FOX LOCO PHANTOM(4)
〈鳥獣戯画〉の世界観
――スタイルは違えど、2人の歌詞に共通するのは、イメージがヴィヴィッドに浮かぶところですよね。そのなかでも“世界の詩”の歌詞が、“月光哀歌”と同じ内容を歌ってるとはいえ、すごく異色に思えましたが。
ヒデヲ「そうなんですよね。曲自体も異色というか」
――ですよね。〈シンフォニック・メタルか!〉っていう。
ヒデヲ「多分、いまどきいないですよ、こんな曲やってる人たち(笑)」
――この異様な壮大さがいいなあと(笑)。
ヒデヲ「この曲は、最初に依田ちゃんが書いた別の詞があったんだけど、あまりにも曲が壮大になりすぎて。だから〈ちょっと依田ちゃんさあ、曲先行で試しにもう一回、詞を書いてみない?〉って」
依田「うん、レコーディング中にね。俺が休んでたら上のスタジオから降りてきて、〈世界〉ってひとこと言って帰っていったんですよ(笑)。〈何言ってるんだろう?〉と思って(笑)」
ヒデヲ「俺はもうウズウズしてて。〈これ、依田にいまのアレンジで詞を書いてもらいたいなあ〉と思って。それで、〈ワールドでヨロシク〉って言って、依田ちゃんが上げてきたのがコレだったんですよ」
――それで、天地創造と言ってもいいくらいのスケール感に(笑)。
ヒデヲ「そうなんですよ、すごくわかりやすい。難しい言葉をひとつも使ってないし」
――確かに、今回の作品のなかでいちばんストレートな詞ですよね。
ヒデヲ「いちばん複雑な曲に、いちばんストレートな詞が乗ってるっていう」
――依田さんは、〈世界〉というキーワードをどういうふうに広げていったんですか?
依田「やっぱ、〈世界〉といったら“We Are The World”かなあ、と。そこに近いことを歌いたいってのもあったけど、でも、もうちょっと視野を広げて言葉を選んだ感じですね。“We Are The World”ほど上から目線じゃないというか」
ヒデヲ「民主党な感じだよね。“We Are The World”はわりと自民党な感じ」
――友愛ですか。
ヒデヲ「そう。わりとパブリックな感じだよね。ちゃんと目線を落として書いてる」
――選ばれた人だけでなく、〈We〉に弱者もちゃんと含まれている感じ?
依田「そうそう。まあ、俺もそのなかに入るんですけど(笑)」
――この曲から、アルバムのラストに向かってグッと盛り上がっていきますよね。
ヒデヲ「そうですね、この曲順でよくまとまったよね。“RAINBOW”が最後にくることで、タイトルとも繋がったし。うまく森の出口にスッと抜けれるような流れになったんで、すごく良かったかなあと思って」
――そもそも、『ギムギムの森』の〈ギムギム〉って何なんですか?
ヒデヲ「これねえ、レコーディング中に俺がとりつかれたようにつぶやいてたんですよ。〈うーん、ギムギム、いいなあ〉って。だから、意味はないんです(笑)。今回のアルバムは、意味を持たせたらダメだと思って。最初は〈森〉にしてやろうかなって思ってたんですよね。でも、その〈森〉っていう超現実的な言葉にまったく違った次元の言葉をくっつけると、一気にわけがわかんなくなる。その、非現実的な方向に引っぱられる感じがいいなあ、と思って。見知らぬ森に迷い込んで、歩いていくっていう……わりとファンタジーなんだよね、うちら。見た目と違って」
依田「うん、ファンタジーでアドヴェンチャーな」
ヒデヲ「〈そうさ、いまこそアドヴェンチャー〉って(笑)」
――突然「ドラゴンボール」ですか(笑)?
ヒデヲ「やっぱ、男の子はアドヴェンチャー好きなんで、はい」
依田「(突然、何かに合点がいったように)……ホントですよねー」
ヒデヲ「(一瞬、間があって爆笑)いまの何(笑)?」
依田「このアルバムの世界観が、ちょっと〈ドラゴンボール〉みたいだなと。猫とかが喋ってるみたいな……そういうふうに、いま思えた。ホント、〈いまこそアドヴェンチャー〉だよ。ああよかった、ちょっと見えてきたぞ(笑)。そっかそっか」
ヒデヲ「でも、そういう感じだと思うんだよね。歌えや踊れや大騒ぎ、みたいな。昔の漫画で〈鳥獣戯画〉っていうのがあるじゃないですか? カエルとかウサギとかが相撲とってたりとか、あの世界観だと思うんだよな。あとは、浮世絵だったりとか。北斎あたりの色彩感覚って、エグいじゃないですか。エグいけど、キレイっていう」
スタッフ「アルバムのキャッチコピー変えなきゃね。〈そうさ、いまこそアドヴェンチャー〉って(笑)」。
ヒデヲ「そうだね(笑)」
依田「いちばん合うかもね(笑)」
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