インタビュー

FOX LOCO PHANTOM

 踊れや歌え! 血を沸き立たせる純和風のグルーヴと歌謡曲にも通じるいなたいメロディーで人間の滑稽さと哀愁を描く5人組がニュー・アルバムをリリース!! 異色のガレージ・ロックをより鋭利に尖らせた本作について、ベースの猫田ヒデヲとヴォーカルの依田達義に話を訊いた。

五感全部から入ってきたものを音楽として吐き出す

――2007年の結成から2年の間で今回が3作目。今年は春にタワーレコード限定のミニ・アルバム『PUBLIC EYE』もリリースしてますし、この相当な多作ぶりは何なのだろうと。これは、結成時からの本気ぶりが窺えるのではないかと。

ヒデヲ「そうっすね、いつでも本気ですね(笑)」

――メンバー5人は、どういうふうに集まったんですか?

ヒデヲ「最初は、俺とギターの吉伊がそんなに仲良くない知り合いみたいな感じでいまして。そこからヴォーカルを探そうってことになったんですけど、なかなか見つからなくて……でもライヴが先に決まってたんですよ、なぜか。ライヴが1週間後くらいに迫っているのにまだ2人しかいないぞと。これはヤバイ、って吉伊を問い詰めてみたところ、〈1人だけヴォーカルの知り合いがいるけど、そいつとはいっしょにバンドをやりたくなかったから言わなかった〉って(笑)。それが依田です(笑)。〈もうライヴの日が迫ってるし、しょうがないから依田を紹介するよ〉ってことで、俺と吉伊と依田と3人で、渋谷のサイケなカフェで初めて会ったんですけど。まあ時間に猶予もなかったんで、よし、いっしょにやろうって(笑)。

依田「それで、いつの間にかスタジオにいたっていう。勢いです(笑)」

ヒデヲ「でも、その時点でドラムは見つからなかったんで、とりあえずサポートで入ってもらって。あと、もう一人ギターがいてもいいんじゃないかってことで、俺の後輩バンドマンだった亮くんを誘って。それで5人集まって結成したって感じですね」

――最初からオリジナル曲をやっていたんですか?

ヒデヲ「そうですね。2週間ぐらいで6曲作って、ファースト・ライヴをやりきりました」

――ちなみに依田さんは、吉伊さんとの仲は大丈夫だったんですか……?

依田「俺も、いっしょにやりたくはなかったんですけどね。たぶん、リーダーがいるから何とかやれてるんじゃないかなあって思います(笑)。個性がぶつかり合うというか、お互いに前のバンドを見てて、〈コイツといっしょにやることはないな〉と思ってたはずだし。だから、共存できてるのが不思議なんですよ、いまだに。まあ、だんだん好きになってきてはいますけど(笑)」

――危ういですねー。できるだけ好きになってください(笑)。だけど、2週間で6曲書けるもんなんですね。

ヒデヲ「早いんですよ、僕、曲書くのが。ダメなときはダメなんですけどね」

依田「ホントに早くて、(周りは)もう無理なんですよ(笑)」

――曲が出来てくるスピードに他のメンバーが付いていけないっていう(笑)?

ヒデヲ「よく〈(曲が)降りてくる〉とか言うじゃないですか。でも、自分はそうでもないんですよね。頭のなかに溜まっているものを吐き出すっていう感じなんで。だから、逆に溜まってるものを一回吐き出すと無になるんで、そうなるとまったく書けませんね。大体半年ぐらいで溜め込んで吐き出して、っていうサイクルです」

――普通、アルバム1枚分の情報が半年では溜まらないと思いますよ。

ヒデヲ「生活が音楽と密着してるんですよ。密着させたくないんだけど、しちゃうんですよね。僕、渋谷が大好きなんですけど、一日歩くと頭のなかにいっぱい溜まりますからね」

――それは耳に入ってくる音楽がヒントになる、とかそういうこと?

ヒデヲ「えっと、五感全部ですね。基本、依田と俺はあんまり音楽を聴かないんですよ。最新の音楽を追っかけたりっていうのがなくて。その代わり、いろんなところを歩いたり、触ったり、見たりして入ってくるものを自分の音楽として吐き出していくって感じなんで。街は、アイデアの宝庫ですよ。例えば絵をひとつ見ても、メロディーが浮かんできたり。映画でも、俺だったらこういう音楽をつけるなあって。そういう感じでどんどん蓄積されていく感じですね。基本引きこもりなんで、外に出ない時は曲を書かないんです。アグレッシヴに動きはじめたら書くって感じですね」

――じゃあ、他のメンバーは、ヒデヲさんの動きが活発化したら、曲を書いてきそうな予感がすると。

依田「動物園とか博物館とか行き出すと、これはやっとだなっていう(笑)」

ヒデヲ「この前、上野の博物館に行ってきたんですよ。超いいですよ。ディズニーランドよりヤバイと思いますね、俺は」

――ワンダーランドでした(笑)?

ヒデヲ「もう、マイケルもビックリな感じでしたよ。スーパー・ネヴァーランドですよ、あそこは。600円で国宝級や重要文化財級のアートに触れられる。あと恐竜の化石とか骨とか、宇宙とか、実験してみることができたりとか。宇宙、恐竜、化石って、ワクワクしません(笑)? そういうところに行って吸収して、って感じなんですよ」

――動物園とか博物館とかは、曲のヒントを得ようと意図的に行ったりするんですか?

ヒデヲ「基本的に小っちゃい頃から好きだったんですよ。うちのオカンは美術とか絵とかが好きだから、いっしょに写生しに行ったりとかして。あとウチのじいちゃんが陶芸家なんで、いろんなもの作ったりとか触ったりとか」

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カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年10月28日 18:00

文/土田 真弓