JIMMY HUGHES 『Steal Away: The Early Fame Recordings』 Kent
アーサー・アレクサンダーの成功に刺激を受けてフェイムの門を叩いたジミー・ヒューズ。そこで録音した不倫バラード“Steal Away”(64年)がヴィー・ジェイの配給によってヒットしたことで、フェイムの名は広く知れ渡った。初期マッスル・ショールズの瑞々しい演奏をバックに、ダン・ペン作のオリジナルやカヴァーを朗々と歌い上げるジミー。フェイム創世記のドラマがここに詰まっている。
ETTA JAMES 『Tell Mama: The Complete Muscle Shoals Sessions』 MCA
チェス時代の中間点にあたる67〜68年に、エッタはマッスル・ショールズでセッションを決行。フェイムのバンドが繰り出すドライヴ感溢れる演奏をバックにパワフルな声で歌い上げるきっぷのよさが痛快で、アレサ“Do Right Woman-Do Right Man”のカヴァーにおけるブルージーさもいい。映画「キャデラック・レコード」でエッタ役のビヨンセが歌った“I'd Rather Go Blind”もここで聴ける。
ARETHA FRANKLIN 『I Never Loved A Man The Way I Love You』 Atlantic(1967)
アトランティックに入社したアレサがソウル・シンガーとしてスタートを切る際にあてがわれたのがフェイムのバンドだった。特に表題曲と“Do Right Woman-Do Right Man”は録音もフェイムで、かの地らしいブルージーなムードがよく出ている。スプーナー・オールダムやロジャー・ホーキンズらはNYのセッションにも起用され、以降の作品でも活躍。キャンディが憧れた世界がここにある。
WILSON PICKETT 『Wicked Pickett』 Atlantic(1967)
あ前作でも多くの楽曲をマッスル・ショールズで吹き込んでいたピケットだが、今作ではすべてを同地で録音。ロジャー・ホーキンズらフェイムの2代目専属バンドがバックを支え、名曲カヴァーを中心に荒い激唱を聴かせるアルバムだ。リック・ホールやダン・ペンが書いた“You Left The Water Running”は同時期にオーティス・レディングも吹き込んでおり、当時のフェイム人気を思い知らされる。
LAURA LEE 『The Very Best Of Laura Lee』 Universal
チェス在籍時(60年代後半)にマッスル・ショールズに送り込まれたローラ・リー。同地でのセッションからは、彼女の最高傑作と言われるバラード“Hang It Up”をはじめ、クラレンス・カーターらが書いたアップ・ナンバーなど数々の名曲が誕生した。このベストにはシカゴ録音の曲も含まれているが、ゴスペルを原点とする彼女のディープな歌声は、フェイムのブルージーな音にこそ合うのだと実感させられる。
CLARENCE CARTER 『This Is Clarence Carter』 Atlantic(1968)
キャンディ・ステイトンの後見人にして夫でもあった盲目のソウル・シンガーによる初アルバム。リック・ホール制作によるフェイム録音で、アトランティック入社前にフェイムから発表していたシングルも収めた本盤は、ジミー・ヒューズ曲のカヴァーも含め、躍動感溢れるリズム・ナンバーが中心だ。代表曲となる“Slip Away”も哀感を込めながら軽快。シャープだが温かな歌い口も味わい深い。
SPENCER WIGGINS 『Feed The Flame: The Fame And XL Recordings』 Kent
サザン・ソウル最高峰とされるシンガーの編集盤。マッスル・ショールズとメンフィスでの録音曲に未発表音源を加えたものだが、やはり圧倒的なのはフェイムでのシングル曲だ。エッタ・ジェイムズも歌っていたバラード“I'd Rather Go Blind”、軽快なジャンプ・ナンバー“Double Lovin'”など、躍動するフェイムのバックに乗って伸びやかに熱唱するスペンサー。これ以上ない組み合わせだ。
WILLIE HIGHTOWER 『Golden Classics』 Collectables
キャンディ・ステイトン同様、オネスト・ジョンズからフェイム録音曲を収めた編集盤(現在は廃盤)も出されていたアラバマ出身のディープ・ソウルマン。こちらの編集盤に収められている楽曲はNYのボビー・ロビンソンが制作したものだが、サム・クックを塩辛くしたような声で歌われるここでのディープな曲を聴けば、その後フェイムに送り込まれたのも納得だ。フェイム音源の再CD化を願いつつ……。