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トーキョー発、舞台芸術の祭典『フェスティバル/トーキョー』

トーキョー発、舞台芸術の祭典『フェスティバル/トーキョー』(2)

公開
2012/11/01   13:33
ソース
intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)
テキスト
text:須川才蔵


『1月8日、君はどこにいたのか?』©Mohammadreza Soltani

海外での政治・社会の動向を伝えようとするのは、フランスのジャン・ミシェル・ブリュイエール、イランのアミール・レザ・コヘスタニ、そしてハンガリーのアールパード・シリングの3人。ブリュイエールは展示形式の作品『たった一人の中庭』で、メディアではめったに報じられることのないフランスの移民問題をとりあげる。重要な労働力から「異物」へと追いやられる移民たちの現実と、そうすることで安定をはかる社会の矛盾が交錯する。F/T09春で『ユートピア?』を上演したコヘスタニは、今回『1月8日、君はどこにいたのか?』で登場。消えた銃をめぐって携帯電話でかわされる会話を通じて、2009年6月のイラン大統領選挙とその後の事態をメタフォリカルに表現する。ハンガリーの演劇ユニット、クレタクールの『女司祭ー危機三部作・第三部』は、トランシルヴァニア地方に住むハンガリー系、ルーマニア系の子供たちとの数週間にわたるワークショップを通じて創作された作品だ。演劇教師への転身をはかる元女優を描くことでシリングがフォーカスするのは、コミュニティのはらむ危機にほかならない。

韓国のユン・ハンソル、日本の三浦大輔(ポツドール)、神里雄大(岡崎藝術座)といったアジアの新世代の演出家からも目が離せない。ユンが代表を務めるグリーンピグの『ステップメモリーズー抑圧されたものの帰還』は、朝鮮戦争の記憶を証言するテキストと既存の建造物を利用した空間構成によって、「語りえない記憶をどのように語るか」という問題を提示する。ポツドールは話題作『夢の城』の6年ぶりの東京凱旋公演(しかも海外ヴァージョン!)を果たし、岡崎藝術座は新作『隣人ジミーの不在』で、「隣り」と互いに照らし出しあう日本の自画像を描き出す。

彼らに猛追するのが、「F/T 公募プログラム」に顔を揃えた、中国、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、そして日本から選ばれた11作品だ。昨年から応募範囲をアジア全域へと拡大したことで、今年の公募には約180作もの応募があったという。これらの作品群の中から「F/T アワード」に選出されたアーティストには、来年のF/T 主催プログラムを創作・発表する権利が与えられる。アジア演劇の未知の可能性がここから現れてくるのは間違いのないところだろう。

ほかにも関連プログラムとして、多種多彩な企画が予定されている。「F/T モブ」は、フラッシュモブ(SNSなどで示し合わせた不特定多数の人間が、広場や駅などで突如「同じ行為」を始め、唐突に解散する様子がしばしばYouTubeに上がっているのはご存知だろう)によって池袋の瞬間的占拠をもくろむもので、ディレクション担当にはジェローム・ベルや井手茂太といった豪華な顔ぶれが並んでいる。

「F/T ステーション」は、9月にリニューアルした東京芸術劇場全体を、誰もが自由に立ち寄り、語り合うことを目的とする場所に変容させるプロジェクトだし、さまざまな論者が演劇について語る「F/T ダイアローグ」「F/T シンポジウム」、関連映像作品を上映する「F/T テアトロテーク」、来日アーティストによる特別講義「F/T ユニバーシティ」(講師はアミール・レザ・コヘスタニとユン・ハンソル!)など、イベントとアーティスト/出演者を列挙していくだけでも与えられた文字数を大きく超過しそうなくらい、盛りだくさんかつ刺激的な内容が揃っている。どうかF/Tウェブサイトで詳細をご確認いただきたい。

演劇とは何か? その問いはことばに向けられ、社会に向けられ、あなたに向けられる。その問いはいつも新しい。なぜなら、その問いによって演劇を刷新し続けることは〈人間〉を刷新し続けることにほかならないからだ。

『フェスティバル/トーキョー  FESTIVAL/TOKYO』
ことばの彼方へ──言葉から掴み直す、私たちの「いま、ここ」。

10/27(土)~11/25(日)
http://festival-tokyo.jp/

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