NEWS & COLUMN ニュース/記事

第56回――タイム・ファミリー

ESSENTIAL――タイム〜ファミリーのファミリー盤たち(1)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2011/11/16   00:00
ソース
bounce 338号 (2011年11月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/林 剛、出嶌孝次


THE TIME 『The Time』 Warner Bros.(1981)

前身バンドを経て、モーリス・デイを新たなリードに据えたタイム(正式メンバーは6人)としての出発点となるデビュー作。まだジャム&ルイスも一介のメンバーに過ぎなかった頃の作品で、実質的に親分のプリンスが手掛けていたことが明白にわかるポップ・ファンクと哀愁バラードがほぼ交互に登場する。スヌープ・ドッグにリメイクされた“Cool”のようなクールでタイトな音でミネアポリス・ファンクの何たるかを示した快作。*林

 

THE TIME 『What Time Is It?』 Warner Bros.(1982)

ジャケットが伝えるように、フロントマンのモーリスがそのチンピラ紳士キャラを強めた2作目。バンド関係者の電話番号をタイトルに冠してイタズラ電話が殺到したという逸話も有名な“777-9311”、ウォーキング・テンポの“The Walk”といったキレ味鋭いダンサブルなファンクでタイムらしさを確立した名作だ。唯一のスロウ・バラード“Gigolos Get Lonely Too”は、後にジャック・ナイトもカヴァーしたジゴロの哀歌。*林

 

THE S.O.S. BAND 『Icon: The S.O.S. Band』 Tabu

タイムの活動が軌道に乗りはじめ、ジャム&ルイスが(プリンスに内緒で)外部でプロデュース活動をするようになった頃に手掛けた一組が、このSOSバンドだった。ふたりが関わりはじめたのは4作目からだが、本ベスト盤の曲目を見ればわかるように代表曲の大半はジャム&ルイス製で、タイムの曲よりBPM抑えめなミッド〜スロウが中心。このSOS仕事が遠因となり、ジャム&ルイスはプリンスに解雇される。*林

 

THE TIME 『Ice Cream Castle』 Warner Bros.(1984)

ジャム&ルイスらの代わりに新メンバーを加え、鏡持ちのジェローム・ベントンが正式加入しての3作目。映画「パープル・レイン」に連動したアルバムでもあり、劇中でプリンスの対抗バンドを演じた彼らは“Jungle Love”“The Bird”を披露した。ロックっぽく振る舞う親分のプリンスに対し、タイムはダンス・フロア映えする電化ファンクをやるという図式がここで確立。結局殿下は、本気でタイムに嫉妬してしまったようだが。*林

 

CHERRELLE 『Icon: Cherrelle』 Tabu

タイムのようなミネアポリス・ファンクを女性が歌ったらどうなるか。その答えがここにある。デュエットをしたアレキサンダー・オニールと共にフライトタイム一派となったシェレールは、当時タイムを抜けていたジャム&ルイス及びモンテ・モアによってタイム流儀をあてがわれ、後にマライア・キャリーが歌った“I Didn't Mean To Turn You On”のようなダンス曲を披露。結果的にジャネットのプロトタイプとなった女性でもある。*林

 

TheFamily_J              

THE FAMILY 『The Family』 Paisley Park/Warner Bros.(1985)

タイムの4作目用のマテリアルも含みつつ、残党を中心にスザンナ・メルヴォワン(プリンスの当時の彼女)を加えた急造ユニットによる唯一の作品。前身を継承した“Mutiny”のようなファンク・チューンもありつつ、『Parade』前夜のプリンスらしいヨーロピアンな趣はタイムには出せない独特なもの。シニード・オコナーらのカヴァーで知られるプリンス屈指の名曲“Nothing Compares 2 U”のオリジナルも収録。*出嶌

 

MORRIS DAY 『The Color Of Success』 Warner Bros.(1985)

オープニングを飾る表題曲でタイム(=プリンス)からの独立を宣言したソロ・デビュー作。グレッグ・フィリンゲインズらの敏腕をサポートに迎えつつ、これまで制限されていた反動か、セルフ・プロデュースとソングライト、楽器演奏に取り組み、まるでプリンスの影を振り払わんとするかのよう。それでも彼一流のクールネスからしっかり出自が滲むのは皮肉。次作『Daydreaming』(87年)ではジャム&ルイスと再会。*出嶌

RELATED POSTS関連記事