インタビュー

FOX LOCO PHANTOM 『ギムギムの森』 UM360



  2007年の結成以来、約2年の間に怒涛の勢いで作品をリリースし続けて今回が3作目。今年は春にリリースされたタワーレコード限定のミニ・アルバム『PUBLIC EYES』でメロウな一面も垣間見せつつ、それから半年という短いスパンで到着したニュー・アルバムは、琴や三味線、和太鼓などを想起させる日本古来のリズムやビート、メロディーやフレーズを現代的なガレージ・ロックとして鳴らすという独自性を最大限に活かした快作に仕上がった。

 作曲と作詞のほとんどを手掛けるベースの猫田ヒデヲがインタヴュー中で語っているように、尋常でない数のライヴ活動で得たバンドとしての攻撃性と、歌モノとしての強度がガッチリと噛み合った本作。天井知らずに加速する獰猛なグルーヴとメロディアスに降り注ぐ純和風のギター・リフで聴き手の血を沸き立たる一方で、彼らは人間の愚かさや滑稽さ、それらと表裏一体に存在する哀愁を描き出す。前時代的な言語感覚とアングラ風の生々しさを纏った情景描写、〈人間失格スピリット〉とでも言うべき浮世への憂いが根底に敷かれた詞世界。やり場のない怒りと哀切を依田のチンピラ・ヴォイスが吐露した瞬間、人間らしい感情を持った異形の生物が闊歩する〈ギムギムの森〉――別世界への扉が開かれるのだ。

 アッパーかつキャッチーなビートがオープニングに相応しい“群青バタフライ”からシンフォニック・メタル級の荘厳さで迫る“世界の詩”、そしてズブズブとサイケデリックに沈む“RAINBOW”まで、〈和テイスト〉という揺るぎない柱を軸にしながらも、それぞれがヴィヴィッドな音楽性で彩られた全12曲。(失礼ながら)同世代バンドとの横の繋がりがあまりなさそうなのも、彼らがほかに類を見ない存在である証左であるように思える。

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年10月28日 18:00

文/土田 真弓

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