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今後注目のマルコ・ベルトラミ、まずは『人生の特等席』から

人生の特等席現代ハリウッドの映画音楽界を担うエースのひとりであるマルコ・ベルトラミ。鬼才ギレルモ・デル・トロのハリウッド招聘作『ミミック』での格調高いホラー・オーケストラ・スコアで一躍株を上げ、その後、『スクリーム』シリーズ、『アイ、ロボット』『ヘルボーイ』ほか、ホラー、SF、ファンタスティック・ムーヴィー・シーンではすっかり、信頼の名匠となっていることは、多くのファンもご存知と思う。

2007年のウエスタン『3時10分、決断のとき』を担当した頃からだろうか、新たなベルトラミ・ワールドへの興味も沸いてきた。そう、人間ドラマの面を大きく見せる映画での、サウンドである。翌年には、あの『ハート・ロッカー』を担当する。極力音数を絞ったストイックな音響デザイン的アプローチは、新たな世界を聞かせた。

そして、2011年の『ソウル・サーファー』である。衝撃の境遇にあいながらも、さわやかに 信念を貫いて生きる少女と家族のドラマを暖かく、時にコミカルに見守るサウンドは、ここで確実に「ハートウォームなベルトラミ・サウンド」をファンに意識させる。

ベルトラミには、日本未公開のノルウェー映画で”I AM DINA”という異色の人間ドラマの経験が2002年にある。静かながらドラマティックなスコアで、哀しい女性のドラマを彩った。数少ない、ファンタ系以外の、ベルトラミの傑作、それが10年前である。

さて、2012年に、クリント・イーストウッドは、老いた野球のスカウトを演じ、娘との心の隙間を埋めていくというロード・ムーヴィー『人生の特等席』を、監督は今まで自身の助監督や製作として支えてきていたロバート・ロレンツにバトンタッチし、役者に専念することで、新たな人間ドラマを見せる。さて、ここ近年のイーストウッドは、レニー・ニーハウスの助力のモトに、メイン・メロディは自身が創作し、というパターンを取ってきていたが、監督からも退いた今回は、音楽も他者に任せた。

それが、マルコ・ベルトラミだったのである。ベルトラミは、それまでのイーストウッド映画での、シンプルなメロディとそれを引き立たせるシンプルに感動させるオーケストラ、そのアプローチを髣髴とさせながらも、芳醇であたたかく明解でかつ品のよいスコアを聴かせる。抑制と表情の豊かさのバランスのとり方がにくい、さすがイーストウッド映画に似合う名サントラとなった。

2013年にかけて、マルコ・ベルトラミがすごい、というのはサントラ・ファンの間でも話題だ。すでにアメリカでは公開中の辛らつなコメディ”THE SESSIONS”、日本は正月公開の『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』、クライムサスペンス”DEADFALL”、『ダイ・ハード/ラスト・デイ』クロエちゃん主演の伝説ホラー・リメイク『キャリー』ブラピ主演マーク・フォースター監督のゾンビ・アクション『ワールド・ウォーZ』、トム・ハーディがマックスとなるジョージ・ミラー監督『マッドマックス・フューリー・ロード』日本を舞台にした続編の『ウルヴェリン』、ポン・ジュノ監督のハリウッド招聘作”SNOWPIERCER”、これらの話題作群が、すべてベルトラミ担当、と予定されているのである。2013年がベルトラミの年になるのは、これを見る限り、まちがいない。そんな中でも、人間ドラマという新たに守備範囲を広げているのである。

カテゴリ : ニューリリース

掲載: 2012年11月16日 16:41