Superfly(2)
感情のアンテナが敏感になった
その“Alright!!”を筆頭に、今回のアルバムには前作『Superfly』以上にヴァリエーション豊かな楽曲が揃っている。それはアレンジの多彩さだけではなく、乗せられている言葉、そこに込められた感情の種類によっても成されているものだ。
「まさに、私の喜怒哀楽が剥き出しになってるようなアルバム。多重人格者か?っていうぐらい、怒ってたり笑ってたりしてますよね(笑)。私はデビューしてから本格的に作詞を始めたんで、ファースト・アルバムの時はとにかく必死で書いて。で、作品がリリースされて、ちょっと時間が空いて、〈音楽ってなんなんだろう?〉〈歌詞ってなんなんだろう?〉って考えてみた時に、音楽っていうのは人の生活に密着していて凄く身近な存在、凄くカジュアルなものじゃないかって思ったんです。だったらもっと身近なテーマで、リスナーにとっても身近な対象を思い出させるような、それぐらいの距離感で歌詞を書くのがいいのかなって答えに行き着いたんですね。去年はとにかく濃い1年だったので書きたいことは溢れ出るぐらいあったし、心が凄く揺れ動いていたから、じゃあいまのこの感情を形にしようって」。
Superflyとしての越智志帆、一個人としての越智志帆の狭間で揺れる感情を歌ったロッカ・バラード“Searching”、ライヴに足を運んでくれるファンの情熱や愛情を受けて編まれた“やさしい気持ちで”、仲の良い友人とのトラブルに怒る“アイデンティティの行方”、やるせない恋心を歌った“春のまぼろし”――フィクションではなく、越智志帆という女性が放つ生々しい感情の粒は、結果、アルバム全体をドラマティックに仕立て上げることになった。
「怒るっていう行為も大きく怒れるようになったし、寂しいっていうのも凄く寂しいって感じられるようになったし、感情のアンテナみたいなものが凄く敏感になっていますね。結婚した友達に贈った“愛に抱かれて”っていう曲は泣きながら詞を書いてたんですけど、1年ぐらい前だったらフツーに〈結婚おめでとう〉だけだったのが、いまは〈あなたの幸せを願います〉みたいな凄く大きな気持ちで祝福できる言葉が出てきたり。この曲は最後に出来上がったものなんですけど、レコーディングが終わった時はツラかったですね。〈ああ、終わってしまった~〉って(笑)。作業が終わってから何日間かはポカーンとしてて、まだまだ溢れ出してくるこの感情をどこにぶつけたらいいんだ!って、いまはひたすら日記を書いてます(笑)。あとは曲を書いたり……」。
▼『Box Emotions』の先行シングルを紹介。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2009年09月02日 19:00
更新: 2009年09月02日 19:27
ソース: 『bounce』 313号(2009/8/25)
文/久保田 泰平