『チャールズ・アイヴズ~アニヴァーサリー・エディション(5CD)』~1974年発売のLP5枚組をCD5枚組に復刻!
アイヴズ生誕150年記念リリース第1弾。1974年発売の伝説的なアニバーサリー・エディションを豪華解説書も含め最新リマスターで復刻。アイヴズ自身のピアノ演奏・歌声も収録!
レナード・バーンスタインが「コネチカットの納屋で、たった一人で自分だけの音楽革命を起こした」と称賛した偉大なアメリカ作曲家、チャールズ・アイヴズの生誕150周年を記念するソニークラシカルのリイッシュー企画第1弾は、CD5枚組の「チャールズ・アイヴズ~アニヴァーサリー・エディション」。今から50年前の1974年、アイヴズの生誕100周年を記念して、当時のCBSレコードから発売されたLP5枚組のボックスセットをパッケージ・デザイン、レーベル、解説書も含め、そっくりそのまま復刻いたします。
20世紀後半のコロンビア~CBSレコードの巨大な功績の一つは、ストラヴィンスキー、シェーンベルク、ウェーベルンという20世紀に大きな足跡を残した作曲家たちのほぼ全ての作品を録音し、LPレコードとして広く普及させたことでしょう。2度にわたって社長を務めたゴッダード・リーバーソン自身がイーストマン音楽学校で学んだ作曲家であり、アメリカ作曲家同盟の創設者でもあり、彼の肝いりで推し進められたプロジェクトでもありました。そんなCBSがやはり網羅的に録音を推進した作曲家がチャールズ・アイヴズでした。リーバーソン自身、アイヴズのことを広く紹介する記事を書いたほぼ最初の人物でもあり、1939年に作曲家と会った際の印象を、「彼は私にいくつもの自作の楽譜を惜しげもなくプレゼントしてくれた―――鉛筆による書き込みがたくさん入った『ニュー・イングランドの3つの場所』の第1楽章の自筆譜さえも、だ。アイヴズはストラヴィンスキーのこともシェーンベルクのことも、当時の流行だったヒンデミットのことも知っていたが、そうした作曲家の作品について議論することには興味がなかった。アイヴズの音楽は、モダニズムやアヴァンギャルドの流行に乗ったものではなく、彼自身の内的必然性から生み出されたものだった。(・・・)彼は実に複雑な男で、いい意味での本当の変人―――今となってはほとんどで会うことのないような類の―――だった」と回想しているほどす。
1974年に発売された5枚組(そのうち1枚は特典盤扱い)のLPセットは、ステレオ時代に入って4つの交響曲を含む主要作品を続々と録音してきたCBSの矜持とアイヴズへの深い愛情、そして献身を示すプロダクトで、アイヴズの音楽のエッセンスともいうべき作品をLP3枚分にコンパイルし、アイヴズの自作自演、それにアイヴズを知る人物たちによる回想インタビューというLP2枚分の音源を加え、さらに自筆譜や手紙、写真など多数の図版を実に美しくコラージュして構成したカラー・ブックレットを添付してリリースされました。しかもこのセットのために新録音が21曲分も投入されるなど、非常に力のはいったリリースでした。パッケージ・デザインは、20世紀を代表するイラストレーター/デザイナーのリチャード・ヘスによるイラストを使い、当時CBSのクラシック関連のアートワークを一手に手掛けていたヘンリエッタ・コンダックによるものでした。今回のCD版は、日本未発売に終わったその5枚組のLPセットを細部に至るまで丁寧に復刻したものです(解説書もLP版の全てのイラストをそのまま再現しつつ、ライナーノーツが読めるようにレイアウトしなおされています)。
5枚のディスクは「作曲家チャールズ・アイヴズの諸相」、「天上の国」、「われらの祖先が愛したもの」、「アイヴズのピアノによる自作自演」、「チャールズ・アイヴズの思い出」という5つのテーマに分かれています。
CD1では、1964年から1970年の間に録音された8つの多様な作品を通じてアイヴズの多面性を示します。バーンスタイン/ニューヨーク・フィルによる「独立記念日」と「答えのない質問」、アイヴズの傑出した業績の一つである「将軍ウィリアム・ブース天国に入る」と「サーカス・バンド」はグレッグ・スミス・シンガーズによる初録音。バリトンのトーマス・スチュワートが歌う感動的な「フランダースの野で」、オルガンの巨匠E・パワー・ビッグスが弾く「アメリカ変奏曲」が続きます。さらに作曲家のガンサー・シュラー指揮の「池」、ニューヨーク弦楽四重奏団とコントラバス奏者のアルヴィン・ブレームによる「讃歌」が含まれています。
CD 2はグレッグ・スミス・シンガーズによる合唱曲で、保守的なエール大学での作曲の師ホレイショ・パーカーのために1897年から1899年にかけて作曲された初期のカンタータ「天上の国」のほか、アイヴズの最も力強い愛国歌4曲の管弦楽編曲版ではレオポルド・ストコフスキー/アメリカ交響楽団が加わります。
