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倉内太の愛してる爆笑盤(第1回)

連載
皿えもん
公開
2012/12/20   16:30
更新
2012/12/20   16:30
テキスト
文/倉内太


アーティストが各テーマに沿ったお皿(CD)を紹介する新連載! 倉内太が、愛しているからこそ言いたくなる〈こいつバカだー〉盤、聴くと爆笑してしまう盤を紹介します! なんとなく鬱々した時、飽き飽きした時、笑えなくなった時にどうぞ!



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THE DICTATORS 『Manifest Destiny』 Asylum/Wounded Bird



はじめまして、倉内太です。
いつもアコースティック・ギターを持って歌っています。
こちらで連載させていただくことになりました、宜しくお願いします。

僕がこの連載でご紹介するのは〈爆笑盤〉です。
〈爆笑盤〉とは、爆笑させてくれる音楽のことです。
僕は音楽を聴いて泣きながら爆笑できる瞬間が好きです。
感動していいのか笑うべきなのかよくわからない、不思議に気合いの入ったロックンロールに何度も救われてきました。
僕はロックンロールを愛していますが、誰かと音楽の話をする時は、本当に好きなアーティストの話はしません。
なんとなく内緒にしておきたいし、〈センスないのねっ〉と思われたくないからです。
実際センスないだろうし、自分のことを明かすのは怖いです。
でもこの連載では本当に好きなアルバムを紹介することを誓います。

今回はディクテイターズの『Manifest Destiny』をご紹介します。
77年の作品で、大好きなアルバムです。
この『Manifest Destiny』というタイトル、これはカッコイイんでしょうか?
たぶんカッコつけすぎてカッコ悪い感じになってますよね。
ディクテイターズは服装も楽器もハード・ロックとかメタルっぽくてダサいのですが、聴いていて震えてしまう瞬間があります。
そのダサさが説得力になり、鳥肌が立ちます。
音を聴いていると『Manifest Destiny』というタイトルさえカッコ良く思えてくるのです。
というか『Manifest Destiny』以外あり得ないのです。

カッコいいレスポールの歪んだ音が聴こえてきます。
タムをたくさん装備しているであろうドラムの音が聴こえてきます。
恥ずかしいくらいベタなコーラスが聴こえてきます。
ハンサム・ディック・マニトバの強烈なヴォーカルと、リッチーの甘くて上手なヴォーカルが聴こえてきます。
とっても汗臭くて、なんか胸毛が口の中に入ってくる感じがします。
ステレオの向こう側にアフロ頭で汗だくの兄ちゃん、ヘンに男前の兄ちゃんが優しく微笑んでいる気がします。
その兄ちゃんはこう話しかけてきます。
〈ヘイ、ボーイ 夜遊びしようぜ。なんか寂しいんだよ〉
そんな感じです。

パンクと呼ばれることが多いディクテイターズですが、アルバムを聴き進めるといろんな音楽性が感じられます。
アニマルズ、ドアーズ、AC/DC、X JAPAN、ポーグスなどいろいろ感じます。

1曲目“Exposed”の歌詞を載せたら、きっと皆さん放っとけないと思います。
この曲の第一声がこちらです。

親しかった女に裏切られた
言い逃れはできそうもない
妻に知れたら おれの人生はおしまいだ
ばれてしまった……
名前を変えて隠れて暮らそう

詳しいことはわかりませんが、絶体絶命の状況からこのアルバムはスタートします♪
そしてその後、怒り狂ったり、踊り狂ったり、急に感傷に浸ってバラードを歌ったり、もろパンクしてみたり、ロマンティックにギター・ソロをキメてみたり。
アルバムの最後には、なんかもうどうでも良くなったのか、イギー&ザ・ストゥージズの“Search & Destroy”をカヴァーしてしまいます。

この“Search & Destroy”がいちばんの爆笑ポイントです。
妙な超大歓声のなかでの“Search & Destroy”、こんなに元気良くやっていいのかしらというくらい気持ち良く演奏しています。

爆笑してしまいますが、だんだん笑えなくなってくる。
なぜなら本気の圧があるから。
ステレオから切れたエレキ・ギターの弦や、スティックの破片や、音の熱風が飛んできます。
〈やらかしてやる〉――そんな感じです。

なんか覇気のない奴(僕も普段そうです)にはこれを聴かせれば、一発だと思います。
どうしようもなく、なんか、やらかしたい――そんな気持ちが伝染するのか覚醒するのか、これが僕の知っているディクテイターズです。

僕も絶対こんなアルバム作ります。
ガキのトラウマになるような爆笑盤を。
ガムバります!
最後まで読んでくれた方ありがとうございます。
倉内太でした、また書きます♪



PROFILE/倉内太



83年、埼玉生まれのシンガー・ソングライター。2005年よりバンド活動を開始。2008年に倉庫内作業員のアルバイトに採用されたことがきっかけとなって意欲的に曲作りを始め、弾き語りライヴも行うようになる。2009年に自主制作でファースト・アルバム『倉内太と彼のクラスメイト』をリリース。2012年5月に倉内太&ネイティブギターを結成し、バンドでのライヴ活動もスタート。2012年9月に店舗限定でシングル『LIKE A RHYTHM GUITAR』を発表、11月に初の全国流通盤となるアルバム『くりかえして そうなる』(DECKREC)をリリースした。今後は12月23日(日)の〈THEラブ人間決起集会「下北沢にて'12」〉などのイヴェント出演や弾き語りライヴが予定されている。詳しくはこちらのサイトでチェック!