『オスカー・フリートの芸術』(12枚組)~マーラー“復活”、ブルックナー“第7”の世界初録音を行った名指揮者の初集成!
マーラー作品の紹介者、レコード録音のパイオニア、
知られざる名指揮者 オスカー・フリートの録音が初集成!
マーラーと親交を結び、交響曲全曲を作曲者自身から学び、交響曲第2番“復活“のロシア初演(1906年)、交響曲第6番(1906年)と第8番「千人の交響曲」(1910年)のベルリン初演を指揮。1923~24年のアコースティック録音時代に交響曲第2番“復活“とブルックナーの交響曲第7番の世界初録音を行ったレコード録音のパイオニアでもあったドイツの指揮者、作曲家のオスカー・フリート(1871~1941)の録音が、歴史的録音の復刻で定評のある英スクリベンダムにより初めてBOX化されました。
ドイツの指揮者、作曲家のオスカー・フリートはユダヤ人店主の息子としてベルリンに生まれました。音楽的才能に恵まれながら家庭の経済的困窮のため10代は放浪楽師として楽器演奏をしながらサーカスの道化師、厩務員として働きました。その後、フランクフルトでイヴァン・クノール(1891-92年、ホッホ音楽院)とエンゲルベルト・フンパーディンクに作曲を師事(1891-94年、個人レッスン)。1894年にデュッセルドルフに移り、絵画と美術史を学びました。パリに滞在した後、1898年にベルリンに戻り、クサヴァー・シャルヴェンカに対位法を師事しました。
1903年に合唱と管弦楽のための《酔歌》(Das trunkene Lied)を作曲し、フリートに最初の成功をもたらし、1904年にはベルリンの合唱協会の指揮者に任命されました。1905年、ウィーンでグスタフ・マーラーと出会い、マーラーの提案により同年11月8日、ベルリンでマーラーの交響曲「復活」を指揮。マーラーはゲネプロに立ち会い、舞台袖の楽隊を担当していたオットー・クレンペラーによれば、リハーサルから本番までの間、フリートに作品のテンポやスタイルを指導したとのことです。1906年にはサンクトペテルブルクで同作品を演奏し、ロシアにマーラーの音楽を紹介しました。1913年にはベルリン・フィルを指揮し、マーラーの交響曲第9番を演奏しました。第一次大戦後もフリートのマーラー音楽擁護は続き、1920年にはウィーンで交響曲全曲を指揮しました。1922年にはロシア革命後に招かれた最初の外国人指揮者としてソ連に赴き、駅のホームでレーニンに迎えられました。
1924年(または1923年)シュターツカペレ・ベルリンとマーラーの交響曲第2番(CD6-7に収録)をドイツ・グラモフォンへ世界初録音しました。当時はマイクロフォン録音の実用化(1925年)直前にあたり、極めて冒険的な試みでした。アコースティック・レコーディング(ラッパ収録)の限界にもかかわらず、この録音は非常に成功しており、入念な計画と実験によって達成できたと思われます。1924年11月にはブルックナーの交響曲第7番(CD5に収録)を世界で初めて全曲録音しました。
リヒャルト・シュトラウス、ハンス・プフィッツナー、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーといった当時のドイツを代表する音楽家たちと並んで、フリートがポリドール・レーベル(ドイツ・グラモフォンの海外向けレーベル)に登場したことで、彼の世界的名声は確固たるものとなりました。彼はマイクロフォン録音(電気録音)が始まった後もドイツ・グラモフォンとの関係を続け、1927年にはシュターツカペレ・ベルリンとベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」(CD4に収録)を録音しました。この時期のドイツ・グラモフォンでの他の録音には、リストの「レ・プレリュード」(CD7に収録)と「マゼッパ」(CD10に収録)、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」組曲(CD5に収録)の力強い演奏があり、これらはベルリン・フィルとの共演。また、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」(CD8に収録)をロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とコロンビアに録音しています。
1927年11月には、BBCのプログラム・プランナーであり、自身の教え子でもあるエドワード・クラークの招きで、ロンドンでウェーバー、ブラームス、リストのプログラムを指揮してイギリスでの指揮者デビューを飾りました。
【写真】1928年3月8日、ニューヨークでのモーリス・ラヴェルの誕生日パーティー。左からオスカー・フリート(1871-1941)、エヴァ・ゴーティエ、モーリス・ラヴェル(1875-1937)(ピアノ)、マノア・リーデ=テデスコ、ジョージ・ガーシュイン。
1934年、ナチス政権の反ユダヤ主義によってドイツを追われ、ソビエト連邦のグルジアの都市トビリシに移住。1934年にモスクワに定住し、ボリショイ劇場管弦楽団やソ連国立交響楽団、レニングラード・フィルなど指揮しました。フリートがソ連国立交響楽団を指揮してベルリオーズの幻想交響曲(CD9に収録)を演奏した1937年の放送録音は、ロマン派管弦楽曲の解釈者としての彼の継続的かつ非凡な力を証明しています。その後彼はソ連国籍を取得し、1941年7月5日にモスクワで死去しました。
(タワーレコード)
【曲目】
CD1
●R.シュトラウス:「アルプス交響曲」 Op.64
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1925年、ベルリン(この曲の世界初録音)
●グリーグ:「ペール・ギュント」組曲第1番、第2番
ベルリン・シャルロッテンブルク歌劇場管弦楽団(ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団)
録音:1928年、ベルリン、音楽アカデミー
CD2
●リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード」Op.35
ヘンリー・ホルスト(ヴァイオリン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1928年、ベルリン、音楽アカデミー
●チャイコフスキー:「くるみ割り人形」組曲 Op.71a
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1929年2月5、6日
●ドリーブ:「シルヴィア」組曲
ブリティッシュ交響楽団
録音:1930年、ロンドン、ウェストミンスター、セントラル・ホール
CD3
●ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調 Op.36
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1925年10、11月、ベルリン(アコースティック録音)
●ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調 Op.55「英雄」
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1924年7月、ベルリン(アコースティック録音、この曲の世界初録音)
CD4
●ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 Op.125「合唱」
ロッテ・レオナルト(ソプラノ)
イェニー・ゾンネンベルク(コントラルト)
オイゲン・トランスキー(テノール)
ヴィルヘルム・グットマン(バス)
ブルーノ・キッテル合唱団
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年、ベルリン
CD5
●ストラヴィンスキー:「火の鳥」組曲(1919年版)
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1925年、ベルリン(アコースティック録音)
●ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1924年11月(アコースティック録音、この曲の世界初録音)
CD6、CD7
●マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
ゲルトルート・ビンダーナーゲル(ソプラノ)
エミー・ライスナー(コントラルト)
ベルリン大聖堂合唱団
シュターツカペレ・ベルリン
録音:1923年(アコースティック録音、この曲の世界初録音)
●リスト:交響詩「レ・プレリュード」
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1928年、ベルリン、音楽アカデミー
●マーラー:「大地の歌」~第3楽章「美について」
アストラ・デスモンド(コントラルト)
BBC交響楽団
録音:1936年2月1日、クイーンズ・ホール、ロンドン(BBCアセテート、最後の8小節が欠落)
CD8
●チャイコフスキー:「くるみ割り人形」組曲 Op.71a
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年
●チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 Op.74「悲愴」
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1929年2月1、4、5日、ロンドン、ウェストミンスター、セントラル・ホール
CD9
●ベルリオーズ:「幻想交響曲」 Op.14
ソ連国立交響楽団
録音:1937年、モスクワ(ラジオ放送より)
●モーツァルト:交響曲第40番ト短調 K.550
全ソ連放送委員会管弦楽団(モスクワ放送交響楽団)
録音:1937年、モスクワ(ラジオ放送より)
CD10
●ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1923年、ベルリン(アコースティック録音)
●リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
ヴォックス交響楽団
録音:1923年(アコースティック録音)
●ウェーバー(ベルリオーズ編):「舞踏への招待」
ヴォックス交響楽団
録音:1923年(アコースティック録音)
●グノー:「ファウスト」~ワルツ
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1924年(アコースティック録音)
●リスト:交響詩「マゼッパ」
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1925年(アコースティック録音)
CD11
●スッペ:「詩人と農夫」序曲
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年
●トマ:「ミニョン」序曲
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年
●ウェーバー:「オイリアンテ」序曲
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1928年10月6~11日、ベルリン、音楽アカデミー
●ウェーバー:「オベロン」序曲
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1924年、ベルリン(アコースティック録音)
●ロッシーニ:「泥棒カササギ」序曲
ベルリン市立歌劇場管弦楽団(ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団)
録音:1928年、ベルリン、シャルロッテンブルク
●フリート:「ヘンゼルとグレーテル」のモチーフによる幻想曲
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1928年10月6、11日、ベルリン、音楽アカデミー
●ストラヴィンスキー:「火の鳥」組曲(1919年版)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1927年、ベルリン
CD12
●サン=サーンス:「死の舞踏」Op.40
ヨーゼフ・ヴォルフシュタール(ヴァイオリン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1928年10月6~11日、ベルリン、音楽アカデミー
●グノー:「ファウスト」~ワルツ
ベルリン・シャルロッテンブルク歌劇場管弦楽団(ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団)
録音:1928年、ベルリン
●ウェーバー:「魔弾の射手」~「狩人の合唱」
ベルリン国立歌劇場合唱団
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年、ベルリン
●ワーグナー:「タンホイザー」第3幕~「客人たちの入場」
ベルリン国立歌劇場合唱団
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年、ベルリン
●ワーグナー:「タンホイザー」第3幕~「巡礼の合唱」
ベルリン国立歌劇場合唱団
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年、ベルリン
●ワーグナー:「さまよえるオランダ人」第2幕~「糸紡ぎの合唱」
ベルリン国立歌劇場合唱団
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年、ベルリン
●ワーグナー:「ローエングリン」第3幕~「結婚行進曲」
ベルリン国立歌劇場合唱団
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年、ベルリン
●ワーグナー:「ファウスト」序曲 Op.59
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1928年、ベルリン
●オッフェンバック:「ホフマン物語」~「舟歌」
ベルリン・シャルロッテンブルク歌劇場管弦楽団(ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団)
録音:1928年、ベルリン
●マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」~「復活祭の合唱」
ベルリン国立歌劇場合唱団
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1927年、ベルリン
●リスト:交響詩「マゼッパ」
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1928年、ベルリン、音楽アカデミー
●ベートーヴェン:「シュテファン王」序曲 Op.117
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1925年、ベルリン(アコースティック録音)
●ビゼー:「カルメン」~第1幕への前奏曲
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1928年
●モーツァルト:「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」~「ロンド」
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音:1928年、ベルリン
【演奏】
オスカー・フリート 指揮
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック) ANTON BRUCKNER GUSTAV MAHLER
掲載: 2023年10月11日 00:00