インタビュー

Superfly

天性のパワフルな歌声で一気にスターダムへ駆け上がった越智志帆。その激動の日々のなかで味わってきた嬉しさや楽しさ、悲しみや怒りをありのままに詰め込んだニュー・アルバムで、さらに天高く飛び立つ!

過去に生きてくなんてやなこった!


  「大学の音楽サークルで多保くん(多保孝一。元メンバーで、現在はコンポーズ/アレンジを専任)と出会って、昔の音楽をいろいろと教わったんです。ローリング・ストーンズ、ジャニス・ジョプリン、キャロル・キング……最初は、なんて音質が悪いんだろうって思いながら聴いてたんですけど、なんか〈空間〉を感じられるものが多いなあって。それまで聴いてた情報量の多いデジタルな音楽とは違って、ザラッとした、スキだらけの音がすごく新鮮に聴こえて」。

 Superflyこと越智志帆がその時感じた〈新鮮〉を、今度はみずからが与える番となった。2007年のデビュー以来、60~70年代のロック、ポップス、ソウルのディテールを纏ったサウンドでモバイル世代のリスナーをも振り向かせていったSuperfly。もちろん、華奢な身体からは想像し難いパワフルさと豊かな表現力を持ったパフォーマンス、(ディテールの〈異物感〉とは裏腹に)現代のポップスとなんら違和感なく隣り合わせることができるメロディーの〈イマドキ感〉というチャームもあってこその快進撃だ。

 「サークルにはマニアックな人も結構いたんですけど、J-Popを聴かないとか、偏ってる人も多かったんです。そういう点で多保くんは違いましたね。J-Popもリスペクトしてるし、ジャンルの隔たりなく聴いてて……まあ、変わった人でした(笑)。やっぱり彼の力は大きいですよ。サウンドがシブいうえにメロディーまでシブかったら誰も聴かないだろうなって思うし、彼が持ってるポップセンスをプラスすることによって全体が凄く明るく包まれている気がしますね」。

 創造の可能性を、ただただ過去の遺産に求めていくでもなく、時代と上手く寄り添いながら逞しく前進していく。ニュー・アルバム『Box Emotions』の冒頭曲“Alright!!”では、その意思表明とも取れる勇ましいフレーズが耳に飛び込んでくる――〈過去に生きてくなんてやなこった〉!

 「うん、イヤですね(笑)。この曲はセッションしながら生まれた曲なんですけど、いまのSuperflyの底力が詰まった曲になりました。私もメロディーの力強さに引き寄せられるように強い言葉をガンガン出していって。〈やなこった〉っていうのはまさにですね(笑)」。

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掲載: 2009年09月02日 19:00

更新: 2009年09月02日 19:27

ソース: 『bounce』 313号(2009/8/25)

文/久保田 泰平