もともとは名が体を表すレーベルになるはずだったサルソウルが、サルサ+ソウル以上の意味合いで語られるようになったのは、ヴィンセント・モンタナJr(ヴィブラフォン/指揮)を中心に凄腕プレイヤーの集まったこのオーケストラが、鮮烈なまでに美しくエレガントで熱いディスコ・グルーヴを創出したからだろう。
この楽団の母体となったのは、フィラデルフィアでギャンブル&ハフの運営するPIRの演奏集団=MFSBに出入りし、隆盛を極めた70年代フィリー・ソウルの名曲群で演奏やアレンジを担当していたスタジオ・ミュージシャンたちだ。待遇面での問題からサルソウルの誘いに応じた彼らがサルソウル・オーケストラを名乗ったわけで、つまりはMFSBでフィリー・サウンドを作った面々がそのまま抱え込まれた格好になる。
そして生まれたのが、PIRの時以上にグルーヴを重視したタイトなリズムと、ドラマティックで美しいストリングス・アレンジを備えた、いわゆるサルソウル・サウンドだった。よく知られている“Runaway”を筆頭にメイン・アーティストとしてもヒットを残した彼らではあったが、77年頃からモンタナを筆頭に演奏者がそれぞれ離脱。79年の『Street Sense』はトム・モウルトンがアレンジを任されるなど、時代によってサウンドも少しずつ変質していくのだった。
▼サルソウル・オーケストラの作品。
左から、75年作『The Salsoul Orchestra』、76年作『Nice 'N' Naasty』、77年作『Magic Journey』、79年作『Street Sense』(すべてSalsoul/OCTAVE)、76年作『Christmas Jollies』、81年作『Christmas Jollies II』(共にSalsoul/OCTAVE)