CD 3 では、アメリカ歌曲を得意としたソプラノのヘレン・ボートライトとアイヴズの普及に力を尽くしたピアニスト、ジョン・カークパトリックによる25の歌曲。カークパトリックはアイヴズと親しく、現在でも彼のピアノ曲の最も権威ある解釈者とみなされています。グラモフォン誌は1974年にこの有名な録音を「LPに収録された中で最も優れた選曲」「最も重要で、特徴的で、一貫してインスピレーションにあふれた音楽」と絶賛しています。
CD4には、アイヴズ自身がピアノを弾いた自作自演が収められています。これらは1933年、1938年、1943年に、ロンドンとニューヨークのプロフェッショナルな録音スタジオで収録された演奏で、演奏の機会が少なくなかなか実際に聴くことができない自作を聴いてみたいというアイヴズの希望で実現したものです。1943年の録音が行われたスタジオのエンジニアの回想によると、指揮者や演奏家から自作の解釈法についての問い合わせを受けていたアイヴズは、「解釈だと!やつらがわからないのなら、ワシが教えてやるまでだ」と語り、ピアノに向かい、「やつらにわからせなければ」と猛烈に弾き始め、録音に同行した奥さんのハーモニーは、体調が優れなかった夫のあまりの興奮ぶりを心配するほどでした。このディスクに収められているのは「コンコード」ソナタの断片や短いピアノ曲などで、アイヴズは楽譜なしに記憶を頼りに弾いていたと思われ、即興性に溢れ、楽譜になっている音楽もしくは音楽素材のヴァリアントがその場で生み出されるような勢いに満ちています。行進曲「彼らはここに!」では、意気揚々と力強く歌うアイヴズの歌声も記録されています。グラモフォン誌は「アイヴズの演奏は心のこもったものだが客観的で、音楽の陰と陽とを同時に見せるような卓越した演奏」「アイヴズは、自作の骨組みの青写真を、強烈なアタック、酒に酔ったようなリズムの自由さとで示している。洗練された美しい演奏が出る幕はない」と評しています。
CD5はアイヴズを知る家族、友人、隣人、同僚たちへのインタビューで構成された回想録で、アイヴズのことを実際に知っていた人物たちの語りでこの型破りな作曲家の実に鮮明な記憶に残る肖像が作られていくかのようです。少年時代からイェール大学時代を経て、保険会社の経営者としての日常と日曜作曲家としての活動と、身近な人物でしか知り得ないエピソードに溢れ、アメリカ音楽界の謎に満ちたアイコンについて多面的かつ人間味のある視点を提示しています。
この5枚組ボックスはアイヴズという作曲家への格好のイントロダクションであり、かつその魅力と音楽史上の重要性をより深く伝えることのできる優れたセットといえるでしょう。なおソニークラシカルからはアイヴズ生誕150年企画の第2弾として、22枚組のボックスセットが11月にリリースされる予定です。
(ソニーミュージック)
収録内容
チャールズ・アイヴズ:
<CD1> 作曲家チャールズ・アイヴズの諸相
1. ホリデイ・シンフォニー~第3楽章「独立記念日」
[演奏]レナード・バーンスタイン(指揮)ニューヨーク・フィルハーモニック
[録音]1964年11月23日、ニューヨーク、マンハッタン・センター
2. 弦楽四重奏、金管、ピアノのための3つのセット~讃歌
[演奏]ニューヨーク弦楽四重奏団、アルヴィン・ブレーム(コントラバス)
[録音]1970年3月25日、ニューヨーク、30番街スタジオ
3. 池
[演奏]ガンサー・シュラー(指揮)、ガンサー・シュラー室内管弦楽団
[録音]1969年3月31日~4月1日、ボストン、ジョーダン・ホール
4. 将軍ウィリアム・ブース天国に入る
[演奏]グレッグ・スミス(指揮)、コロンビア室内管弦楽団、グレッグ・スミス・シンガーズ
[録音]1966年5月4日、ハリウッド、リージョン・ホール
5. アメリカ変奏曲
[演奏]E. パワー・ビッグス(オルガン)
[録音]1968年11月7日、ニューヨーク
6. フランダースの野で
[演奏]トーマス・スチュワート(バリトン)、アラン・マンデル(ピアノ)
[録音]1969年10月6日、ニューヨーク、30番街スタジオ
7. サーカス・バンド
[演奏]グレッグ・スミス(指揮)、コロンビア室内管弦楽団、グレッグ・スミス・シンガーズ
[録音]1965年7月7日、ハリウッド、リージョン・ホール
8. 答えのない質問
[演奏]レナード・バーンスタイン(指揮)ニューヨーク・フィルハーモニック
[録音]1964年4月17日、ニューヨーク、マンハッタン・センター
<CD2> 天上の国
1-7. カンタータ「天上の国」
[演奏]グレッグ・スミス(指揮)、コロンビア室内管弦楽団、グレッグ・スミス・シンガーズ
[録音]1972年3月13-14日、ニューヨーク、コロンビア大学、セント・ポール教会
8-11. 合唱とオーケストラのための4つの歌[オーケストレーション:グレッグ・スミス]
8) 民衆
9) 彼らはここに!
