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第56回――タイム・ファミリー

ESSENTIAL――タイム〜ファミリーのファミリー盤たち(2)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2011/11/16   00:00
ソース
bounce 338号 (2011年11月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/林 剛、出嶌孝次


ANDRE CYMONE 『A.C.』 Columbia/BBR(1985)

プリンスと兄弟同然で育ち、殿下バンドでベーシストを務めるも81年に袂を分かち……という初期のキャリアが、後のタイム(の一部メンバー)ともダブるアンドレ・シモーン。が、そんな彼も3作目ではプリンスと顔合わせ。それが殿下の作/プロデュースとなる“The Dance Electric”。ニューウェイヴ的なエレファンクは同時期のタイムに通じる作風で、殿下よりこのアンドレこそがタイムの対抗馬だったのかも。*林

 

JANET JACKSON 『Control』 A&M(1986)

前作ではジェシー・ジョンソンにもプロデュースを依頼していた彼女だが、ここでジャム&ルイスとガッチリ組んだことが世界を変えた。まさにタイム節ともいえる“What Have You Done For Me Lately”や“Nasty”などクールで肉体的なミネアポリス・ファンクがひしめき、ジェリービーンが関与した“You Can Be Mine”、モンテ・モアによるスロウの佳曲“The Pleasure Principle”など、軍団総出で勝ち取った快作だ。*出嶌

 

JESSE JOHNSON 『The Ultimate Collection』 A&M

タイムのギタリスト。初期プリンスにも似たワイルドな風貌通り、ハード・ロックばりの破壊的なギターを弾く彼は、ジミ・ヘンドリックス〜エディ・ヘイゼルの系譜に連なるプレイヤーだが、80年代中〜後期にソロ名義で発表した曲は当然タイム〜プリンス路線のミネアポリス・ファンクだ。“Crazay”ではスライ・ストーンをフィーチャー。オリジナル・セヴンにスライ風の曲があるのは彼の趣味だったりするのかも!? *林

 

ALEXANDER O'NEAL 『Icon: Alexander O'Neal』 Tabu

フライト・タイムを離れてからソロで苦闘し、流れ着いたのは旧友ジャム&ルイスの取り仕切るタブーだった。初作からの上質なミッド“A Broken Heart Can Mend”やモンテ・モア一世一代の名スロウ“If You Were Here Tonight”にはタイムっぽいクールネスも滲むが、2作目『Hearsay』からは容赦なくパワフルな肉厚の歌唱とゴージャスでエレガントな意匠が激しく交わる。タイムの進化形態と言えなくもない名曲集。*出嶌

 

PRINCE 『Graffiti Bridge』 Paisley Park/Warner Bros.(1990)

全曲がプリンスの制作ながら、他アーティストの曲も含むサントラで、タイムは4曲に登場。モーリスの剽軽なキャラを押し出した“The Latest Fashion”に、バタついた演奏が格好良い“Release It”など、恐らくは演奏もプリンスがほとんどやっていそうな感じではあるものの、そのほうが万人のイメージするタイムらしさになるのだから難しい。なお、プリンスの“New Power Generation”でドラムを叩くのはモーリス。*出嶌

 

MORRIS DAY 『It's About Time』 Hollywood(2004)

今回の再結成の7年前に発表されていたモーリスの最新ソロ作(前作から12年ぶり)。収録曲の半数がタイム時代の名曲を歌ったライヴ音源だったが、それはバンドの復活を示唆していたとも言えるわけで、いまとなっては興味深い。後半に用意された4曲の新曲(E-40とも共演)もヒップホップ目線でのミネアポリス・ファンク解釈という感じで、現行シーンに歩み寄りつつ、復活のタイミングを見計らっているようだった。*林

 

THE TRUTH 『Live』 MidAmerica(2008)

プリンス周辺の新旧ミネアポリス・ファンカーたちから成るユニットのライヴ盤。メンバーにはポール・ピーターソンやジェリービーン・ジョンソンのタイム組、そのジェリービーンがデビューを支えたミント・コンディションのオデールも名を連ね、70〜80年代ファンクの名曲をプレイしていく。演目にはタイムの“Jungle Love”も。80年代のエレクトリックなグルーヴの再現は、原曲でキーボードを弾いていたポールの存在が大きそう。*林