『un-balanced』 DefSTAR(1995)
記念すべき初作。ハートフル好青年なキャラを押し出すべく楽曲の主題も限られて、まさにアンバランス……てのは後から思うこと。いずれにせよ、自身の声質を弁えたスムースなメロディーの足取りは、現在にまで至る平井らしさそのものだ。アレンジャーには初期久保田利伸の腹心・羽田一郎の名も。
『Stare At』 DefSTAR(1996)
同時期のベイビーフェイスを思わせる簡素な音作りが好ましい2作目。古内東子がコーラス(・アレンジ)を担当した遠恋スロウ“会いたいよ”や、歌への思いを綴った“ステージ”、父への私信“キャッチボール”など、過去から心情を手繰り寄せた曲が目立つのは当時の苦闘ゆえか。ヒゲが生えるまでもう少し!
『THE CHANGING SAME』 DefSTAR(2000)
ダニー・ハサウェイへの敬愛も忍ばせた名曲“Love Love Love”以降の雌伏を乗り越えてのブレイク作。ネオ・ソウル調の意匠と抑制の効いた歌唱で誠実なアーバン感覚と官能を醸し出す姿は、狙い通りにエリック・ベネイさながら。松原憲や村山晋一郎らの名裏方にとっても飛躍作となった。
『gaining through losing』 DefSTAR(2001)
KCの采配の下、中野雅仁とMaestro-Tを中心に全体像を組み上げた構成は前作と同じだが、ここではアルバムらしい統一感と引き換えに、遠慮なくやりたいスタイルの幅を追求した印象だ。軽快な2ステップの“KISS OF LIFE”や泥臭いファンク“She is!”の躍動には迷いを抜けた喜びが宿っている。
『LIFE is...』 DefSTAR(2003)
T.KURAやAKIRAらとの意欲的な初顔合わせからも意気込みが窺える初のセルフ・プロデュース作。現象化した“大きな古時計”と、冨田恵一の壮麗なオーケストレーションも素晴らしい人間讃歌“Ring”が連続No.1ヒットに輝き、いよいよ〈国民的歌手〉のポジションに。ベイビーフェイスの提供曲も相性抜群だ。