インタビュー

COMA-CHI

みずからの心情を赤裸々に吐露したメジャー・デビュー作『RED NAKED』で日本のヒップホップ・シーンに新風を吹き込んだ気鋭のフィメールMC/シンガーより、早くもニュー・アルバムが到着! 新録曲と過去のフィーチャリング参加曲から成る本作は、多彩な楽曲を通じてさまざまな恋愛模様が描き出された完全〈LOVE〉モードな逸品だ。女の子だからこそのリリックで東京ガールズをレペゼンする彼女に話を訊いた。

恋愛は、老若男女でいちばん話せる共通項

――『RED NAKED』の反応についてはどう思ってる?

COMA-CHI どうでしょうね。私的には「どうなんのかな?」っていう感じで出して、意外と反応が良かったんで、ちょっと胸をなでおろしている感じ。一枚ああいうものを出したことによって、こういう層はこういう曲が好きなんだな、っていうこともわかったし。でも、そういう反応が返ってくる前に作りはじめちゃったからね、今回のアルバムは。

――前作からまだ4か月だし。

COMA-CHI 「次はどうなるんだ?」って引っ張って引っ張って出すよりは、プレッシャーが少ないっていう(笑)。

――今回の『LOVE ME PLEASE!』の制作は、先の『RED NAKED』と並行して始まってたの?

COMA-CHI “sayonara”と“selfish boy”の2曲は去年から作ってて、最初は『RED NAKED』に入れようと思ってて。でも結局、恋愛の曲を入れるのやめることになったんで、その2曲はとっておいて、次は恋愛の曲ばっかりのアルバムを作ろうっていう案が出てきたんです。そっから作り始めたんで、並行はしてはいないですね。

――ラヴソングに向かう意識は、他のテーマを曲にする時と違う?

COMA-CHI 例えば『RED NAKED』で女の子のお化粧のこととか、自分の心の闇のこととかを歌ってるのと同じように、自分の経験をそのまま書いてたりするんで、大体はいっしょ。だけど、恋愛においてはドラマチックな部分を曲のなかで出したり、〈あー、そういうのあるなあ〉っていう普通の部分を出したいっていうのもあったんで、前回よりは脚色してるっていうか、100%自分じゃないことも歌詞に織り込んでます。


――ラヴソングはいわゆる恋愛の話として、誰かに聴いてほしいっていう気持ち? それとも、曲にすることで何らかの自分の気持ちが解消するとか、そういうところがあったりする?

COMA-CHI そこは単純に曲としておもしろいかおもしろくないかですね。だからおもしろい曲を作って、聴いてる人がちょっとプッてなったりとか、〈そうだよな〉って思ってくれればいいかな。『RED NAKED』に関しても、自分のために書いてる部分もあるけど、その割合は少なくて、音楽だから音を楽しむ、音といっしょに言葉を乗せるって感じ。今回は特にエンターテイメントですね。

――COMA-CHI個人の物語っていうよりも、みんなの話として楽しんでほしいっていう。

COMA-CHI でもやっぱり恋愛しないと、こういう曲は書けない。恋愛っていうのは、老若男女いちばん話せる共通項だと思うんですよ。日本語がわかれば、ここに入ってる曲をちょっと聴いただけで誰でも〈あっ〉てわかるっていうのがすごくいい。例えば、ヒップホップのことについて歌っても、わかんない人がほとんどじゃないですか。

―― 一般的にはね。逆に、ヒップホップそのものが、男社会って側面が強いってこともあって、ラヴソングはコアなヒップホップになるほど色眼鏡的に見られる側面もあるよね。

COMA-CHI ね? 〈それはヒップホップだ〉とか〈それはヒップホップじゃない〉とかって言う人もけっこういるけど、それは何を物差しにしてるんだろうっていつも思うんですよ。そういうこと言ってる人に限って、〈それってただのアメリカ人だよ〉って思う時が多くて。

――例えばどういうこと?

COMA-CHI 何て言うんだろ、日本人とアメリカ人は違うじゃないですか。でも、ヒップホップはアメリカのものだからアメリカの文化に染まらなきゃいけないっていうふうに考えてる人が多い。だけど、ヒップホップが何なのかっていうのは、その人それぞれだと思うんですよ。

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掲載: 2009年06月10日 17:00

更新: 2009年06月17日 15:41

文/一ノ木裕之