鈴木惣一朗の〈歌モノ〉プロデュース・ワーク
『雪と花の子守唄』と〈りんごの子守唄〉シリーズを手がけた鈴木惣一朗は、このほかにも数多くの作品をプロデュース。特に、ヴォーカルの声質を活かし、その魅力を最大限に引き出してみせる仕事ぶりには定評アリ。ここでは、彼がこれまでに手がけた歌モノ作品をご紹介します。*澤田
イノトモ 『風の庭』クラウン(2000)
昨年デビュー10周年を迎えたママさんシンガー・ソングライターの2000年作。日々の暮らしに大らかで優しい眼差しを向けた作風はいまでも変わらないが、この頃はどこか少年のような清々しさも。聴き手を瞬時にピースフルな空気で包み込んでしまう自然体の歌声と軽快なアコースティック・ギターの音色に心がふわりと解きほぐされます。*土田
今野英明 『息を吸い込んで』spm disc(2005)
昨年メジャー移籍を果たした彼が、ROCKING TIME活動休止後に発表した2005年作。人間味に溢れた素朴な歌声と軽やかに爪弾かれるウクレレの音色を中心に綴られる、君と僕の日常。ピアノやフルート、ストリングスの響きも穏やかな空気感にナチュラルな彩りを添えている。人肌の温もりをそのまま音像化したような、じんわりと心に沁み入る一枚だ。*土田
笹倉慎介 『Rocking Chair Girl』グラウンド(2008)
大滝詠一を彷彿とさせる歌声を持つ、若きシンガー・ソングライターのデビュー・アルバム。メロウに潤うソングライティングもさることながら、70年代そのものの音の手触りが凄い。細野晴臣『HOSONO HOUSE』や、ジェイムズ・テイラー『One Man Dog』といった作品に見出すことのできた、同じ空気をシェアしたミュージシャン同士ならではのアンサンブル。あの絶妙なタイム感が、ここには見事に息づいている。*澤田
ハナレグミ 『帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。』ファイブスター(2005)
〈ほっこり声〉の代名詞、永積タカシのソロ・プロジェクトによる3作目。自宅(一軒家)=究極のリラクシン・スペースに最小限の機材を持ち込んで録音というシチュエーションは、氏のプロデュースにうってつけの環境かと。原田郁子や高田漣など、参加ミュージシャン同士の和やかな談笑を聴いているような気持ちになる一枚だ。*土田
ビューティフルハミングバード 『呼吸』コロムビア(2007)
様々なアコースティック・ミュージックを採り込み、童謡にも通じる普遍的な歌モノを紡ぎ続ける男女デュオの最新作。多彩な生楽器がオーガニックなキャンヴァスを編み上げ、その上で小池光子の歌声がダイナミックに踊り、どこまでも気持ちよく伸びて行く。たおやかでいてパワフル。“白いくじら”などで堪能できるグルーヴィーな躍動感が素晴らしい! *澤田
PoPoyans 『祝日』Good(2008)
cheruとnonchanのフォーキーな女性デュオによるファースト・アルバム。アコギにグロッケンシュピール、チャイムといった楽器が織り成す透明感いっぱいのアンサンブルに寄り添いながら、時に交互に、時にユニゾンで歌う二人のヴォーカルがなんともチャーミング。その素朴な語り口や息遣い、ちょっとした歌の揺らぎもそのままに封じ込めたプロダクションが聴き手を引き込みます。*澤田
湯川潮音 『湯川潮音』キャピトル(2006)
フォークやカントリーをベースにしたアコースティックなサウンドと微熱を帯びた歌声が穏やかに戯れるメジャー・デビュー作。〈天使と悪魔〉が共存しているかのような少女性が封じ込められた本作も氏のプロデュース作品。妖精系のPopoyansなど、氏は浮世離れした女子のファンタスティックな音世界を構築することがお得意なご様子!? *土田