10) 選挙
11) リンカーン、偉大な解放者
[演奏]レオポルド・ストコフスキー(指揮)イサカ・カレッジ・コンサート合唱団
グレッグ・スミス・シンガーズ、アメリカ交響楽団
[録音]1967年10月18日、ニューヨーク、マンハッタン・センター
<CD3> われらの祖先が愛したもの
1-5. 初期の歌
1) 雪の行進曲
2) カノン
3) 庭がある
4) ジャッジズ・ウォー
5) ノー・モア
6-9. ありふれた歌
6) ニュー・リヴァー
7) 余興
8) 西ロンドン
9) 運と労働
10-13. 後期の歌
10) ザ・ワン・ウェイ
11) ピーク
12) 黄色い葉
13) 海の挽歌
14-15. ドイツ語の歌
14) 献呈
15) 夏の野で
16-22. 空想の歌
16) 解決
17) 絵画(第1曲:とうもろこし畑 第2曲:海 第3曲:ムーア人 第4曲:夜)
18) 霧
19) 呪文
20) 9月
21) 眠りの海
22) レクイエム
13-25. 郷愁の歌
13) われらの祖先が愛したもの
14) 古き家庭の日
15) 東の方へ
[演奏]ヘレン・ボートライト(ソプラノ)、ジョン・カークパトリック(ピアノ)
[録音]1969年11月18,19,24,25日、ニューヨーク、マンハッタン・センター
<CD4> アイヴズのピアノによる自作自演
1-6. ピアノ・ソナタ第2番「マサチューセッツ州コンコード1840-60年」(抜粋)
1) エマーソン(提示部の終結部)
2) エマーソン(再現部の大半)
3) ホーソーン(抜粋)
4) アルコッツ(全曲)
5) 「エマーソン」からのトランスクリプション第1番(インプロヴィゼーション含む)
6) 「エマーソン」からのトランスクリプション第3番(インプロヴィゼーション含む)
7) 交響曲第2番第3楽章の主題によるインプロヴィゼーション
8 ) 行進曲第6番ト調・ニ調
9-11. インプロヴィゼーション X, Y , Z
12. 練習曲第9番「奴隷解放運動反対者の暴動」
13. 練習曲11番
14. 練習曲第20番からの断片とラグタイム
15. 練習曲第23番より
16. 練習曲第23番よりゴスペル風のパッセージから「ハロー・マイ・ベイビー」まで
17. 彼らはここに!(戦歌による行進曲)
[演奏]チャールズ・アイヴズ(ピアノ、歌[17])
[録音]1933年6月12日、ロンドン、アビーロード・スタジオ[コロンビア・グラモフォン社による録音](5,6)
1938年5月11日、ニューヨーク[メロトーン・レコーディング社による録音](3,7,9-11,13,14,15,16)
1943年4月24日、ニューヨーク、メアリー・ハワード・スタジオ[同スタジオによる録音](1,2,4,8,12,17)
<CD5> チャールズ・アイヴズの思い出
アイヴズの家族、友人、関係者による回想
語り:チェスター・アイヴズ、ジョン・カークパトリック(ピアニスト・音楽学者)、レーマン・エンゲル(作曲家・指揮者)、ジュリアン・マイリック(保険会社アイヴズ・アンド・マイリックの共同経営者)、チャールズ・ビューシング、バーナード・ハーマン(作曲家)、ジョージ・タイラー、ワトソン・ウォッシュバーン、ビゲロウ・アイヴズ、ジョージ・F・ロバーツ、リチャード・アイヴズ、L.パーキンス、エリオット・カーター(作曲家)、ヴィヴィアン・パールズ、メアリー・ハワード、ゴッダード・リーバーソン(作曲家、コロンビア・レコード社長)、ニコラス・スロニムスキー(指揮者・音楽学者)、ジェローム・モロス、ヴァン・ワイク夫人
[録音]1968年~1969年 イエール大学の「アイヴズ口述記録プロジェクト」による
[マスターテープ・トランスファー]ブレット・ジン(アイアン・マウンテン・メディア&アーカイヴ・サーヴィス)[CD1-4]、ロン・スミス(イエール大学音声保存部)[CD5]
[24 bit/192kHzマスタリング]マルティン・キストナー(b-sharpミュージック&メディア・ソリューションズ)
[パッケージ仕様]各ディスクは紙ジャケットに封入(CDレーベルはCBSでの初出盤M4 32504のLPレコードの盤面のデザイン[通常のCBS盤とは異なる濃紺のレーベル]を採用)、初出盤M4 32504に添付された豪華解説書を復刻したオールカラー80ページのブックレットとともに厚紙製クラムシェル・ボックスに収納
[ライナーノーツ]ゴッダード・リーバーソン、ヴィヴィアン・パーリス、ジョン・カークパトリック(初出盤M4 32504に掲載されていた内容をすべて再掲載)