんつう10代なのか〉と言わしめた。そして間を置かずに届けられたLA録音のミニ・アルバム『Little Creatures』(ミディクリエイティブ:1)も、若いのか老けているのか……なおもしろさが際立つ作品に。

91年にはアシッド・ジャズやアイリッシュ音楽などの要素を混合させたファースト・フル・アルバム『VISITA』(同:2)、92年にはラテンやアフリカンといったエスニックなテイストも印象的なロンドン録音の『NO VOTE NO VOICE』(同:3)をリリース(当時、青柳はスコットランドに、鈴木はアメリカに留学中だった)。一筋縄ではいかないリズム・アプローチをはじめ、既成の音楽から逸脱せんとするひたむきな意思がより明確に感じられはじめたのもこの頃。

続いて、ジャズの巨匠たちに捧げた93年の『GIANTS ARE DYING』(同:4)、シンガポールで録音された95年の『WEATHER BOUND』(同:5)という2枚のミニ・アルバムを経て、97年作『little creatures meets future aliens』(同:6)へ――これはブリストルのムーンフラワーズらによるリミックスなども並んだクラブ・ミュージック色の濃い作品で、さまざまな経験をミックスさせた自由度の高いサウンドをクリエイトしてきた彼らの(当時の)最高傑作となる。以後は仲間の音楽家との交流、プロデュース仕事やソロ・プロジェクトなど個々の活動を増やしていくことに。

2000年、3人はプライベート・レーベル=CHORDIARYを立ち上げ、ゴールディ“Inner City Life”のカヴァーを含むミニ・アルバム『CHORDIARY』(CHORDIARY:7)を、続く2001年には遊び心に溢れたサウンド・メイキングが冴える『FUTURE SHOCKING PINK』(同:8)を発表。いっそうソロワークが活発化するなか、2005年には、5作目『NIGHT PEOPLE』(同:9)を完成させる。これはアコースティックな感触を強めた作品となり、〈クリーチャーズ的〉としか形容できない独特の間を楽しませてくれる一枚だった。

そして2010年は細野晴臣のレーベル=daisyworld discsとCHORDIARYが合体し、Labels UNITEDが動き出す。青柳拓次のソロや鈴木正人を擁するsighboatの新作に続いて、5年ぶりとなる新作『LOVE TRIO』が届けられた。どこのシーンにも属さず独自の立ち位置をキープしている3人をありのままに活写したこのアルバムは、時代の空気を吸い込みながら無国籍的かつ刺激的な〈TOKYOサウンド〉を創造し続けてきたこれまでの集大成と言えるのではないだろうか。デビュー20年を迎え、いっそう軽やかにステップを踏んでいる彼ら。これからの20年も楽しみだ。

 

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、『Little Creatures』(1)、『VISITA』(2)、『NO VOTE NO VOICE』(3)、『GIANTS ARE DYING』(4)、『WEATHER BOUND』(5)、『little creatures meets future aliens』(6)、『CHORDIARY』(7)、『FUTURE SHOCKING PINK』(8)、『NIGHT PEOPLE』(9)

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