インタビュー

FOX LOCO PHANTOM(3)

基本的に〈ザ・ニッポン〉っていうのがある

――あと、FOX LOCO PHANTOMのもうひとつの特徴として、例えば琴とか三味線とかを想起させる和的なギター・リフがありますが、そういうアイデアはギタリストの2人が持ってくるんですか?

ヒデヲ「僕とギター2人と、その時々によりますね。僕の持ってくる曲って、基本はフォークなんです。ぶっちゃけ、全部弾き語れるんですね。それを激しくロックにアレンジしていて、フレーズ単体を取るとわりとUK的なんですけど、でもメロディーとコード進行を合体させるとなぜか和風に聴こえる。基本、ギターの2人に和のテイストはそんなにないと思うんですけど、知らないうちに曲に引っぱられていたりして、そこがおもしろいんですよね。ギターの2人はいろんな音楽を聴いてるんで、俺の持ってくるフォークの土台にそういう要素をブチ込んでくれる。それで化学反応が起きる感じですね。琴とか三味線とかの音は、僕が後からガンガン入れていて」

――あれはギターで音を出してるんですか?

ヒデヲ「ギターもあるし、僕がキーボードをベンベンベンベンやって、ってのもありますね。できる限りナマでやるようにしてます。今回はけっこういろんな音を入れたね?」

依田「うん。茶碗とか」

ヒデヲ「ああ、茶碗叩きましたね。“毒林檎”で。あと和太鼓っぽい感じとか、カスタネットとか……そういういろんな要素を、〈和〉をメインとしてぶつけたかったんですよね。基本に〈ザ・ニッポン〉っていうのがあって、そこにスパニッシュ的なもの、サンバ的なもの、UK的なものをぶつけていくっていう」

――それで、和のテイストがものすごく全面に押し出されてるんですね。

ヒデヲ「本気でやってますからね、和を。採り入れましたっていうんじゃなくて。ダサいアレンジ、ダサいメロディー、ダサい歌詞……うちら、本気でガンガン入れまくってますから(笑)」

――ダサいとは思わないですけど、歌詞も独特ですよね。サビで〈さらば、狂ってしまう〉と歌っていたりとか、いちばんキャッチーなところに強烈な言葉を当てている。“しゃれこうべ”“毒林檎”とか、使われている固有名詞も妙なアングラ感があって。あと、〈人間失格スピリット〉みたいなものも全開ですし。

ヒデヲ「基本、僕がそっちの人間だからだと思うんですね。わりとサブカル/引きこもり人間なんで。だからそういう……何というか、キレイ、キレイしてない雰囲気が好きなんですけど」

――例えばどういう?

ヒデヲ「まあ、いろいろ好きなんですけど、メジャーなところで言うと、太宰(治)であったり、(坂口)安吾であったりとかは大好きで。あとは町田(康)さんとか寺山修司とか……グロくてエグいところにリアルさやキレイなものを見い出す感覚っていうのが昔からすごく好きなんですね。人が触れると〈うわっ〉て顔を背けるようなところに、美しさを感じるんですよ。変態なんですかね(笑)? わかんないけど、そういう〈エロ・グロ・ナンセンス〉な退廃的な部分に光を見い出そうとするし、そうやって生きてきてしまったところもあるし。だから、“しゃれこうべ”も一見勢いだけっぽいけど、わりと寂しい感じがする、俺のなかでは」

――“しゃれこうべ”どころか、アルバム全体的に寂しくないですか?

ヒデヲ「まあ寂しいですね(笑)。哀愁ありますね。依田が書いた“MOGURA DIVE”でさえ、〈モグラ潜る(という歌詞がある)〉で哀愁漂ってますから(笑)。今回は、ストレートな依田の詞と、裏をいってる俺の詞が初めて共存できたんで、そこはいい感じですね。いちばんわかりやすいのは“月光哀歌”と“世界の詩”かな? 俺と依田の〈世界〉に対する感情が、言ってることはいっしょなんですけど、ちゃんと違う言葉で綴られてるっていう。それを同じバンドでやってるってのがおもしろいかなってのは感じますね。〈モグラ〉みたいのは多分、俺が書いたら“しゃれこうべ”みたいになったと思うし」

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年10月28日 18:00

文/土田 真弓