インタビュー

iLL(3)

まりんさんは、ターゲットを言語化したうえでカタチにしてくれる

――いまの20代前半くらいの若いバンドのなかには、スーパーカーのやってきたこと――音楽性だけではなく、活動の仕方とかスタンスなどに励まされて影響を受けたという人たち、〈スーパーカーの世代が道を切り拓いた〉と信じる人たちもいると思うんだけど……。

「聞いたことないなあ(笑)」

――いや、間違いなくいるよ。

「そうなんだ。(下の世代の)みんなは、(自分に対して)シャッター下ろしてるのかと思ってた(笑)。いや、もちろん、いっしょにやれる機会があれば何かやりたいと思っていて。今度、RYUKYUDISKOのアルバムで、いっしょにやることになったんですけど(笑)」

――ただ、スーパーカーの時代から、年上のミュージシャンたちと絡むことも多いですよね。今回のシングル“Deadly Lovely”では、スーパーカー時代に関わった映画「ピンポン」のサントラ以来、久々に砂原良徳と組んでいたりしますが、なぜいま、ふたたびこのタイミングでいっしょにやろうと?

「まず、この曲が使われる映画(「ノーボーイズ,ノークライ」)のサントラをまりん(砂原)さんがやることになっていて、僕が主題歌をやるという話が最初にあって。まあ、これまで何度かオファーはしていたんですけど。〈また何かいっしょにやりません?〉って」

――また彼と何かいっしょにやりたいと思っていたっていうのは、そこに何か具体的なヴィジョンがあったからなの?

「まりんさんといっしょにやったらどうだろう?っていうような曲がこれまでにもあったってことなんですけど、今回の曲に関しては、いっしょにやることになった時、まりんさんから〈何曲か送って〉って最初に言われて送ったもののなかから選ばれたのがコレなんです。で、 そっからメールとか電話でやりとりして」

――単純に、今回、まりんとの作業にはどういうことを期待したの?

「一つには、客観的に仕上げてもらえるということで。僕は割と客観視するほうなんだけど、さらに客観視できる人が必要というか。そうすることで、客観性がさらに増すというか。まりんさんはそういうところが上手いですよね」

――上手いというのは、具体的にどういうところ?

「ちゃんと言葉で話してくれるところですかね。〈今回はダンス・ミュージックにしようか〉とか〈いや、ダンスの要素を入れたロックにしようか〉とか。〈じゃあ、そのためにどうしようか?〉とか、そういう方向をちゃんと言葉にしてくれるんですよね。自分のなかでそう思っていても、やっぱり正確性を欠くところがあるんですけど、まりんさんはちゃんとターゲットを考えて、落としどころまで見てくれる、というか。言語化したうえでカタチにしてくれるんですよね」

――では、今回のシングルでは、まず最初にどういうふうに言語化されたの?

「まず最初に(二人の間で)出たのは、〈映画の主題歌〉ということで、やっぱり(以前やった)「ピンポン」との比較なんですね。で、僕もそれは最初から気になっていたんですけど、まりんさんもそこは気にしていたんです。で、「ピンポン」の時(スーパーカーの“YUMEGIWA LAST BOY”)は、ダンス・ミュージックにしていたんですけど、今回はどっちにいく?ってことを最初に話して。ダンス・ミュージックなのか、ダンス・ミュージックの音で骨格はロック、つまり、〈YUMEGIWA~〉よりはロックな感じという方向なのかっていう。で、そこでダンス・ミュージックっぽいものよりは、骨格はロックのほうに落とし込もうってことになったんですよね。で、まりんさんが〈じゃあ、この曲でやっとくね~〉って(笑)」

――その時点で歌詞はまだなかった?

「仮歌はありましたけど、まだメロディーだけでしたね。ただ、やっぱりバンド時代(スーパーカー)との比較もあったし、あと、僕個人的に、いま流行ってる〈ニューレイヴと呼ばれているようなもの〉はテクノ・ポップに聴こえたっていうのもあって、そっちには行かないようにしたいというのはありましたね。そことは違うものにしたいというか」

――それは、〈巷のニューレイヴ系なんかとは一味違うものを作るんだ〉という自負だったり、決意だったり?

「んー、まあ自負っつーか、〈YUMEGIWA~〉の印象があまりにも強くて、あの路線であれ以上のものを作る必要があるのか?っていうのはありましたね」

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掲載: 2009年07月29日 18:00

更新: 2009年07月29日 18:52

文/岡村詩野