スペシャル鼎談!! 鈴木惣一朗 × 土岐麻子 × さかいゆう(4)
大人にとっても子守唄になるアルバム
――土岐さんが歌われた“Magic Moments”の語感はいかがでした?
土岐 バッチリです。英語はそんな得意じゃないですけど。ただ、早口言葉なんですよね、Bメロが。
鈴木 難しいでしょ?
土岐 難しいけど、すぐ憶えちゃった。すごく気持ちよくはまっているし、音として馴染みやすいんで。
鈴木 あ、思い出した。いいですか、ひとつ言って。〈トッポ・ジージョ〉って知ってます?
――ネズミのキャラクターですよね。60年代に人気があった人形劇の。
鈴木 土岐さんに打ち合わせで歌ってもらった時に、土岐さんの顔がトッポ・ジージョみたいになる瞬間があったんですよ。よく見たら顔が似てるんじゃないかっていうことになって(笑)。トッポ・ジージョの声ってこういう声(甲高い声のモノマネをする)ですよね。それから声のピッチを変えるってのを思いついたという。
――顔からヒントを得て(笑)?
鈴木 そう。だけど、顔と声って関係ありますよ。
さかい あると思いますよ。
土岐 あるけど、トッポ・ジージョはアフレコだから。
鈴木 まあ、土岐さんにマペット感があるってことかな。う~ん。マペット感があるって新しいね(笑)。
土岐 そんな定義はやめて下さい(笑)!
鈴木 あ、土岐さんがキレた(笑)。
さかい でもバニラ・ビーンズはうまいこと言いますね。
鈴木 それはもう2年ぐらい思ってるからね。
――では最後に、これから『雪と花の子守唄』を聴かれるリスナーにメッセージをお願いします。
さかい 実はまだ自分の曲しか聴いてないんですけど、アルバム全般として、まず楽曲のチョイスがいいから、やっぱり寝る前とかに聴くといいんじゃないですかね。そのぐらいのエネルギーと才能を感じさせられました、はい。
鈴木 1曲しか聴いてないのに(笑)。
さかい 1曲しか聴いてないけど内容は保証します(笑)。
土岐 バカラック集なんでバカラックの美しい曲を聴けるという意味でもいいですし。あとは、すごく生っぽいというか。調理される前のヴォーカリストの〈素〉みたいなものが出てる感じがします。いまは結構加工されているというか、びっちりパッケージされたものが主流だから、そうしないと見劣りしちゃったりするんですね。マイクとの距離とかもちゃんと考えて録らないと、というのがあるんですけど、これはわりと自由に歌ってるなというのがすごい伝わってくるし。例えばゆう君とかは普段の雰囲気を知ってるし、他の歌を歌ってるときの声を知ってる人の歌を聴いても、「ああ、珍しい感じだな」って思ったり。その人のホントに生っぽい感じが出てる。それぞれの普段の作品との違いを楽しむのもいいし、そういう意味でほんとにオーガニックな作品なんじゃないかなと思います。
さかい それはホントにリアル・オーガニックですね。
鈴木 結局この企画の大元って〈大人が聴ける子守唄〉ということなんです。そのためには、僕たち自身がアマチュアに帰る、というとちょっと語弊があるけど、子供に帰るぐらいのことがなければ、普段作ってるアルバムと変わらない。だから、さっき土岐さんが言ったようにプロ・トゥールズでいくらでも編集ができるような世の中で、このアルバムは他のアルバムに比べるとリバーヴが少ないし、テイクがヘタだと思うんです。でもヘタというのは、語弊がないように言うと、その人らしさが出ているということで。もしかしたら、それはプロのミュージシャンになる前のその人らしさかもしれない。僕自身ももう20年もやってきて、でも、スタジオでは子供のようになりたいから、そういうアルバムがあってもいいと思うんですよね。みんなが子供のように作ったもの。それは普段みんなが一所懸命作ってるものとは違う――空気が違うしムードも全然違うから、子供はもちろん、大人にとっても子守唄になるんじゃないかな、と思ってます。
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