インタビュー

Rei Harakami

 J-popフィールドにおいても広く名の知られる存在でありながら、フォロワーも生まれ得ないほどの超個性を擁する電子音楽家、レイ・ハラカミ。今年で活動10周年を迎えた彼のマイペースな道程を、本人へのインタヴューと共に振り返ってみよう。

テクノをやろうとしてた感じはあると思う

――ファースト・アルバム『unrest』(98年作)を発表されてからのこの10年は、どういうものでしたか?

レイ・ハラカミ(以下、ハラカミ) もう10年かあ、と。同じような作り方で、よくもここまで来たな、と(笑)。基本的にスタンスはほぼ変わらないですから。

――個人的に『unrest』で、すごく新しいものを聴いた感じがあって……。

ハラカミ ありましたか(笑)?

――あ、そういうつもりはなかったですか?

ハラカミ むしろ……そんなめちゃめちゃ新しいものをやっているという自覚はなかったですね。時期的には、新しいリズムがあればそれでいちジャンル、みたいな時代でしたから。そういう意味で言ったら全然……(新しくない)。

――当時アーティストとしてご自分の将来像をどう考えておられました?

ハラカミ そうですね……最初は無我夢中ですからね。むしろ(アルバムが)出てから、「あ、こんなものだったのか」と。当時は、CDを出してる人ってすごい自信に満ちているというか、「俺、最強」ぐらいに思ってる人たちだと思ってたんです。でもいざ自分が仲間入りしてみると、全然そうじゃない(笑)。たぶん10年やっても20年やってもこんな感じなんだろうなって思いましたね。

――ファーストですでに個性が確立されてますね。特に音色(おんしょく)。聴いてすぐにわかるような。リズムは今とだいぶ違いますが。ダンス・ミュージックの片鱗が残ってる。

ハラカミ 普通の4つ打ちとかやってますからね。

――やはりその〈音色〉が、最初からのこだわりだった?

ハラカミ うん。ただ音源(DTM用の音源モジュール。彼はローランドのSC-88Proを長年使用)を買い換えてないので、ああなっちゃうというか。ああいう音色が好きだというだけで、最初の頃から音色の新しさというものは特に意識してなかったですね。

――自分なりの音が固まってきたのはいつ頃ですか。

ハラカミ 95年とか96年とか。ちょうどFlare(ケンイシイの変名)のリミックス(96年9月発表の『Re-grip』に収録)をやるちょい前ぐらいですかね。

――ハラカミさんの名前が初めて世に出たのがFlareのリミックスですね。

ハラカミ (ケンイシイは)凄いと思ってました。僕なんかはまだ〈(音のパーツを)構成してる〉という意識でやってたんですけど、当時のイシイさんの音楽は、えらく変な音楽に聴こえて。それでいて、たぶん歳も(自分と)変わらないし。

――なるほど。音楽体験も共通してる?

ハラカミ どうでしょう? ただ僕はエレクトロニック・ボディ・ミュージックとか、ああいうほうには全然いかなかったですからね。

――カンタベリー系のプログレとか?

ハラカミ ええ、まさにそうです。

――『unrest』を聴いて、カンタベリー系統のジャズ・ロックの再解釈なのかな、と思ってました。

ハラカミ そこまで考えてやってたわけじゃないけど。むしろ後々のほうが、そういう気持ちが出てきてるかもしれないですね。

――あ、そうですか。ファーストはまだ……。

ハラカミ 周りのことを気にしながらやってる感じはありますね。

――周りって?

ハラカミ ええと、ジャンルであるとか、そういうのを気にしつつやってると思いますね。テクノであるとか。テクノをやろうとしてた感じはあると思う。

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掲載: 2009年03月19日 18:00

更新: 2009年03月23日 15:01

文/小野島 大