インタビュー

Eccy(3)

宇宙感は出したいと思っていた

――最初のほうで話があったアルバムの構成に沿うと、前半にストーンズ・スロウのオー・ノーとの絡みがあるあたりは、サンプリングというトラック制作の手法と合わせて、みずからのルーツ的な意味合いも?

「そうですね。トラックを作りはじめた当初からストーンズ・スロウは大好きで、もちろんマッドリブ、オー・ノーとかも好きだったんで、自分のサンプリング・ミュージックの完成形とまでは言わないまでも、5~6年やってきたなかでオー・ノーにラップしてもらいたいなっていうのはすごいあった。ラッパーとしてもトラックメイカーとしても大好きですね、オー・ノーは」

――さらに言えば、Shing02さんとの“halo:ten”が宇宙への旅の曲で、アルバムの最後を“Time-Space Travel”で締めるっていう流れがあったりと、後半に収められた曲ではサウンド的にもコズミックなテイストが前面に出てきますよね。

「宇宙感は出したいと思ってました。もっと細かく分けると、1曲目の“Shape Of Diamond”から5曲目の“陰陽舞踏”までがわりとユルい感じで聴けて、6曲目の“Shared World”からは元々のコンセプトの怒りモード、ダークな感じが入ってきて、10曲目の“Interstice Of Brain Nerve”からメロディアスな感じが続いて、14曲目の“Monstera”から最近のヨレたビートとかシンセ使いがあって、ちょっと昔の曲だった18曲目“Break Out”でユルく締めるみたいな流れを作ってアルバムにしたっていう。一枚通してわりと聴きやすくなってるかなと思います」


――アルバムを作っていくなかで苦しんだ点は?

「このアルバムに関しては生みの苦しみはあんまりないですね。わりとサクッと出来た曲が多い。Shing02さんの曲はちょくちょく会ったりもしてたんで、やり取りが多くて大変でしたけど」

――その“halo:ten”はどのように曲作りが進んだんですか?

「ラフのループを送って、それをShing02さんがエディットして5分、6分ぐらいに長くなって戻ってきて、時間がないにも関わらず、〈じゃあ2ヴァース目、3ヴァース目の上ネタ全部変えようか〉って言われたり。〈いまからッスか?〉みたいな(笑)。でも、ラップにすごい世界観があったんで、音の感じが浮かんできたし、そこは最近の作り方に変わってて良かったなと思って。大体どんな音を使えばいいのかが歌詞からも見えたんで、すぐ弾いて送ったら気に入ってもらえて、そっから細かい手直しを何回かやって完成みたいな」

――他のフィーチャリング曲でそういうアイデアのやり取りはありました?

「いや、僕は元々歌詞については何も言わないっていうスタンスなんで、基本的にはないですね。ただ、“Thug Bunny”は前に作ったトラックで、いま作ったらもっとカッコいいのが出来ると思ったんで、手直しはしました。あとの曲は普通にアカペラをもらって乗っけて、ちょっと編集して、ぐらいの感じです」

――こちらから具体的な指示はしなかった、と。

「別に僕から〈こうしてくれ〉って言わなくても、その人が曲を聴いて何かを感じてくれたらそれがいちばんいいんじゃないかと思うし、いちばん大事なことだと思って。僕の言ったことをラッパーが感じてなかったとしたら、それを無理やりラップにするのも変な話だし、受け取ったまま歌ってもらえるのがいちばんいいっていうスタンスを常に貫いてます」

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掲載: 2009年09月16日 18:00

更新: 2009年09月16日 18:01

文/一ノ木裕之