『Evidence: Complete Fame Records Masters』 Kent/Pヴァイン
フェイム時代の楽曲を未発表音源含めて完全収録したファン待望の編集盤。当然ながら3枚のアルバムは丸ごと収録され、シングル・オンリーだったバラード“For You”やリズム・ナンバー“Never In Public”もここでついにCD化された。12曲ある未発表音源も、アン・ピーブルズのカヴァーを筆頭にキャンディ節が全開。フェイムでの幻の4作目のために用意していたとされる楽曲(73〜74年録音)には初期のブルージーさこそないが、モダンな味わいがいい。*林
『Candi/Music Speaks Louder Than Words』 Spy
ワーナー時代の1&3作目のカップリング盤。74年の1作目はリック・ホールのプロデュースによるマッスルショールズ録音で、ブルージーな“Here I Am Again”など、ややモダンになったが、フェイム時代の残り香が漂う。ボブ・モナコが制作した77年の3作目はストリングスも入ってグッと洗練され、ボビー・ウォマックのバラードなどをしみじみと歌ってみせる。*林
『Young Hearts Run Free/House Of Love』 Spy
こちらはワーナー時代の2&4作目。ともにデヴィッド・クロフォードの制作盤で、76年の2作目はディスコ・アンセムとなった表題曲で知られるが、その続編的な“Run To Me”も含め、キャンディの歌は西海岸の腕利きによるスムーズで爽快なバックとも相性の良さを見せる。同路線ながら若干タイトな78年の4作目では、トーマス・ドーシーのゴスペル名曲を熱唱。*林
『Chance』 Warner Bros./Wounded Bird(1979)
NY録音を敢行して都会的なしなやかさを演出したワーナーでの5作目。ディスコ時代ならではのダンス曲が並ぶなかでも注目すべきはパトリック・アダムスをアレンジャーに迎えた2曲で、なかでもタイトなリズムが粋に躍動する“When You Wake Up Tomorrow”は特に素晴らしい。アシュフォード&シンプソンのペンによる唯一のバラード“I Live”も実にエモーショナル。*出嶌
『Candi Staton』 Warner Bros./Wounded Bird(1980)
前作に続きジミー・シンプソンとの共同制作となるワーナーでの最終作。録音はNYで、バック・ヴォーカルにジョセリン・ブラウンやフォンジ・ソーントンも参加し、スタイリッシュなNYソウルを聴かせる。“Halfway To Heaven”はモダン・ソウル文脈で人気の高いメロウなミッド。“It's Real”のようなチャーチ・マナーの曲もキャンディならではだ。*林
『Outside In』 React(1999)
“You Got The Love”の再ヒットを契機に、ハウス・クリエイターのK・クラスの導きで登場した17年ぶりの世俗作。フランキー・ナックルズらのカヴァーも含みつつ、往年のディスコ調から当世流のハード・ハウスまで多彩なトラックに乗って快唱するキャンディが痛快極まりない。ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ“Wake Up Everybody”などのスロウも適度に配された好盤だ。*出嶌
『His Hands』 Honest Jon's(2006)
オネスト・ジョンズから出た編集盤『Candi Staton』の評判を受け、約30年ぶりにサザン・ソウル路線にどっぷり回帰した話題作。往年のリック・ホールと同じくカントリーの素養と南部ソウルへの造詣の深さを併せ持った、マーク・ネヴァーズ(ラムチョップ)のプロデュース起用はまさに適役。かつてフェイムで活躍したオルガン奏者、バリー・ベケットの参加もトピックだろう。*出嶌
『Who's Hurting Now?』 Honest Jon's(2009)
現時点での最新世俗アルバム。『His Hands』からマーク・ネヴァーズが続投し、カントリー畑を軸とする演奏陣もある程度は引き継がれた続編的な内容だ。米国ルーツ音楽の豊穣さを感じさせるという意味では、同時期に話題を撒いたメイヴィス・ステイプルズ&ライ・クーダーのコンビにも劣らないはず。枯れる手前で絶妙な懐の深さを見せる歌声がやはり味わい深い。*出嶌