インタビュー

Eccy(2)

ビートのナマ感や揺れがすごく大事

――その制作作業の違いをさらに聞かせてもらえれば。

「ホントに細かい話で言うと、昔はレコードを聴いたり、サンプリング・ネタを探してソフトを立ち上げて、パラメーターをいじって、っていうのがまず最初にあったんですけど、そこはまったく変わりましたね。新しいシンセを何台か買ったので、最近は音色作りから始めていて」

――曲の発想からして違いが出てきそうですね。

「前はサンプリングありきだったから、ネタによって(曲が)すごい左右されるところもあったんですけど、最近はわりと明確に作りたいものが見える。音の素材を自分で作っていって、録音して、溜めた後にエディットして、なんとなく見えているところに近付けるみたいな作り方になってますね。いままでとはまた違ったアイデアがいろいろ湧いてきて、新鮮な作業です」

――生楽器で弾いてもらった素材をエディットして完成した前回の『Narcotic Perfumer』がひとつのきっかけになった面もありましたか?

「前回のアルバムもたぶん、変わっていく途中というか、今回までの流れの一環みたいな感じだったんですけど、最近はそこが固まってきた。ビートを作るのも完全にコンピューター・ミュージックになってるんですけど、そこでビートのナマ感や揺れがすごい大事だなってことに気付いて。グリットに合わせるとかは最近なくて、MPCもキックを組んだりせず、録音状態にしときながら適当に叩く、みたいな。ハットとかもマイクを立ててドラム・スティックで適当に打って、そこからエディットしてナマ感を残す、ってことをやってます」

――そこに至る過程で触発されたものは、やっぱりさっき名前を挙げたような人たちの作品ですか?

「フライング・ロータス周辺がデカいっていうのもあるし、YouTubeでいろんな動画見てるとみんなけっこうおもしろい作り方をしてて、〈あ、そういうのもアリか〉って思ったりとか」

――なるほど。逆に、自分の作風で変わっていないと思うところは?

「ビートや音色が変わっても、好きなコード感とかメロディー感は一貫してるんじゃないかな。そういうところは、いまTシャツ着てるけど、プレフューズ73(スコット・ヘレン)にも感じていて。あの人はいろんな名義があるけど、全体的になんとなく似たコード感がある。あのコード感がすごい好きで、ああいうことをやっていけたらいいなって思いますね」

――インストのトラックと、海外勢も含めたフィーチャリングを迎えた楽曲で、意識や作業の大きな違いはありましたか?

「インストとして作ったものはやっぱりそれなりの展開があったり、トラックだけで押し切れるパワーがあるんですけど、ラップを入れようと思う曲は、その部分を引いて作る。元々ラッパーやシンガーとのやり取りや、自分の曲にラップが乗るってことが好きなので、インストだけでも表現できるんですけど、フィーチャリングを迎えたのは、単純に好きな作業をやりたいっていうことですね」

▼『Blood The Wave』に参加したアーティストの作品を紹介

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2009年09月16日 18:00

更新: 2009年09月16日 18:01

文/一ノ木裕之